32. (未来のIF話) 名残り惜しい
2023年8月9日の「ハグの日」特別編。ちょっと関係が進んでいる雰囲気のふたりです。でも、これでもまだ付き合ってはいません~!
ふたりきりの休憩時間も、もう終わる。
だが、なんとなく立ち去る気になれず、侍女は下を向いてもじもじしていた。
そこへ、騎士が独り言のように呟いた。
「……なぜでしょうか。このまま侍女殿と別れるのが、惜しいように思うのです」
まさに自分が感じていたことを言葉にされて、侍女は顔を上げた。
するとそこには、ほんのり頬を染めた騎士の顔があった。それに勇気を得て、自分の気持ちを口にする。
「はい、私も。このままお別れするのはなんだか寂しいと、思ってしまいました……」
それからしばし無言で見つめ合った後、騎士が再び口を開いた。
「あの、抱きしめても良いでしょうか?」
「え?」
「無性に、あなたを抱きしめたい気分です」
「え? え?」
目を白黒させているうちに、侍女はいつの間にか頷いてしまっていた。
こういうとき、騎士は妙に押しが強いのだ。
「失礼します……」
だが、実際に背中に回された腕はおそるおそるといった様子で、先ほどまでの勢いはどうしたのかとおかしくなった。
「笑わないでください。侍女殿は華奢だから、折ってしまいそうで緊張するのです」
「ふふっ。そう簡単に折れたりはしませんよ。これでも私、逞しいのです」
そう言って、侍女は自分から騎士の腰へ腕を回し、えいっと思いきり抱きついた。
すると騎士がますます慌てたのがおかしくて、ぎゅうぎゅうと締め上げてやった。




