18.欠けたクッキー
休憩時間に侍女仲間数名とお茶をしようと、赤髪の侍女は手早くクッキーを焼いた。
きれいに盛りつけたクッキーを部屋へ運んでいる途中、皿に敷いた紙からはみ出した一枚がふと目についた。
はみ出してしまったものを戻すのもどうかと考え、その一枚を摘まみ上げる。
周囲に人の気配のないことを確認し、味見がてら、さくりとひとくち。口の中に広がるやさしい甘さに、我ながらうまくできたと満足していれば。
「侍女殿」
聞こえた穏やかな声に、侍女は驚いて飛び上がった。
慌てて振り返ると、申し訳なさそうな黒髪の騎士が立っていた。
「すみません、また驚かせてしまいました」
「い、いいえ。大げさにしてしまって、こちらこそ申し訳ありません……」
まさかつまみ食いを見られてはいないだろうかと、侍女はそれだけが気になった。
そんな侍女の羞恥には気づいていないだろう騎士は、手に持つ皿が気になったらしい。
「クッキーですか?」
「はい、これから侍女仲間でお茶会を。あ、よければお分けしましょうか?」
いくつか包もうと侍女が予備の敷紙を取り出そうとするが、騎士の行動は早かった。
「……いえ、私はその、端にある小さな欠片で十分です」
止める間もなく、騎士は小さなクッキーを口へ運んだ。
さきほど侍女がかじり、慌てて置いたクッキーの欠片を。
「ふふっ、美味しいです。ごちそうさまでした」
顔を真っ赤にした侍女を前に、なにも知らない騎士はにこりと微笑んだ。




