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氷河期世代のライトノベル作家が感じた衆院選への怒り  作者: 佐倉陽介


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可視化されない世代――情勢調査の行間から見えるもの

「自維300議席超うかがう 2月8日投開票の衆院選(定数465)について、朝日新聞社は1月31日から2月1日にかけ、約37万人を対象に電話とネットによる調査を実施し、取材情報も加えて中盤情勢を探った。」


 朝日新聞の情勢調査を読み、改めて確認できたことがあります。それは、今回の衆院選においても、就職氷河期世代が主要な争点の外側に置かれているという事実です。


 選挙で前面に出ているテーマは、減税か給付か、社会保険料負担の軽減、外国人労働者の受け入れ問題、そして事実上の政権信任投票です。いずれも重要な論点ですが、就職氷河期世代が直面してきた構造的問題――雇用の断絶、所得の停滞、将来不安――が十分に議論されているとは言い難い状況です。


 数字を見れば、この世代が置かれてきた状況はかなり明確です。


 1993年から2005年頃に新卒期を迎えた層では、いわゆる「正社員としての入口」そのものが極端に狭い時代でした。厚生労働省のデータによれば、40代前半から後半にあたる氷河期世代の非正規雇用率は、同年代の他世代と比べても依然として高水準にあり、一度非正規雇用に入った人が正規雇用へ移行できていないケースが多いとされています。


 賃金面での差も累積しています。


 初任給が低く抑えられたままキャリアを積めなかった結果、生涯賃金はバブル期入社世代よりも数千万円単位で低くなるとされています。これは単なる「収入の差」にとどまらず、貯蓄、住宅取得、子育て、老後資金といった人生全体に影響を及ぼす問題です。


 年金についても同様です。


 非正規期間が長い人ほど厚生年金への加入期間が短くなり、将来の受給額は大きく下がります。国民年金のみ、あるいは併用期間が長いケースでは、満額から大きく乖離するという試算も珍しくありません。


 老後の自己責任論が語られることは多いですが、その「自己努力」を行う前提条件が、この世代には十分に与えられていなかったと言わざるを得ません。


 それでも、この世代は政治的に「ひとつの塊」にはなっていません。ここが重要な点です。


 就職氷河期世代は、氷河期世代ならではの共通要求を掲げて結束するのではなく、他の世代と同様に、保守・革新、経済重視・福祉重視、外国人労働者受け入れ賛否といった軸で細かく分断されています。


 つまり、「氷河期世代としての政治的意見」を形成できていないのです。


 結果として、政治から見ればこの世代は、


 ・人数は多いものの、


 ・投票行動は一方向にまとまらず、


 ・特定の要求を強く突きつけてこない、


 極めて輪郭のぼやけた存在になっています。


 若年層は「将来世代」として語られ、高齢層は高い投票率を背景に強い発言力を持っています。一方で氷河期世代は、「すでに社会に定着した中堅層」として扱われやすい傾向があります。


 しかし、実態は決して安定しているとは言えません。


 さらに問題なのは、社会保障の持続性が語られるたびに、「現役世代の負担」という言葉が使われ、その中身が曖昧なまま放置されていることです。


 その結果、賃金が伸びず、資産形成も難しい層が、調整弁のように扱われてきました。


 氷河期世代は、これまで制度の歪みを吸収し続けてきた世代です。


 就職できなかったことも、非正規であることも、将来不安も、「仕方ない」と処理されてきました。


 氷河期世代が声を上げないことは、成熟でも忍耐でもありません。


 それは、政治にとって「扱わなくても大きな反発が起きない層」として認識されているという現実を意味しています。


 今回の衆院選は、その事実を静かに示しています。


 争点に挙がらなかったこと、それ自体がひとつの結果なのです。


 このまま分断されたままでよいのでしょうか。


 世代として共有された経験が、政策として一度も翻訳されないままでよいのでしょうか。


 情勢調査の数字は、単なる選挙予測ではありません。


 どの問題が語られ、どの世代が沈黙の外側に置かれているのかを、はっきりと映し出しています。

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