☆メインストーリー5-5 「真実の誘惑」※挿絵有
※仮想空間においての会話は
名前「会話文」の特殊表記となります。
詳細はあらすじにて
~仮想空間・地獄 天空エリア フェンリル城
地獄 山林エリアにてフェンリルの部下に連行された淘汰達。
彼らがたどり着いたのは雲の上のフィールドにある小さなお城であった。
ここにいるのは俺とぽちと気を失った000(ゼロ)。
小さな黒髪の少年フェンリル。
そして奥には巨大なガラス玉に入った織姫がいる。
中から飛び蹴りやら殴ったりやらして開けようと頑張っているのが目に入った。
俺達を連れてきた津田とMr.Bは他の捕らえた仲間の所へ向かっていった。
宿敵フェンリルと再会したが彼は意外にも落ち着いた表情だ。
フェンリル「000には命に別状はない。
今はゆっくり休ませてやるといい」
淘汰「お前らの目的はなんだ?
最初は俺らの事を始末しようと考えていたのでは無いのか?」
抱きかかえた000を近くの椅子に下ろすと無限回廊において起きた出来事を述べた。
部下は俺らを倒そうと行動していたのにこの地獄に来てからは生きて回収しようとしていた。
フェンリル「これは取り引きだ。
お前達は殺すのに惜しい程の実力を持つ。
特に電脳生命体に転生すらしていない人間のアバターが転生勢である我らの仲間。
ダンケルハイトや津田と並ぶ程だ」
淘汰「転生とはなんだ?」
フェンリル「転生はアバターを電脳生命体GMへと設定変更する行為だ。
電脳生命体の【GMLv】が人間アバターの【Lv】の10倍の能力を持つように、純粋に戦力が上がる」
ぽち「がうがう!」
話に割り入るぽちであったが何を伝えたいかが分からない。
しかし不思議な事にフェンリルには伝わっているようだ。
フェンリル「確かに代償として転生電脳生命体から人間に戻ることは出来ない。
だが我らはそんな貴様らを仲間として迎えよう。
我らは選ばれた電脳生命体による地球支配を目指しているのだ。
そこでだ!」
彼は指を鳴らすと先程まで居なかった茶髪の女性、ダンケルハイトがキャスター付きテーブルに何かを乗せて運んできた。
フェンリル「貴様らが我らの仲間となれば世界の半分近くと唐揚げを毎日提供しよう!」
淘汰「ふぁ?」
キョトンとして俺は見つめていた。
とりあえず何を返せばいいか分からず間抜けな声を出してしまった。
フェンリル「我は認めたのだ!
あの目の上のこぶであった電脳王彦星を倒し、無限回廊にてGGMの力を奪った我とも対等に渡り合い……」
56「フェンリル様負けてたけどにゃ」
突然俺の背後からフェンリルの元へ歩く緑髪の獣人。
前回の無限回廊での戦いで俺達を敗北にまで追い詰めた電脳生命体56だ。
フェンリル「ええいうるさい!
とにかく我ら【上位電脳生命体】は人間から電脳生命体となった転生者も認める!
織姫に【破壊の電脳神】の魂を宿し世界を侵略する。
この我らの野望を果たしたい!
その為には織姫を説得する必要もあるのでな」
ダンケルハイト「つまり織姫が電脳生命体の女王となるわけよ」
彦星と対となる電脳生命体は織姫であるという話を聞いていた。
そして行方が分からないとされる電脳生命体の神GGMは彦星と織姫が合わさった姿であると。
淘汰「やはりか。
000からGGMの件は聞いていた。
だが【破壊の電脳神】とはなんだ?」
俺の声が聞こえたのか、織姫がガラス玉を壊して中から出てきた。
フェンリル「っ!
我の集中が途切れてたか!」
織姫「ごめん……私とスミスはあんたにその事を黙っていたの」
彼女が謝ることは珍しい。
俯いたまま目を合わせようとしなかった。
そうか。
000がスミス達は隠し事をしていると地獄に着いた直後話していた。
フェンリル「【破壊の電脳神】とは。
000を乗っ取っていた電脳生命体だ。
それすらも聞かされていないとはな。
淘汰、貴様は利用されているのだ。
そんなやつらのことを信じていいのか?」
言い放たれた言葉を俺は素直に受け入れる事が出来なかった。
確かに000からも彼らが怪しいと言われていた。
だがまだ納得のいかない点がある。
淘汰「フェンリル。
お前も彦星と共謀し人類を仮想空間に閉じ込めたのではないのか?」
フェンリル「そうだ。
だが我らの繁栄の為。
なんなら全ての人類も転生電脳生命体なればいい。
それより知りたくないのか?」
彼はニヤリと笑うと声を張り上げた。
フェンリル「我についてくればお前の知りたい真実も全て語ってやろう。
先程の【破壊の電脳神】について。
お前の兄アンスについて!
スミスの本当の目的!
そして真の黒幕とやらもな!」
アンスというのは地獄にたどり着いた時に見た夢。
過去の記憶に存在していた金髪の少年のことだろうか?
過去の俺のアバターだと思っていたがそれが兄だと言うのか?
フェンリル「さて000、お前に意識があることは知って……」
彼が000に向かい何かを言おうとした時に誰かが飛び上がりフェンリルの首元に剣を当てた。
フェンリル「!?」
チャラ民「だんちょー参上!
おっとそこの部下達は下がって。
淘汰と織姫、ぽちは000を連れて逃げて。
レイブンと天裁は神谷っちの父親を見つけて先に出たから!」
呆然とする俺にチャラ民は凄む表情で一喝した。
チャラ民「圧政者としてだんちょーと戦った時。
淘汰は"現状を変える"って約束したじゃん!
フェンリルの下に付くのが答えかい?
違うだろ、だったら迷うなっ!」
俺は駆け寄る織姫に手を差し出せなかった。
しかしその一言に息を飲むと彼女は目線を000に向けこう言った。
織姫「今は私のことを信じなくてもいい。
それよりあいつは連れて行ってあげて」
淘汰「わ、分かった」
もはやどうすればいいか混乱し答えが出せないでいた。
だがチャラ民の言う通り元の日常を取り戻す為現状を変えたい。
そう言ったのは俺だ。
現実世界において生き残った唯一の人類。
俺が奴に下れば人類の敗北となる。
フェンリルの語る真実の誘惑にかられながらも俺は000の方へと向かった時。
彼女は何かを呟いた。
000「取り戻した。これで還れる」
一瞬膠着したが今は戸惑っている訳にいかない、目を閉じたままの000を抱きかかえ言われた方向へ走った。
56「させるかにゃ!」
飛びかかろうとした56の前に向けてフェンリルを蹴り飛ばすチャラ民。
56は反射的に彼を守るためそちらを優先し受け取った。
隙を見て肉薄してきたダンケルハイト。
チャラ民は咄嗟に左手に持った剣をもう片手に持った杖で叩き音を鳴らす。
カンっという乾いた音の直後、剣が輝き鋭い声が響いた。
チャラ民「【覇王旋風剣】!!」
緑色の覇気を纏う剣を回転斬りに振るう。
竜巻のように渦を巻いた輝く剣圧が彼を中心に起き辺りを吹き飛ばした。
56「っ!
フェンリル様守りにゃがらだときつい!」
ダンケルハイト「なんつう力だ!
これが猩騎士団団長ってやつか?」
懐かしい声がフェンリルの部下から上がりチャラ民は思わず目をぱっと開いた。
チャラ民「あ、姉ちゃん!
……ごめんね。
また話せる時がきたら話したい」
ダンケルハイト「話すことはねーよ」
険悪に返され落ち込んだ表情を隠せないまま再び杖を剣にあて音を鳴らした。
チャラ民「【覇王飛翼剣】!」
今度は覇気を翼に変え風のような速さでその場を抜けていった。
涙がぽろりと流れ後ろに飛んでいく。
背後から静かな怒りの声がした。
ダンケルハイト「てめぇと俺は絶縁したんだ、忘れてんじゃねぇぞ」




