☆メインストーリー5-1「地獄入り」※挿絵有
※1 画像が見切れる場合はリロードをお願いします
※2 仮想空間においての会話は
名前「会話文」の特殊表記となります。
詳細はあらすじにて
~仮想空間・地獄入口
不思議な夢から目が覚め星々が見えた。
先程の記憶はうろ覚えだだがあの夢にいた少女が視界に入る。
あの薄桃色髪の少女だ。
淘汰「ロゼ…?
違う、お前は000(ゼロ)か。
ここはどこだ?」
アバター名が000と表示されていたのに気付き訂正をする。
しかし000本人とは思えない。
特徴的であった眼帯すらないからだ。
緑と赤のオッドアイの目。
白を基調とした服。
元の黒薔薇を印象付けさせる服装から一変し白を基調とした服装であった。
髪型も少しだけ違う。
彼女はこちらを心配そうに見つめながら返事をした。
000「ここは無限回廊の先【地獄】。
そっかその反応は少しだけ記憶を取り戻したみたいだね。
上手く入口に着地できてよかった」
地獄とは話に聞いていた仮想空間においてかなり危険な場所だろうか?
重い頭を持ち上げて何とか立ち上がる。
淘汰「みんなはどうなった?」
000「皆はここには居ない。
でも多分生きてると思うよ」
淘汰「分かった。
俺は仲間を探しに行くよ。
何度もお前に手を貸してもらってる。
だから今度こそは自分で解決しないとだ」
息を切らせながら目線を遠くに向けた。
無限回廊とは違い敵が見当たらない。
入口だからであろうか?
だがこの先にいたとしてもやることは変わらない。
俺自身はステータスが0の為戦闘をする事ができない。
ダメージを与えようとしても受けようとしてもすり抜ける状態である。
だからこそ戦闘をしなくても進める。
動こうとした時000が声をかけてきた。
000「その、淘汰。
地獄は入口には敵がいないけど次の階層からは【リビングデッド】がいる。
持ち主を失ったアバター。
壊れたアイテムがモンスターとなった姿。
それらがここでは現れたりするの」
淘汰「そうなのか。
だが無限回廊の時の要領で俺一人に関してなら進めるはずだ」
確かに回想のような夢に現れた地獄の敵は皆人型のようであった。
こちらが進むのにあたり状況は変わらない。
問題は無いようには思えたが000は声を震わせた。
000「地獄の入口は複数あって交わらないからここにいても仲間に会えない。
会うなら確かに進むしかない。
それにフェンリルの【グレイプニルの鎖】の能力が発動してて仮想空間から帰ることはできないから」
状況の説明をする彼女だが結論を述べようとはしない。
何を言いたいのか。
俺はそれを追求しようとした時、答えるように背後から声がした。
ぽち「あるじを守って欲しい!
今のあるじは弱ってるんだ!」
聞いたことがある声だ。
それは犬の鳴くような声であるのにも関わらず聞き取りやすい。
淘汰「お前はぽち!?」
こちらに走り寄り000に引っ付く犬。
電脳犬ぽちであった。
ぶんぶんと尻尾を振って彼女に懐いている。
000「ぽち。
色々あったのにこんな私の事を好いてくれるんだね」
淘汰「ぽちが突然喋ってるんだがどういう現象なんだ?」
ぽち「我はあるじが傍に居るとお前の持つ首輪がなくとも言葉を話す事ができるのだ!
待っていたぞ二人とも!
あの黒犬から世界を守るのだ!」
くるくると000の周りを回りながらぽちは高らかに話す。
どうやら知能も上がるらしく普段のように電波のような話し方ではない。
000「淘汰。
私とこの子を連れて行って。
力になりたいから。
地獄での動き方も分かるし」
淘汰「分かった。
みんなでこの地獄を乗り越えフェンリルを倒そう!」
目の前に見えた無限回廊と同じワープゾーンを見つめ俺たちは歩みを進めた。
~仮想空間 地獄 草原エリア
ぽち「【タックル】からの【硬化】!」
目の前に現れた人の影リビングデッドに突っ込むぽち。
【硬化】の状態になるとダメージを無効化するが一定時間動けない。
しかし突っ込んでから硬化を放つことで硬さも含め威力が増し、さらに敵のヘイトを集め盾役となるという戦法だろう。
普段のぽちは考えなしに突っ込んでいくが前より頭を使う戦い方となっている。
ぽちは飼い主がいると能力や知能が上がるようだ。
000も広範囲魔法を中心に戦っていた。
000「火竜の焔よ敵を焼き尽くせ!
【ブレスオブサラマンダー】!」
炎の塊が彼女の持つ本から頭上へ上がり周囲の敵へ向けて咆哮を放った。
天裁は無詠唱で魔法を放っていたが彼女の場合5~10秒程の詠唱で魔法を唱える。
ゲームの世界のような事だが実際に見るととても迫力がある。
淘汰「すごいな!
そんな魔法を使いこなすのか!」
000「そんなことないよ。
私自身の魔力は天裁とかに比べて弱い。
仮想空間における魔法。
それは魔力が少ない人がちゃんとした威力を出す場合は詠唱が必要なんだ。
淘汰も魔力があれば使えるけど」
淘汰「本当か!?」
000「でも淘汰はステータス0。
つまり魔力が0のアバター。
だから魔法を使う事は難しいんだ」
俯いて暗い表情を見せた000。
俺は本来アバターを5年前の彦星との戦いで消失し仮想空間に存在できなかった。
しかしステータスは全て0となってもこの世界に再び入る権限を与えてくれたのは彼女だ。
それだけでも俺は感謝している。
淘汰「いいんだよ。
物理的に戦えなくとも戦えない訳じゃない
今までそうして乗り越えてきたから」
その言葉に000は瞳を細かに揺らした。
彼女が何を思っているかはよく表情を読み取れなかったが先程より明るくなったのは感じ取れた。
ぽち「遅れた青春ってやつか?
10代で済ませとけ」
突然ぽちから発言で000が顔を赤くして彼の口を押さえる。
この犬は知能が上がろうともぽちのままであると理解した。
~
仮想空間【地獄】。
ここは雑魚敵の総合的な戦力でさえ無限回廊最下層の100倍まで跳ね上がっている。
能力値の最低ラインは100万を優に越えている。
初めてダイブした仮想空間にいた金銀銅のパンダ。
それ以上の敵が大量発生しているまさに地獄のような環境である。
しかし序盤の階層なのか地獄と言えど時間をかければ敵を倒せないことはなかった。
ぽちは格上相手でも【硬化】により活躍。
それを上手く活用しひたすら敵の注意を引きながらも倒れることなく盾役として徹してくれた。
000も魔力が弱いと自身は言っていたが凄まじい火力の魔法で遜色のない戦いをしている。
俺は仲間が怪我した時にアイテム係として限られた資源を使い治療をする。
まるでロールプレイングのような感覚であるがあまり楽しむ程の余裕はない。
それでもそんな環境下においてここは無限回廊と比べとても便利な面もある。
000「あそこはキャンプポイントだね。
階層ごとに一箇所敵が近寄れない場所があるんだ。
地獄はとても恐ろしい場所だけどここで休憩をとっておけば無理なく進めるよ。
過去の淘汰もここを見つけ次第休んでたんだ」
夜の草原に小さな光が灯る場所がある。
なるほどここがキャンプポイントと呼ばれる場所か。
まだ入口の次の階層から全く進める事ができていない。
進みたい気持ちはあるが無理はできない。
彼女の言葉に頷くと000はキャンプポイントに近寄り手をかざした。
俺らを取り囲む程の大きさの魔法陣が現れる。
不思議と心地よい暖かさが広がった。
まるで焚き火をしてるような感覚だ。
この地獄においては朝と夜の概念があるらしく目まぐるしい早さで暗くなったり明るくなったりする。
無限回廊のあたりからずっと頑張っていた為かぽちはすぐに眠ってしまった。
淘汰「まるでゲームのような世界だな。
確か本来この世界は【ユートピア】とかって呼ばれる人間が作ったゲーム。
それを電脳生命体が作り替えて今の仮想空間を作り出したんだっけか?」
000「そう。
意識を送って擬似的に電脳世界を楽しめるようにしたのがそのユートピア。
原初である仮想空間を作ったのは私の父が持つ神谷財閥とスミス博士なんだよ」
有名な話だと思われる事柄だが記憶が混在している俺にとってかなりの驚きだった。
思わず表情に出すと000は目を伏せた。
000「多分記憶をいじられたせいで情報が欠如している所が淘汰には多いと思う。
私もGGMとか名乗る電脳生命体に体を乗っ取られていたからそれ以降の記憶が少しだけ曖昧で」
俺は突然の事実に目を見張った。
スミスや神谷の父親である課金がこの仮想空間の素を作ったというのか。
しかも電脳生命体の神GGMが神谷を乗っ取っていた?
どれも初めて聞いたぞ。
確かGGMは行方不明であると聞いていた。
彼女は説明を続けた。
000「今は自我を保てるようになったよ。
フェンリルがGGMの意識を奪って水晶のような球にしたの」
淘汰「今のお前は本来の神谷で
俺の記憶を奪った犯人がGGMなのか?」
先程から000本人とは思えない言動や姿に混乱していた。
しかし目の前にいるのは幼なじみの神谷自身。
そういうことなのだろうか?
000「うん大方そんな感じ。
私を支配する意識が無くなってこうして元に戻れた。
この姿になったのもアバターが初期設定した姿に戻ったからだと思う。
そしてあなたの記憶や5年間意識を封じ込めたのには私にも責任がある。
だってそれを望んでしまったから」
判断が付かない状態でいると足元から声がした。
ぽち「おいヒョロガキ。
あるじは本当のことを言ってるぞ。
我には分かるのだ」
俺は000の顔が真っ青になっているのを見た。
だがもしぽちの言うことが本当なら酷い目にあったのだろう。
淘汰「俺のことは気にするな。
記憶を取り戻したい気持ちは変わらない。
だがお前が黒幕じゃないんだろ?」
000は黙ってしまった。
俺には5年間の記憶が無い。
GGMによって記憶を消され、都合の悪い記憶は残っていない。
でも今は関係ない話だ。
淘汰「この話はここでやめだ。
まずこれからするべき事を考えよう。
天裁も過去のことより先を見ろって言ってたぜ」
別の話題を促すと彼女は現状分析を話した。
000「フェンリルはGGMの魂を盗んだ。
でも彦星と織姫の融合する時にGGMは降臨するって2050年の時に織姫から聞いた。
これは予想だけれど融合体が器だと思う。
魂と器が一つになって初めてGGMが出来るとか。
だったらフェンリルは織姫を見つけ次第確保するはず。
彼らはそれを降臨させて人類を支配しようとしてるんじゃないかな」
ぽち「フェンリルのクソ野郎か。
犬の電脳生命体の癖に野望だけは犬一倍だな」
いやお前も犬だろうに。
ともあれ話がかなり大きくなってきた。
だがそれなら織姫もGGMの存在は気づいていたはず。
なのに何故俺に知らせなかったのか。
その考えを読むように000は目を細めこう言った。
000「淘汰は何か分かる?」
淘汰「悪いさっぱりだ。
そもそも織姫と彦星が融合する事も知らなかった」
000「私自身知っている事はさっきの通りで情報がないから憶測から考えるしかできない。
でも何も知らせなかったスミス達は何か怪しいね」
ぽち「残念ながら我も奴らから"神谷を助けたいなら協力しろ"と言われただけで詳しい事は分からん。
この優秀な頭を持ってしても奴らの考えてることは難しいようだ」
色々と突っ込みたいことはあるがまぁ確かに犬の中では優秀かもしれない。
だが今まで協力し合った仲間を信じるなと言われても俺は素直には頷けない。
淘汰「なら事が終わったら問い詰める。
それだけのことさ。
今はここからの脱出とフェンリル討伐さ」
000「ごめんね。
惑わせることを言って。
今はその目的を達成するべきだよね。
ええと次の階層に行くには条件が……」
と000が話しかけた時だ。
遠くから轟音と共に叫び声が聞こえた。
聞いたことのある女性の声だ。
淘汰「もしかしてレイブンか!?」
俺と000は目を合わせるとキャンプポイントを閉じぽちと共にその悲鳴の方角へと急いで駆けつけた。




