☆メインストーリー4-9 無限回廊100F 「フェンリル戦」※挿絵有
※仮想空間においての会話は
名前「会話文」の特殊表記となります。
詳細はあらすじにて
~無限回廊B99F
凄まじい速さで飛びながら火球をばら撒き暴れ散らす異形の悪魔。
最後のワープゾーンへと着陸した途端ある事に気が付いた。
極限までに研ぎ澄まされた感覚。
聴覚に届いた音は耳障りな笑い方だった。
だがそれでいて澄んだ声。
忘れもしないあっしの教え子、神谷の声だ。
この先にはあっしが救えなかった生徒がいる。
フェンリルによって人質となってしまったのであろうか?
このままだと巻き込んでしまう。
体が突然硬直してしまった。
頭がよく働かない。
あるのは異常な昂りと戦闘欲求。
そしてほんの僅かな理性だ。
その理性があっしの動きを止めていた。
何分も立ち止まっている気がする。
硬直した状態から動けないのだ。
思えばあっしが教師として彼女を救えなかったのはほんの少しの汚い理性だった。
教頭から奴と関わるな、何があってもと。
そのため孤立した彼女とは唯一教え子で話せないでいた。
確かに中途半端な教師であったあっしは彼女を救えると思える程自信がなかったのも大きい。
動けば終わってしまうと。
今回もこのまま彼女を見捨ててしまうのか?
不思議だった。
今まで【異形化】すれば動かずに居られなかったあっしが。
恐怖さすら愉悦に感じていたあっしが。
怖くて動けない。
その時だ。
時間差で発動する罠が起動した。
これは敵にいた津田とかいうやつが仕掛けていた時限式の罠。
長時間動かずにいると発動する……!
即死の大爆発を喰らい地面に強い音を立ててぶつかった。
体が倒れて全く動かない。
迂闊だった。
ただあっしには固有能力の【復帰】がある。
意識と戦う意思の二つがあれば何度も立ち上がれる。
……はずなのに。
体が地面に張り付いて動けない。
戦意を喪失した今それを発動するが不可能であった。
顔を上げると一人の少年が覗いているのに気付く。
彼も元々は生徒の一人だった。
レイブン「フミ……ダセ、ナイ」
悪魔のような声であっしは彼に声をかける、結局何も出来ず力尽きる。
その自分らしくない姿が情けなかった。
しかし少年は強い表情で手を差し伸べた。
淘汰「でも"諦めないんだろ?"」
その一言に目を見開きあっしは微笑むと少年が吸い込まれるように自らの体に宿った。
~無限回廊B100F
それは突然だった。
誰かが侵入した途端凄まじい剣圧が放たれたのだ。
ダンケルハイトが直撃をくらい倒れてしまう。
津田「誰だ!?貴様は?」
カードを手に持ち津田は構えるが敵も味方も彼に気付かず全く反応がないようだ。
フェンリル・ゼロ「やはり来たか。
お前はレイブンか?」
000の面影を持つ黒髪の前に立つ人影。
憑依体「半分はな。
お前も姿が変わったなクソ犬」
それは短髪に赤髪の女性だった。
服装や体型は彼女のそのものだったが雰囲気が違う。
女性はフェンリルの後ろにいる意識を失ったままの000を見た途端
無言で羽を生やすと【異形化】を始めた。
紫の肌に黒い眼球そして赤の瞳。
悪魔のような姿となった。
睨み合う両者。
フェンリル・ゼロ「憑依の力を使えるのはお前だけでは無い。
それを応用した能力すら我も使える!」
どうやら000の姿を引き継いだのはそれが理由であろうか。
同じ力によるものなら戦闘が終われば解除されるはずだ。
一瞬の間が生まれた。
その直後戦意が一気に燃え上がった。
憑依体「人類とそこにいる少女を救いに来た!
あっしにとって大切な生徒
──そして俺の幼なじみをだ!
【バーストフレア】!」
赤髪の悪魔は口から業火の如く激しい炎を吐き出した。
津田「罠札【高貴なるバリアーリフレクトゾーン】!」
カードからバリアが放たれる。
跳ね返された炎が悪魔に飛んでいくがそれ飲み込むとさらに威力を上げ放ってきた。
連続で放たれる高火力の一撃に津田は吹き飛ばされてしまった。
フェンリル・ゼロ「紫眼【六護氷岩】!」
瞳の色を紫に変えるとフェンリルは手をかざし前方に6つの巨大な氷を発生させた。
炎がぶつかり互いに打ち消しあう。
フェンリル・ゼロ「これは【瞳の勇者】という力だ。
電脳生命体の神が持つ最強の能力【GGM権限】。
存分に味わえ!
銀眼【時空氷結】!」
気が付くと目の前に銀色の瞳となったフェンリルが姿を現す。
不意に拳が腹にくい込むのを感じた。
これはまさか時間停止の力か!?
フェンリル・ゼロ「緑眼【急成長】!」
さらに瞳を緑色に変え打ち出した拳を瞬間的に巨大化させた。
体を貫通する感覚があったがあえて体の穴を広げすり抜けさせた。
人間の体ではありえない所業にフェンリルは思わず驚きの声を上げた。
裂けた腹が元通りにくっ付く。
互いに背を向け合う。
いち早く動いたのはこちらだった。
憑依体「【地獄流・裏剣】!」
体をくねらせ振り向くとその勢いを利用して横薙ぎの一撃を敵の背中に放った。
そこからさらに刀をジャグリングのように回転させ連続で切りつける。
【地獄流・円閃剣】
さらに【地獄流・大車輪】へと繋げる。
先程の回転力に遠心力を加えて刀をぶん投げ三連続の奥義を放った。
フェンリル・ゼロ「緑眼【超再生】!」
突然の連撃で追い詰められたのか緑色の瞳を輝かせ体の修復を始めた。
奴は先程から【瞳の勇者】を複数同時に使っていない。
それができないのであろうか?
だが偽っている可能性がある。
強く投げ過ぎた刀は奥まで飛んでしまい戻るまでに手元に戻るのには少しの猶予がある。
地面に蹴りを入れると羽を使い飛び上がり口から炎を放った。
フェンリル・ゼロ「馬鹿め!
眼は二つある。
一度防いだ技如き片目の力で防げる!
紫眼【六護氷岩】!」
やはり同時処理可能だったか。
今度は左の瞳だけを紫に輝かせてきた。
前方に放たれた氷の塊によって炎が打ち消されてしまう。
しかし高い位置にいるのかある事に気が付いた。
先程放った刀が元の位置にブーメランの如く戻ってきたのだ。
口から放っている炎を集約させ、フェンリルからわざと背を向け離れた位置に大きな火を放った。
フェンリル・ゼロ「先程から何をしてる?
武器を投げ捨てたり飛んだり変な方向へ炎を吐いたりめちゃくちゃな戦い方だぞ?」
憑依体「それがあっしらの戦い方さ!
勝負はこれで決まりだ!
【地獄流・烈火大車輪】!」
フェンリル・ゼロ「まさか!?
後ろか!?」
背後からの火球による爆風で加速した回転剣は炎を纏いフェンリルを斬り裂いた。
再生が間に合わないまま倒れるフェンリル。
一瞬勝ちを確信したその時だ。
56「【雷絶】!!」
鋭い雷がこちらの脳天から体を貫き地面に伏してしまった。
憑依が解けて俺とレイブンが分かれてしまう。
彼女は自身の体に直接ダメージを負ったせいか意識を失っているようだ。
俺は顔を上げると敵と目が合った。
こちらを圧倒するような強い眼差しを静かに向ける虎の獣人56。
そのまま彼女は無言で踵を返し蘇生処理をフェンリルに行った。
蘇生により息を取り戻し弱々しく言葉をつむぎ始める黒犬。
フェンリル「はは人類。
今回は押されたが我は消えていない。
勝ったと思うな。
このまま無限回廊にいる人間そして電脳生命体はこの先の【地獄】に送り込む!
そこで再び刃を交えよう!
ははは、はは……」
意識を失う彼を抱き抱える56。
フェンリルの部下が集まり発生した穴にそのまま降りていく。
蟻地獄のような穴だ。
レイブンは飲み込まれていってしまった。
穴が広がりこちらも吸い込まれる。
体が引きずりこまれていく。
56はさらに奥に居た000を回収しようとした。
その時だ。
赤い波動を放たれフェンリルを庇う形で穴に落ちていってしまった。
突然起こった出来事に目を白黒させていると薄桃色髪の少女がこちらを見つめていた。
淘汰「000?」
000「大丈夫?」
緊張気味な声の彼女。
それは黒薔薇の服装でいたあの000とは別人と思わせる程明るい姿だった。
差し伸べられた手。
反射的に掴むと意識が落ちる感覚がした。




