☆メインストーリー4-7 無限回廊B70F 「嵐の前の静けさ」※挿絵有
※仮想空間においての会話は
名前「会話文」の特殊表記となります。
詳細はあらすじにて
~仮想空間・無限回廊B100F
大きな球の中に薄桃色髪の少女がいる。
人類の脅威と呼ばれた000。
それを静かに見つめる黒髪の少年。
彼の元に部下達が集まる。
フェンリル「Mr.Bが上手く動かなかったとはいえ酷くやられたなダンケルハイト」
ダンケルハイト「厄災軍師流石の強さだった。
まぁ足引っ張った分夕飯でも作ってやる」
報告を済ませた男しゃべりの茶髪の女。
ダンケルハイトはバツが悪そうな顔をする。
しかし報告を受けた本人は特に気にする表情を見せなかった。
フェンリル「我の能力はあくまで心を操るだけで完全に乗っ取ることはできん。
親友の天裁には攻撃できなかったのだろう」
赤い瞳のMr.Bは虚ろな表情のまま何も言わなかった。
000を見つめたまま少年は話を続けた。
フェンリル「さてGGMいや【破壊の電脳神】の魂は我が手にすることができた。
我らが悲願【破壊の電脳神】の復活は近い。
後はこれを器となる存在に埋め込めばいい。
それは彦星の対となる存在」
右手を動かし無限回廊60Fに存在する淘汰達の姿を別のガラス玉に映した。
そして指さした先には織姫がいる。
津田「それってもしかしてあの少女?」
フェンリル「?」
いち早く反応した青髪ロングの青年。
津田は影が薄いせいかいつも通り気付かれていない。
流石に心に来たのか目から涙が顕になる。
ダンケルハイトが同じ質問をボスに投げかけた。
ダンケルハイト「淘汰と共に居た織姫か?
そういや"織姫と彦星。
片方を吸収する事で一つになり、電脳生命体の神GGMは降臨する"とかいう話を聞いてたんだが
彦星が消えた今、何故あれは神の器に至らねぇ?」
フェンリル「本来は倒した時点で器はできる。
しかし彦星のデータを吸収できず未完成の状態だ。
我がそれを回収した時に妨害を受けた」
56「"にゃろう"かにゃ?」
キメ顔で指を立てる滑舌の悪い緑髪の虎の獣人。
フェンリル「那老だ。
奴は【電脳覇王剣】もとい彦星のデータを奪った。
しかし我らの手に負える相手ではない。
だがこいつがいれば別だ」
歩みを進め歪んだ笑みを浮かべる少年の視線の先。
そこには000がいた。
フェンリル「愛すべき者は殺せない。
そして奴は【電脳覇王剣】を持つため対となる存在の元へわざわざ来ない。
【破壊の電脳神】が完成するからな。
ならばスミス達に戦いを預けるだろう」
ダンケルハイト「つまりはスミスと那老に裏のやり取りがあると?
成程奴らを倒し織姫を攫った上で000で那老を釣る感じか」
彼は静かに頷き肯定した。
隣に56が這い寄るとフェンリルを突然たかいたかいし始めた。
56「にゃあにゃあ、何言ってるか難しくて分からニャいんだぞ!
そんなことより夕飯はにゃんだ?」
フェンリル「やめろ!
唐揚げだ!ダンケルハイトが作る!」
56「血圧が上がっちゃうぞぉ?」
長身から生み出される破壊力のあるたかいたかいに命の危機を感じながらフェンリルは慌てて抵抗した。
フェンリル「うるさい!
レモンをかければ体に良い!多分!
キャベツも食べる!だから下ろせ!」
ダンケルハイト「なんだかんだ高血圧になる飯が好きなんだよなぁ社長さんはよ」
いつものドタバタに津田は呆れかえり肩を竦めていたがダンケルハイトが一人一人指さして数を数え始めるのに気づく。
そして指がこちらに向いた。
ダンケルハイト「とはいえあんたも食うだろ?」
津田は念願の会話に目を輝かせて返事をしようとしたが背後から声がした。
まるで声が貫通したかのように。
Mr.B「000……様、にもご……飯を」
ダンケルハイト「社長さんよぉいいか?」
そのまま彼女は津田の存在をなかったかのように振り返り少年に同意を求める。
彼は地面に足をつきヘトヘトになりながら返事をした。
フェンリル「わかった。
意識が戻り次第渡す。
これから利用するとはいえ飯なしは可哀想だ。
5人分で頼む」
津田は慌てて数を確認して始め一つ理解した。
丁度視界に入った人数と等しい事を。
自分が頭数に入っていない。
56「そうとなったら夕飯前の運動だ!
戦ってくるぞ!」
突然56が腕をブンブン振り回し下の階層に向かって走り始めた。
敵と戦ってくるようだ。
本来なら止めるはずの少年は珍しく上機嫌になっていた。
フェンリル「お、やっとやる気になったか。
我が最終兵器を出さずとも戦いが終わる。
例のチビ女は殺すなよ?」
津田「行っちゃいましたよ」
フェンリル「?」
いつものやり取りだと津田は目を伏せた。
~無限回廊B70F
5階層ごとのボスエリアにたどり着いた淘汰達。
しかしもぬけの殻であった。
こちらの戦力を削るのにあたり何かしら設置すればフェンリル側は有利に動くと思うのだが。
その質問にレイブンが答えてくれた。
割と罠は多く設置されていたが先に侵入した彼女が何個か処理し通りやすくしてくれたらしい。
序盤の階層はぽちが突っ込みまくって罠を踏みまくったがお陰で難なく進むことができそうだ。
~無限回廊B73F
ぽち「がうがう!」
しかし60代の階層もぽちの能力【先制】により雑魚敵を吹き飛ばしてきたが撃ち漏らしが出てきた。
無限回廊の敵もやはり終盤になってくると強くなってくるようだ。
そのうちの一体がこちらに向かってくる。
隣のレイブンが刀に手を当てたのは見えた。
だが割り込むように天裁が詠唱をした。
天裁「熱閃魔法!
【デストラクションフィンガー】!」
指から放たれた閃光が貫き敵は地面に落ちた。
そこまでにかかった時間は1秒に満たずレイブンが思わず口を開けた。
レイブン「相変わらず凄まじい早さの詠唱速度だな。
言い終わる前に敵に当たってたぞ?」
天裁「ありがとうございます。
さ、先程の戦いでMr.Bを救えなかったですし。
失態の挽回をここで果たしてみせましょう!」
珍しく顔を赤くしそわそわする白髪の厄災軍師。
その見慣れぬ姿に目を見張ると俺の脇腹に軽く肘が当たった。
視線を下に向けると黒髪のちび女がいる。
織姫「あれは恋っていう病らしいわ。
私やあんたみたいな人種は理解できないものらしいけれど」
スミス『まぁ淘汰に関してはEDを疑うレベルだからのう』
淘汰「ED?
エンディングの事か?」
まずい言葉を言ったつもりは無いが通信越しから聞こえたスミスじいさん達の息を飲む音。
そして織姫の顔が憐れむ表情に変わったのを見た。
隣に神谷の父が俺の肩を叩いた。
課金「大丈夫、私もだ。
娘が一人っ子なのも子供ができなかったからだ。
なので大切にしてあげて欲しい」
織姫「いやあんたのガチな事情まで聞かされると笑えなくなるからやめて」
神谷の父はニコニコと笑うと今度は表情を少し固める。
そして踏み込むように俺に話を続けた。
課金「娘を大切にしてやるべきだったと後悔している。
働けばお金だけには困らず不自由のない生活はさせられていたと思い込んでいた。
でもあの子はいつも寂しそうだった。
私は君から非難を受けてもおかしくない」
俺には改ざんされた記憶があった。
000とは幼なじみでありとても仲の良い関係であったと刷り込まれていたのだ。
その記憶に違和感があり思い出した。
彼女は本来暗い顔をしてスミスから聞いた通りいつも孤独であった。
淘汰「過去の俺は見て見ぬふりをしてたって聞いた。
俺も神谷のお父さんと変わらない。
だが助けたいという思いも同じだ」
俺は彼の目を真剣に見つめた。
互いに過去も今も偽る気持ちはない。
すると後ろからレイブンが歩み寄り課金に頭を下げた。
レイブン「あっしも教頭からの圧力で娘さんに関与する事を咎められていたんだ。
学校側も財閥相手だと何か問題が浮上すると潰されると判断していたから事なかれ主義だった。
娘さんが何も言わないことをいい事に。
だからあっしにも責任がある」
俺は初めてその事を知った。
神谷の父も鋭い視線を向けていたが目を瞑りため息をついた。
課金「レイブンさんいいのです。
その話は以前私に隠さず話して下さりました。
だから【異形化】をしてまでこれから生徒を助けようとしてるのでしょう?」
天裁「先生!」
レイブン「ああ。
ちゃんと先生として落とし前と生徒を助ける役目を果たすつもりだ」
こちらに魔法を放ってきた敵に剣で打ち返すレイブン。
その声から強い決意を感じさせた。
織姫「さっきまで酒飲んでたけど」
レイブン「そりゃ気付けの為だって!
そもそも酒じゃねぇって!」
彼女は不意をつかれ目を逸らした。
まぁ確かに飲兵衛な所が少し心配だが。
~現実世界・地下研究所 管制室
「【異形化】か」
音声を切り顎髭に手を当てるスミス。
それは前回淘汰達がダイブした仮想空間。
娯楽都市アクアリゾートでの電脳王彦星戦で起きた出来事である。
極限状態に追い込まれた彼は最後に悪魔のような姿となり立ち向かってきたのだった。
隣でパソコンを操作する助手のノアが心配そうな表情を向けた。
「博士。
レイブンの場合はどうなるのかな?
情報が足りない状況でこのまま進めるのは少し危険性があると思うの」
「これは神谷の父と相談する必要がある。
いつもの事じゃが情報不足や突然のアクシデントに対してわしらは弱すぎる」
これまで淘汰達を仮想空間に何度も送り込んできた身として不甲斐なさを感じる。
しかし事は急ぎであるのも確かだ。
スミスはため息混じりにタバコの煙を吐きながら話を続けた。
「それでもひとつ言えるのはわしの予想じゃがこの先に000の意識が封印されとる。
フェンリルが悪さをする前に早急にカタをつけなければならない。
もし淘汰のアバターの持つ能力。
【憑依】に気付きそのシステムに慣れる前に」




