☆メインストーリー4-6 無限回廊B56F「神谷の父親」※挿絵有
※仮想空間においての会話は
名前「会話文」の特殊表記となります。
詳細はあらすじにて
~無限回廊B56F
課金「レイブン無事でしたか?
って君は!?」
ここは安全地帯と呼ばれる階層50代のエリアらしい。
そこで俺達を出迎えたのは見知らぬ中年の男性だった。
痩せ型に変わった眼鏡と赤い背広。
奇抜な雰囲気だが物腰は柔らかそうだった。
だが彼は俺を見る度大声を上げて近寄ってきた。
課金「君は淘汰くんじゃないか!?
私の娘の幼なじみであった!
しかも織姫までいるとは」
織姫「5年前こっちに喧嘩ばかり売ってきた性悪男がいるわね」
俺はいきなりの状況で混乱していた。
さらに通信から博士の声が響く。
スミス『元仮想空間最強と呼ばれた組織。
【Vipuum】の元最高顧問の課金か。
そして神谷財閥の代表神谷 柿』
課金「これは住 住男さん。
神谷財閥の際、技術面ではお世話になりました」
もしかしてこの男。
000(ゼロ)、もとい幼なじみ神谷の父親なのか!?
情報が一気に入りあたふたしてしまう。
その様子を見たのかレイブンが間に入った。
レイブン「とりあえずまぁ落ち着けや。
非戦闘地帯にいる間はフェンリルも下手に干渉はできない」
フェンリル『それはどうかな?』
俺らは突然表記された名前に身を構えると黒髪の少年が姿を表した。
不思議と誰かの面影を持つ整った顔。
そこにぽちがいつもの如く【先制】を放ったがすり抜けてしまった。
フェンリル『おっとそこの犬は過去のわ……
いやもはや関係ない。
失敬、これは思念体だ。
そこにいる淘汰と同じく攻撃をすることもされることもできない』
現実世界にいるスミスが大声を上げた。
スミス『何のつもりじゃ!?
過去のわしの姿で現れるとは?』
まさかあそこにいる少年は幼き頃のじいさんなのか?
フェンリル『この姿の方が敵陣のブレインを揺さぶれると考えた。
思った通りだ!
ふははは愉快極まりない!』
56『にゃー!!
……あれ?電話中?』
フェンリルの背後から獣人のGMが現れた。
部下であろうか?
「……」
雰囲気が急に壊され場が白けてしまい、俺自身とても気まずくなった。
怒りに満ちた顔のフェンリルは女性に足蹴りを入れる。
そして俺たちに指をさした。
フェンリル『とにかくだ!
わが全勢力はB100Fに集結した!
地獄の入口でまた会おう!
くはっはっはぁ!
……ああもう血圧が上がr』
独特な高笑い声だなぁと思った瞬間、 怒りに震えた一言が中途半端に聞こえた。
後ろを向き誰かに言ってるようだ。
そこでやっと幼きスミスの姿をした残像は消えてしまった。
淘汰「なぁやるならしっかりやってくれ」
~
俺達は先程のフェンリルの件を一旦置いて状況の整理をしていた。
課金「まさか私の娘が人類を支配した電脳王。
彦星の手駒にされていたとは……」
レイブン「5年の間に色んな事が現実では起こっていたようだな。
淘汰達が生きててびっくりしたぜ。
娘さんも淘汰も天裁もチャラ民も。
あっしの生徒だった。
元担任教師として何もかも力不足ばかりで申し訳なかった」
織姫「まぁ反抗期で娘がグレたと思えばいいのよ。
それに生徒みんな何だかんだ無事だし」
さて話した内容としては
"
地球に残った人類は俺淘汰のみである事。
彦星よる地球支配後、電脳生命体が残った人間の肉体を乗っ取っていること。
神谷の娘が000という電脳生命体に生まれ変わり人類の脅威と呼ばれたこと。
彼女が彦星を裏切り俺らに協力したこと。
圧政者チャラ民との和解。
天裁との再開。
弱った彦星を天裁とMr.Bと共に倒した事。
意識を失った状態で発見された000。
敵によって操られた彼女の執事Mr.Bのこと。
"
それらを話した時彼らは驚きの表情の連続だった。
特に彦星を倒した時はレイブンは目を輝かせて俺の事を最強のパンダだと連呼していた。
俺は過去に一体何をしていたのだろうか?
彦星と相打ちしたこと位しか知らない。
全く思い出せない。
課金「私の娘は現実世界で生きているのですね。
通信越しですが確認が取れてよかった。
私は彼女を置いて仕事ばかりしていた。
だが失いそうになってその大切さに気付きました」
俺はその言葉を聞いて人類の脅威である彼女の処分を考えようとしていたスミスに一言強く押した。
淘汰「スミス、悪い事は出来ないぞ」
スミス『何も言い返せぬ。
さて課金氏。
彼女の意思はフェンリルに奪われたと私はみている。
本来仮想空間にいると反応する脳波が出ているがコネクトが取れない』
レイブン「多分それはフェンリルの能力、意識を奪い水晶に変える力。
奴が手に持っている可能性が高いな。
他にも精神を1つの場所に閉じ込める力を持つ。
それによってあっしと神谷の親父さんもここに閉じ込められているんだ。
自分の意思でここを出ることが出来ないし無限回廊100Fの先【地獄】にも進めない」
聞き慣れない単語が聞こえ俺は思わず聞き返そうとしたが織姫が解説した。
織姫「私は行ったことがないけど過去の淘汰がよく狩りに向かってた場所ね。
仮想空間で最も危険な場所だって」
木の枝を持った彼女は地面に間抜けなパンダの絵とHellという字を描いて俺に見せてきた。
その木の枝を今度はレイブンが掴み【Limitto obar】と書いた。
レイブン「【限界突破】というアバター自体の強化を行える場所でもある」
"Limit over"と書きたいのだろうか。
もしかしてスペルミスかな?
レイブン「パンダ版淘汰が強かったのもそこに秘密があるとみてあっしは無限回廊のさらに奥に存在する【地獄】へ向かった。
彦星を倒す手がかりが欲しかったんだ。
しかしフェンリルの野郎にまんまとやられここ無限回廊にいる訳だ」
互いに状況説明を終えた後、スミス達が俺らに天裁の現状とこれからの行動について話した。
スミス『ダンケルハイトが撤退して天裁がこちらに向かってくる。
合流し形成を整えるためこのフロアに待機する形をとりたい。
安全地帯を越えれば激戦となるだろうからな』
ノア『こっちは天裁に指示を回してるからその間ゆっくりしてて』
その言葉に俺らは頷き各自休憩をとることとなった。
~
ぽちと織姫が仲良くエリア内を散歩している光景を見て俺はレイブンと課金の方に歩み寄った。
レイブンは片手に赤い瓶を持ち、ラッパ飲みしながら俺らの顔を一人一人懐かしそうに眺める。
こんな状況の為飲むのはどうかと思ったが背後にいる課金が指で口にバツをし俺は黙る。
課金「レイブン、確かに大きな戦いがあるから気付けにバーサーカーボトルを飲むのは分かります。
ですが感情の昂りで【異形化】する危険性も」
その言葉を煽りに一気に瓶を空けるとレイブンは頭を下げた。
レイブン「わりぃな教え子の前で。
これは酒とは違い戦闘意欲を高め攻撃力を増加させる代物だ。
こっからガチでフェンリルの部下と戦うことになる。
あのクソ猫相手になると天裁がいたとしても厳しい戦いとなるだろう。
あっしが【異形化】しなきゃならない」
お酒を飲むようには見えたがどうやら違うようだ。
しかし聞きなれない単語が聞こえた。
淘汰「【異形化】ってなんだ?」
その説明に神谷の父が代わりに答えてくれた。
課金「レイブンは極度の感情の昂りで変身をすることが出来ます。
それを私達は【異形化】と呼んでいます。
しかし自らをコントロール出来ず凄まじい力で暴走する為手が付けられない」
レイブン「あっしはそのせいで【三勇者】を追放されたのさ。
あいつらに迷惑かける事になっちまって彦星を倒す事はできないって。
だからいつかは【地獄】による強化でコントロールするかそれに頼らない方法を見つけたい」
【三勇者】は彦星を打ち倒そうとしたパーティ。
チャラ民と天裁とレイブンの三人。
スミスがリーダーを勤めていたギルドegoの生き残りで構成されたメンバーだ。
何度も勝ち目の見えない恐怖に立ち向かったと天裁から聞いた。
俺が失った5年間はとても重いものであったんだと強く感じる。
するとほんのり顔を赤くしたレイブンが急に肩に手を回してきた。
レイブン「よぉパンダ。
すげぇよお前、彦星を倒したんだろ。
ひっく、またステゴロの殴り合いやろうぜ?
初めて会ったみたいによぉ?」
結局これ酔ってるんじゃないのか?
命の危機を感じたその時。
強く響く太い声が聞こえた。
天裁「先生!
また飲んでるのですか!?」
レイブン「げっ学級委員長!」
酔いが一気に冷めたレイブンは跳ね上がりテントに頭をぶつけた。




