・番外編 天裁「恋する学級委員長と妹」※挿絵有
※仮想空間においての会話は
名前「会話文」の特殊表記となります。
詳細はあらすじにて
これは2055年の本編物語が始まる少し前の話。
180cmを遥かに超える青年と170cmの長身少女が歩いていた。
男の名前は天裁。
本名は天歳 秀人。
今私は仮想空間の大きな街にいました。
普段から行く本屋へ足を運んでいます。
現在全人類は仮想空間とよばれる電脳世界に意志を閉じ込められている。
【電脳王 彦星】と呼ばれる電脳生命体の王によってです。
私は彼を倒す【三勇者】の一人として何度も電脳王に立ち向かっていた。
私とレイブンさんとチャラ民さんで。
しかし今日はしばし与えられた休暇。
ずっと突き詰めていてもあの滅茶苦茶な戦いの中精神をすり減らしてしまう。
私も確かに疲れていました。
だが本来私達が生活していたあの世界。
現実世界での学校生活。
それを取り戻したい。
そして先生とのまたあの日常を。
いや何を考えているんだ私は!?
私は学問や生徒会の努めを果たし、将来国を変える大物を目指した男。
さらに仮想空間において幅を広げ両世界においてこの天歳という名に恥じぬ男となるのだ!
その為に電脳王を倒さねばならない!
そう拳を握りあげた途端。
横にいた私と同じ白髪で褐色、赤い眼鏡をつけた女の子がじとりと私を見つめた。
ひいこ「にーたん、また変なことを口に出してるよ?
マジで皆引いてるからやめなよぅ」
実は私には妹がいます。
品行方正を心掛ける私とは対照的でチャラチャラした服装で化粧も濃い妹ひいこ。
本名は天歳 秀子です。
ちなみに勉強も全くせず遊んでばっかで困っています。
ひいこ「あちき分かってるんだよ?
女の勘だけどにーたんは恋愛の本を買おうとしてるでしょ?」
私は思わずギクリとしてしまった。
勿論彦星対策の為の魔導書を買おうとはしていたがその手の本も買おうとしていた。
いやそのあれなんですよ。
先生と上手くいくための本で異性の考え方についての本なんです。
なにも如何わしい本では!
とりあえず兄貴らしく冷静を装うことにしました。
天裁「ひいこ。
たまには君も本を読みなさい。
その為に今日は誘ったのですよ?
数学や化学、物理学は仮想空間においての魔法に通じるものが……」
ひいこ「やーだ!
雑誌読むなら良いけどつまんなーい。
でもさ、にーたんは烏丸せんせと仲良いんでしょ?
だったらぁあちきさにーたんにもっと良い店おしえてあげよっかな?」
天裁「全く……。
目的の本を買ってからですよ?
いいですか?
チャラついた店には行きませんからね?」
一応本屋さんにはすぐに向かったが集中も何も出来ませんでした。
悔しいですが男女関係というものに関しては妹の方が詳しいからです。
彼女の言う店が何の店かとても気になったからもあります。
魔導書を適当に何冊か買い、妹は女性向け雑誌を買い漁り会計をしました。
ひいこ「わぁ!
チャラ民様写ってる!
やっぱり可愛い!」
天裁「名前の通りチャラついた人です。
ただ戦闘においては並ならぬ努力をされているので認めてはおりますが」
ひいこ「にーたんは【一言誤字】だねぇ。
何事も一言言わないと気が済まない人って意味らしいよ!」
天裁「それは【一言居士】です」
呆れ顔でそんなやり取りを繰り返し気が付けば本屋を抜けました。
ぼーっとしながら私はまた先生のことを考えていた。
烏丸先生、この世界ではレイブンさん。
どこか抜けた所があり放っておけない所がある。
お酒を飲めば突飛な行動を取ったり、義理人情に熱すぎて悪い奴とすぐに喧嘩をしてしまったり。
私も昔は根性の悪い人間だった。
仮想空間においては禁忌を破り【禁呪】や【禁術】に手を染め、味方など駒以下の扱いだった。
だがあの真っ直ぐな彼女や学友達を見ているうちに気が付けば私自身も正義に熱い人間となってしまっていた。
先生とぶつかった事も何度かあった。
それでもあの芯の通った彼女が私にとっては憧れでもあり好意を隠せない。
ひいこ「にーたん、声に出てるよ?」
天裁「え!!」
ひいこ「うそ嘘!
でもやっーぱり烏丸先生のこと考えてたでしょ?
もしよければ理容室いかない?
イメチェンしよ!
もしかしたら振り向いてくれるかもよ?」
普段の私だったら即断る所でした。
髪型など仮想空間において自分で好きに設定できます。
それをお金を払ってまで他人に任せるような非生産的なことはしたくない。
ですが妹の言葉に今回だけは従ってみる事にしました。
~
しつこく話しかけてくるチャラい理容室の男。
最初私は微積分と三角関数が応用物理に用いられる興味的な話をしながら髪をいじってもらいました。
仮想空間の理容室は不思議なもので一度髪を長髪の設定にし、そこからハサミを入れて調整をするといったものなんですよ。
長髪は流石に似合わないと思っていましたが我ながら割と似合っていました。
理容室の男もやけに顔立ちやスタイルのことを褒めてくるので気分は悪くないものでした。
10分で終わるだろうと踏んでいましたが色々な髪型を迷い選んでいるうちに結局1時間も経ってしまっていました。
店の入口で会計をすると妹が口に手を当てて大きな声を上げた。
ひいこ「やっば!
やっぱりにーたんちゃんと髪型変えればめっちゃかっこいいじゃん!
写メ撮っていい!?いいよね!?」
返事をする間もなく携帯端末の連射式フラッシュを私に向ける妹。
かなり恥ずかしいものですね。
まぁ実際に鏡に映る私の髪型は流行りのさっぱりとしたもので個人的にも気に入りました。
後は先生にお見せ出来ればいいなとおもうのですけれども。
ふいに思った願い。
それに対し頭に響く声がした。
『第3回人気投票一位おめでとう。
そなたの夢を叶えよう!』
誰ですか!?
あなたは!
私は思わず声を出してしまいそうになりましたが踏み込んだ足で開く自動ドア。
その先にいたのはなんと先生だった。
天裁「せ、せせせ、先生!?」
私は思わず声が上ずってしまった。
視線を上げて見えるのは赤い長髪。
カラスのように黒い戦闘服。
腰に帯刀した立派な刀。
そして紅潮した顔。
私は跳ねる心臓を押さえ込んでとにかく思いを伝える事にした。
天裁「ど、どうですか?
先生!
私の新たなる髪型は!?」
レイブン「あー。
やっべ飲み過ぎた。
天裁の頭が白いクレヨンに見える。
なぁここは飲み屋なのかぁ?」
……。
私は妹の方に振り向いた。
彼女は苦笑いをして答える。
ひいこ「多分髪型を認知出来てないっすねこれ」
私は一瞬悲しい気持ちになったがそれ以上に心配になり先生の肩に腕を回した。
天裁「先生。
飲み過ぎですよ。
帰りましょ」
フラフラの先生を連れ出す兄貴。
その姿を見ながらニコリとする妹。
ひいこ「なーんだ上手くやってんじゃん」
最初は二人の関係を心配をしていたもののそこまで必要ないことを感じた。




