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【挿絵400枚】2055~ステータス0の亡者  作者: 烈火
第4章 異形者 レイブン
42/83

☆メインストーリー4-3 「いざ無限回廊へ」※挿絵有

~現実世界・住研究所 地下拠点 管制室


『彦星討伐後、仮想空間で起きた事柄。

……以上が報告となります』



挿絵(By みてみん)



天裁(てんさい)は淡々と報告を済ませた。

彼の意識は現実世界には存在しない。


その為こうしてプロジェクターによる映像越しで仮想空間から会話する事となった。


不思議な感覚だ。

彼は俺らと同じく人間として生きていた。

しかし同じ世界にはいない。


そうぼーっとしているとスミス博士が先程の話を要約してくれた。

確か電脳王が消えた事で電脳生命体における独裁が無くなり小競り合いが発生しているという内容だったかな。


「ここにおけるGMの神【GGM(ゴッドグランドマスター)】は存在が不明瞭という理由で、やつを中心には考えず事の発端である電脳王が元の支配者として考え話す。

さて本題じゃけ。

電脳生命体達は二つの派閥に分かれた。

【電脳王 彦星】がやられて元部下である金閣・銀閣が率いる保守派。

そしてフェンリルの率いる革新派【エルダーGM】」



挿絵(By みてみん)



「金閣銀閣は狐の獣人じゃったのは覚えとるじゃろ?

フェンリルは黒い犬らしいと聞く。

少年に化けとるという噂まである。

金銀狐は彦星から電脳王の座を引き受けるという点で保守派であるが、行き過ぎた彼の思想を正すという考えで人類に対しては共存思想を持つ。

逆に革新派であるフェンリルは電脳王を廃し自身を中心とした新たな覇権を握ろうとしている。

んで奴は彦星と並ぶ人類支配思想を持つと」


「難しい話だな」


俺は即答した。

まずはとりあえず頭に入った事を浮かべる。


金・銀狐サイド。

フェンリルサイド。

この二つで電脳生命体の派閥があるようだ。

そこに複雑な事象が絡みよく分からん。


「まぁつまりはうちの国の政治みたいに昔からの考えを変えるやつらが必ずしも革新派ではないということじゃけ。

どちらが必ず彼らの正義という訳では無いが人間との共存という点とコネクトのある金閣銀閣サイド。

GM保守派がわしらにとって都合がいい」


スミスは説明を重ねてくれるが政治・経済の点数は赤点を回避してきたのでやっぱり難しい。


話に織姫が割って入ってきた。

彼女自身も少し顔を顔をしかめていたが別の理由だった。


「思想で派閥を起こすなんて人となんら変わらないわね」


確か織姫は人間と電脳生命体の共存を夢見ている。

そのために人類に手を貸してくれてるそうだ。

だからこの派閥争いに機嫌が良くないのであろう。


俺が記憶を失う5年前から共に戦った仲間でもある。

幼いその見た目でいったい何歳か怖い。


さて現状況に戻る。

映像の天裁はスミスの話を確認し頷いた。


『その解釈で間違いありません。

さて仮想空間に閉じ込められた人間サイドの話ですが【(あかいろ)騎士団】団長チャラ民から連絡が入ったと聞きました』


「ああそれはボクの方で預かってるよ。

映像データで届いたから今映すね」


サポートAIのノアがホログラムのキーボードのエンターキーを押した。

すると天裁の映るモニターから別窓で新たな人物が映る。

圧政者と呼ばれたチャラ民本人だった。


『やっほー。

淘汰ー、織姫聞こえてる?

この前は色々迷惑かけてごめんね!

ってか電脳王倒したのってマジっすか!』



挿絵(By みてみん)



高い元気な声が響く。

少女のような青髪のアバター。

しかし中身は幼なじみの男子速水だ。


性別にコンプレックスがあり仮想空間ではこのようなその姿でいるらしい。


背後に幹部の男性カイザーが悪戯していたがすぐに駆けつけたもう一人の女性幹部ビショップに連行されていくのが見える。


団長のチャラ民は気付かずニコニコしながら手をブンブン振っていつものマシンガントークを始めた。


『淘汰達のおかげであれから猩騎士団も体制が少しずつ変わって多様性を考えるようになったんだ!

すぐに変われるわけではないけどね。

団長(だんちょー)自身だって彼らへの憎しみの感情は残ってる。

でも電脳王を引き継ぐ金銀達が自ら団長達のとこに来て会談をしたんだ。

まぁあの子達とも彦星の元部下で色々あったから最初は考えた。

けど彦星の思想であった人類支配は電脳生命体全てが望んでないことも知った』


「圧政者と呼ばれていたお前も大分変わったんだなぁ」


圧政者チャラ民との戦いを思い出す。

彼は圧倒的な力で電脳生命体を粛清していた。


電脳王によって仮想空間に閉じ込められた人間のうち一部は意識がない。

強制的に行った事への弊害と思われる。


その中でチャラ民は家族が意識障害に陥り電脳生命体への恨みから騎士団長へ這い上がったのだ。


しかしそれでも考えを改め、強いまなざしを向ける彼に感慨深さから思わず言葉が出た。


「これはビデオメッセージだからあんたの声届いてないわよ」


織姫に言われ気付くと少し恥ずかしくなり黙ってしまう。


『でも全人類精神凍結プログラムフェンリルによって人類は未だに仮想空間(ここ)に居る。

だから電脳王を倒しても戦いは終わってない。

今は立場の関係で共闘はできないけど

フェンリル戦。

団長達は淘汰達のこと全力で応援しているよ!

天裁、三勇者としてやって来て強いんだからサポートはしっかりね!』


そこでメッセージが途切れた。

彼も5年前彦星との戦いで俺らと共にあった。

その後も団長でありながら三勇者として勝ち目も見い出せない彦星の戦いをしてきた。


天裁は手に胸を当てた。


『あの人が圧政者となった理由。

それは私が弱さを見せた結果。

三勇者のパーティが解散となったから。

しかし今度はこの(わたくし)天裁。

皆様の役に立って見せますとも!

準備の方も終わりました!』


一度フェンリルの幻覚に追い詰められ廃人に近い状態から這い上がり彦星を共に打ち倒した学友。

そんな姿を見て頼もしさを感じた。


司令塔のスミス博士が本題に入った。


「さてじゃ。

そろそろ先陣を切って内部に侵入した天裁。

レイブンとの連絡がついたな?

事前の情報と作戦準備は完了した。

場所は無限回廊、モンスターが集う練磨のダンジョンじゃ。

ダイブ先である無限回廊B1Fには天裁が待っとる。

お前さん達は計画通り無限回廊B50Fの安全地帯で待機する彼女と合流して欲しい」


ノアがじいさんの言葉に補足説明をした。


「最下層のB100Fにはフェンリルがいる。

レイブンから情報を貰ったからボクと博士で現実世界から動き方については逐次お知らせするね」


床から人一人が入れるコフィンが二つゆっくりと現れた。

犬用のコフィンも1つ出てくる。


俺と織姫と犬のぽち。

仮想空間担当チームに用意された物だ。


普段の仮想空間へのダイブはベッド等で倒れて意識を切り離す【Vセル】という装置を用い仮想空間にログインをしていた。


しかし研究所には意識のない000がいる。

彼女の行動は予測が効かない為、緊急事態に備えてコフィンを新たにスミスが用意したそうだ。


手順や計画の内容は既に打ち合わせてある。

俺は共に入る織姫と顔が合った。


「大丈夫よ。

死にそうな奴ほど死なないフラグってあるからその顔なら平気」



挿絵(By みてみん)



「フォローのつもりか?」


顔に死相が出てるのはいつもの事だ。

彼女の言葉に苦笑いながら俺はゆっくりとコフィンに入った。

独特な気遣いだがお陰で緊張が抜けた。


コフィンが閉まり意識が抜けていく。


次の冒険が始まる。


そう心で呟きながら俺の意識は現実世界から足を離した。



仮想空間にログインする為コフィンに入った淘汰達。

彼らの意識はここにはない。


スミスはこれからの仮想空間における指示をする為呼吸を整えようとしていた。

この静かな雰囲気が一番息が詰まる。


タバコを先程から室内とはいえ吸ってしまうのは緊張感が強いのであろう。

特にこの状況は。


隣にいるアンドロイドを見つめる。


ノア。

彼は電脳生命体とは違う別格の存在。

スミスの助手として雇われているが仮の役割。


こちらに気付いたノアが横目で見ながら話しかけてきた。


「結局住男くんは000を助けるの?」


「その名前で呼ぶんじゃないわい。

ああそうじゃな。

ギルドを作ったせいでこやつらに情が移ってしもうた。

じゃがこの世界線の淘汰と共になら上手く収められると思う。

わしの父親より強い男だからな」


スミスは一度大きな咳払いをし強い決意で答える。

額に汗が出始める。

ここでの決断は重いものとなる。

ノアは相変わらず柔らかい表情に軽い口調であった。


「この世界の淘汰か。

とんでもない化け物に育っちゃったね。

000に妨害されてステータスは0だったはずなのに彦星戦での彼は異常だった。

記憶すら失おうとも天裁に憑依し感覚で戦っていた。

動かせる肉体……つまりステータスを1でも持てば大暴れをし始めてしまう。

【亡者の力】による憑依が必要なのはいい制限かもね。

000を操作したあっちの世界のGGMはあえて肉体のないアバターを淘汰に授けたのかも」



挿絵(By みてみん)



「そうじゃな。

圧政者と彦星戦は憑依の力で乗り越えおったしフェンリル戦でも変わらず戦力となるだろう。

今更もう戻れんよ。

アバターを再度作るのはGGM権限が必要となるから本人以外は無理じゃし。

いずれにせよ【ステータス0の亡者】

これが最適解じゃ」


「しっかし世界を救う為全てを捨てると決めた少年が仲間も背負って戦おうとするおじいちゃんになるなんてね。

本当は今の時点でエルリアちゃんを詰ませたかったんだけど」


数十年の付き合いとなるが初めてあがった名前にスミスは思わず目を見開いた。


「ん?今誰と言った?」


「人間には関係の無いことさ。

あの子だけは大嫌いなの。

だから話すことは無いよ。

今回の選択はボクは気に入らないってだけ」


「まだ隠してる事があるのか?」


「……」



挿絵(By みてみん)



突然ノアの口から言葉が消えた。

そのあまりにも強い威圧感にスミスは思わずハッとした表情で固まってしまった。

ノアに対し干渉をし過ぎないというのを約束に力を借りている。

もしやそれを破ってしまったのか?


スミスは心臓が跳ね上がり声を押し殺した。

数秒の間痛い程の沈黙が訪れる。

しかし恐れていたことは起きなかった。


振り返ったノアはニコリとした表情であったからだ。

胸を撫で下ろしたスミスはため息を吐いた。


「お前さんといい、000といい、那老といい、GGMといい。

地雷に囲まれて寿命がいくらあっても足らんわい」

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