☆メインストーリー 3-7 「電脳王彦星戦」※挿絵有
※仮想空間においての会話は
名前「会話文」の特殊表記となります。
詳細はあらすじにて
~仮想空間・真実の都市アクアリゾート
吸った空気は凍える程冷えていた。
荒廃した街に現れた巨大な機械に乗る男。
100億の人類を仮想空間に閉じ込めた電脳生命体。
最大の宿敵である電脳王彦星であった。
彼はフェンリルの幻術により徘徊する人々をまるでゴミのように見つめ、無機質で人工的な声で語りかけた。
彦星『これがフェンリルの望む理想とは。
仮想空間に全人類の意志を閉じこめるのに手を貸した彼の統括地。
その結果がこの醜悪さですか』
凄まじい威圧感だ。
隣から先程まで倒れていた天裁が声を震わせ呟く。
天裁「まずい不意をついて来るとは……。
最悪の事態だ!」
すぐ近くには先程は出くわした狐の電脳生命体達、金閣と銀閣がいた。
その姿を目にし震えながら反応する。
銀閣「彦星様!
そ、そのこれは……!」
彼女達は彦星の直属の部下だ。
しかし彼に背く行為をしてしまった。
フェンリルの悪夢から天裁を救って欲しいと彦星と敵対するこちらに頼んだのである。
だが電脳王から出た言葉は意外だった。
彦星『いいのですよ。
人類を支配した上で情けをかけた。
その考えは電脳生命体という大枠として考えれば賛同者は多いといえるでしょう』
金と銀の狐を見る彼の目には不思議な優しさがあった。
彦星『私達の最終目標は違いますが
電脳生命体の王の座はより長く生きる者に託したい。
金、銀。
こんな死に損ないにも付いてきてくれた。
あなた方には大きな感謝しかありません。
だから……』
彦星は金閣と銀閣の足元に穴を発生させた
不意に発生した重力に彼女達は消える。
彦星『生きて下さい。
ここからは私の最期の闘いとなります。
電脳生命体により良き未来を』
その言葉を聞き何とも言えない気持ちになった。
彦星は悪意のみだけで行動をしているとは思えない。
不意に肩を叩かれた。
天裁「己が正しい義を為すことは正義となります。
ですが己が悪しき義を為せば悪となる。
電脳王もまた自身の正義を貫こうとしている。
あなたはどちらを為すのですか?」
俺は目を閉じた。
元の日常を取り戻す為に共に立ち上がった織姫とスミスとノアとぽち。
失ってしまった記憶の仲間達。
人間に対して非情であった電脳王。
彼にも同じものがある。
互いの目的や経緯は違う。
一方が正義、一方が悪とは言えない。
だが俺も正しいと信じた事を貫く。
何を為すかは決まっている。
淘汰「正義だ」
天裁「ならこの厄災軍師天裁。
全力で共に正義を成しましょう!」
織姫「カッコつけも中学生までになさい」
突然の言葉に振り返る。
彦星と対をなす名前を持つ電脳生命体織姫。
彼女は俺の横に立つと彦星を睨みつけた。
織姫「でもガラクタに乗って偉そうに減らず口を垂れる王様よりはマシね」
彦星『GGMが生み出した欠陥品ですか』
建物の影から仮面の男が姿を表す。
000の執事であるMr.Bだ。
Mr.B「Sorry,お待たせ致しました!
私もいます!
我が主000(ゼロ)様は淘汰さん達を信じ、フェンリル討伐に向かいました!」
天裁「あなたまで!」
Mr.B「Oh My Friend!
その顔は!あの時の貴方に戻りましたね!
さて電脳王彦星。
GMの総意に背くその意志はTodayをもってBreak Downさせて頂く!」
スミス『わしらもいる!』
通信越しに現実世界組のスミス博士とサポートAIのノア。
彼らもホログラムで表示された。
続々と現れた仲間達に彦星は口を閉ざす。
そこには不気味な空気を感じさせた。
突然周りから悲鳴が上がった。
急に周囲の瓦礫が浮かび上がり重力がひっくり返り始めたのだ。
そしてLv3,500の数値が天裁から現れた。
彦星を覆う巨大な機械。
右腕に装備された銃口から凄まじい光が集まる。
天裁「まさか【人工衛星型兵器ラグナロク】と並ぶ
【練武起爆装・グングニル】!
アクアリゾートごと吹き飛ばすつもりか!?」
彼は目を大きく見開き注意喚起をした。
まさか電脳王が初対面時に放とうとした兵器ラグナロク。
これは大陸を消し飛ばす威力を持つとした。
天裁「皆さん!防衛手段を!!
超広範囲攻撃が来ます!
防ぐ奥の手はありますが勝機を失う。
代替とする案の呈示はできますか!?」
突然の言葉に判断がつかず焦っていると
すぐに通信越しのスミスが解決策を提示した。
スミス『織姫!
お前さんの能力、泡魔法を使え!
そして【Gカード】の使用!
ぽちの力を代用した【硬化】じゃ!
それで一撃だけなら何とか凌げる!』
織姫「嫌よ!
だって馬鹿にされたから!」
淘汰「お前そんな力使えたのか。
だが頼む織姫!」
理由を聞いた途端珍しく織姫は顔を赤らめじいさんに怒鳴った。
織姫「泡姫とか言ったこと謝ってよ!」
思わず周りの視線に合わせホログラムのじいさんを睨んでしまった。
言葉の意味はよく分からないがロクでもなさそうなのは空気でわかった。
織姫「もう後でいいわよ!」
次の瞬間彦星から強大なエネルギーが放たれた、視界から色が消え真っ白となる。
思わず目を閉じたが何も感じない。
しかし直後に凄まじい爆発音。
さらに立っていられない揺れが襲う。
数秒経ち冷めた声がした。
織姫「なにビビってるの淘汰。
ステータス0だから戦えもしないけど
ダメージをすり抜ける体質でしょ」
目を開ける。
鉄で出来た大きな泡が俺たちを包んでいた。
なんとか攻撃は受け止められたか。
透けて外の光景が見えたが
何も無かった。
天裁「住民は吹き飛ばされましたが皆さん一応生きています。
仮想空間の仕様上一時的に仮死状態となっている。
ですがアクアリゾートが……」
隣から聞こえた声と共に泡が弾け更地となった荒野が広がる。
彦星『【練武起爆装・グングニル】
敵最大レベルLv3,500の累乗。
12,250,000のダメージを与える。
範囲は絞ったつもりですがまさか防ぐとは』
織姫「私を欠陥品と侮ってたわね。
そしてみんなごめんなさい。
下らない事で躊躇して。
私だって人間と電脳生命体の共存の夢がある。
だから全力で臨むわ!」
そう織姫は強く訴えたが能力の限界以上を使ったのか膝をつき息を切らせている。
心配になり肩を貸した。
範囲を絞りこの地平線が見えない状態。
空いた口を閉じる事が出来なかった。
Mr.B「お前は躊躇もないのか!?
ここには何万もの人々がいる!
焼け尽くす痛みがTheyを襲ったのですよ!
しかもこの娯楽都市を吹き飛ばした!」
彦星『欲望の都市の間違いですよ。
ここは人の醜さの象徴、吐き気がする。
しかし今日はやけに欠陥品と出会う。
Mr.Bでしたか?
あなたも私というGMの指導者を生み出すための欠陥品として作られた。
仮面は同じ顔だから付けてるのでしょう』
天歳「Mr.B……」
友人の声にMr.Bは仮面を外す。
まさにその顔は彦星と瓜二つだった。
Mr.B「この仮面は主より頂きました。
宿命に縛られた私に、私らしく生きろと。
私はこの運命に立ち向かいます。
My Brotherを止めるため!」
その言葉を聞いて彦星の声が突然変わる。
響き渡ったのは掠れた笑い声であった。
彦星「あははは……。
思わず人工音声が解けてしまったよ。
唯一の人類淘汰、GGMの欠陥品織姫、僕の出来損ないMr.B、堕落した三勇者の天裁。
良い役者達じゃないか。
後はフェンリルが憎き000を始末する。
未来淘汰とスミスという残党を直接始末出来ないのが悔しいが」
淘汰「未来の俺?」
突然の言葉に思わず反応する。
しかし彦星は首を振った。
彦星「無粋だったね。
さて淘汰最後に会った時の言葉。
覚えてるかい?
"残された時間はない"
今度は僕も同じだ。
なら全力で立ち向かおうじゃないか!」
突然周囲が青く光りだした。
彦星「電脳王の名において命ずる。
【GGM権限・絶鋲】」
ノア『それは!
みんな気を付けて!
その力は空間そのものを作り出す……!』
現実世界から通信が入ったが途切れてしまった。




