☆メインストーリー2-6 「決裂」※挿絵有
~仮想空間・チャラ民の家
天空都市にたどり着いた淘汰達。
そこで出会った幼なじみチャラ民と出会う。
宿に案内された場所は豪邸だった。
初っ端から執事やメイドが並んでいて緊張が止まらなかった。
だが意外と連れ犬のぽちは行儀が良く、普段言葉遣いが悪い織姫も大人しかった。
本当に立派な家だ。
仮想空間最大組織【猩騎士団】
その団員といえどチャラ民はかなり階級が上なのだろう。
豪華な飯を食い終え気付けば夜だった。
織姫は風呂に入ると言い残し、犬はメイドからブラッシングを受けていた。
俺に関しては特にする事がなかった。
その様子を見たチャラ民。
彼はベランダに俺を連れ出してくれた。
街の灯りに星の見える夜空。
現実では街の灯りが強いと星はあまり見えないという。
だが仮想空間だからこそこうした景色を望めるのかもしれない。
チャラ民「淘汰、呼び出してごめんね。
相変わらずご飯は食べれないの?」
先程から話しかける少女の正体は幼なじみの男子、速水。
仮想空間ではチャラ民という名前だ。
淘汰「暇だったから助かったよ。
俺は元々飯が食えない体質みたいだ。
とても良い食事を用意してくれたのにごめん」
チャラ民「いいんだよ!
相変わらず元気そうでよかった!
その天使の輪のアクセおしゃれだね!」
にこりと笑う。
彼は思った事が顔や口にすぐ出るタイプなようだ。
記憶を失う前はすごく仲良かったのかな。
スミスじいさんの言葉を思い出した。
この街には電脳生命体がいない。
猩騎士団が俺らのようなよそ者に警戒をしないのはおかしい。
だからこの友人を疑えと言っていた。
考え込んでいると彼の表情が陰った。
チャラ民「淘汰はあれからどうだったの?
現実世界がどうなってるか分かる?」
2055年人間の意思は仮想空間に閉じ込められた。
その情報通りならここに存在する人間達は現実世界の事は分からないのかも。
全てを伝えたいが気は許せない。
じいさん達の存在はまだ明かしてはならない。
淘汰「俺は……。
どうやら取り残されたみたいだ。
現実世界の唯一の生き残りのようだ。
織姫のサポートで仮想空間に入れた」
チャラ民は沈痛な面持ちだった。
せっかくもてなしてくれたのに暗くするのはよくない。
俺は何か冗談でも言おうとした。
すると
チャラ民「ねぇ、これから織姫達は処分しないといけないんだ」
淘汰「え」
頭の中が固まった。
突然の発言に何も声が出ない。
心優しい彼が冗談を言ったのかと思った。
だが違う。
その瞳には強い意志を感じた。
チャラ民「猩騎士団は電脳生命体から奪った力で皆を現実世界に戻すのを目的に活動をしてる。
集めた力で彦星を倒すんだ。
そして【電脳生命体GM】を全滅させるのも指針。
満身創痍の電脳王になら勝機はある!
皆の人生。
そしてチャラ民の家族や親友を滅茶苦茶にした電脳王彦星を倒すんだ!」
拳を握ったチャラ民。
彼の手から血が垂れていた。
チャラ民「淘汰はかけがえのない親友。
お願い。
一緒に彦星をいや。
電脳生命体を根絶しよう!
もうすぐ猩騎士団最上級騎士達が来る。
淘汰も織姫達倒すのを手伝って!」
彼はそんな考えだったのか。
俺はその言葉に反論できなかった。
電脳生命体と人間の溝は深過ぎる。
俺は5年もの間で電脳生命体がどのような事を為したかはよく分からない。
チャラ民の気持ちを考えてみた。
GMによって親友が姿を消した。
完全に死んだと思っただろう。
その一例だけでも電脳生命体を憎む気持ちは理解出来る。
もう一人の幼なじみの神谷。
それに加え家族に及べば……。
すると遠くから甲高い悲鳴がした。
織姫の声だ!
俺はいても立ってもいられなくなり踏み込んだ。
その時だ。
とても強い力で腕を掴まれた。
チャラ民「ここで決めて!!
織姫に付くのか親友に付くのか!」
俺は疑問を投げかけた。
淘汰「チャラ民。お前は織姫に何をされた?
少なくとも俺はあいつに世話になった」
チャラ民「それは……電脳生命体だから」
淘汰「そんな理由で殺されてたまるか!」
一喝すると腕を振りほどき走った。
一人残されたチャラ民。
歯を食いしばると
チャラ民「わからず屋……!」
踏み込んだ地面に亀裂が走った。
~仮想空間・下り階段
スミス『焦るな淘汰。
織姫側を含め双方の情報は入っとる』
ノア『今からルートを表示するね!』
現実世界でモニタリングしているサポート組。
じいさん達の声がした。
視界に屋敷の地図が表記され案内に従う。
会話に割り込む事はなかったが一応あちら側も把握はしているようだ。
犬の鳴き声が響く。
その声の方向が近付くとそこは露天風呂だった。
バスタオルで体を包んだ織姫とその前に立つぽち。
そして2mはある長身の男女。
彼らは睨み合っていた。
織姫と目が合った。
どうやら怪我はないようだ。
織姫「何か言いなさいよ!
タオルでなんとか体隠してるのよ?
男がこんな姿みたら何かしらアクション取るでしょ」
淘汰「ごめん、反応に困ってる。
しかも非常事態だし何て言えばいいか分からん」
男女が振り返り俺の方を見た。
一気に視線が集まって凄く緊張する。
じいさんから個人宛のチャットが届いた。
スミス『今見えるLvという数値は戦闘時に表記される。
赤字はお前さんに敵意を持つ者じゃけ気を付けろ』
ここ天空城に来るまで異様なステータスのパンダに絡まれた。
あの敵達はLv999であったがカンスト値ではないのか。
二人組の奥から吠えるような声がした。
ぽち「おい、ヒョロガキ!
そいつらは見たどおり桁違いの強さだ!
我でもばばぁを守りきれねぇ!」
ばばぁ呼ばわりに織姫は反応は無い。
ぽちの首輪を持つ者だけに聞こえる声のようだ。
Lv0に何が出来るかは分からない。
だがここであいつらを見殺しになんてできない。
すると意外なことが起きた。
紫髪の男が突然にこっと笑い俺に近付いたのだ。
カイザー「おや、しゃっちょさんじゃなかった。
チャラ民さんのご友人ですか?
私副業でお笑いコンビ【アンドールズ】のボケ担当をしておりますカイザーと申します。
あ、これ名刺です」
その声は拍子抜けするような穏やかな声だった。
淘汰「あ、どうも」
俺は突然渡された名刺にかしこまる。
変わった人だなぁ。
と思っていると隣にいる茶髪の女性が怒鳴った。
ビショップ「カイザー君!
この人は電脳生命体の味方かもなのですよ!
何流暢に名刺渡してるんですか!?」
カイザー「いやぁどんな事があるか分かりません。
まぁサクッとやるつもりですが、ビショップさんも名刺位は渡しましょうや友人さんへの礼儀ですぜ」
勝手に喧嘩を始めた。
呑気な連中だが実力は相当なのだろう。
ぽちの体力値が全くないし酷くやられてる。
周囲も激戦だったのか荒れ果てている。
俺は隙を見てぽち側の方に回った。
奴らは俺に対し眼中に無いのか喧嘩に勤しんでいる。
淘汰「おい、ぽち大丈夫か?」
織姫「倒されては復活アイテム使ってその繰り返し。
復活回数のデッドラインを超えてて非常に危険。
戦闘を打ち切らないと死ぬわ。
Lvによるステータスが足りない。
まだこの世界での戦闘回数が足りなさ過ぎる」
スミス『一応織姫は復活アイテムの使用。
ぽちには硬化フォームになってもらって場を繋いでいた。
だがあまりにも状況が悪い。
お前さんに試作兵器の使用許可を出そうと思う。
通信が途切れた時に作ったものが……』
その時だ。
言葉の途中で突然地面に吸い込まれるように織姫とぽちが消え、新たな人物が地面から現れる。
金髪坊主にサングラス、褐色という男だ。
こいつも身長180代はある。
ただ表示されたLvの表記は赤ではなかった。
じゃも「君達あかんで。
そんな惚気けとって。
ほならね団長が処断したええってなるやん。
ようダチ……いや淘汰久し振りだで」
表示された名前には全く記憶が無い。
淘汰「すまない。
俺は仮想空間の記憶がほとんど無いみたいなんだ」
チャラ民「そうなんだ……。
やっぱり皆の事忘れてたんだね」
その声に周囲にいた上級騎士と思われる三人は背筋を正した。
先程引き離したチャラ民が追い付いた。
頭を下げる彼らを横切り俺の目の前に立つ。
味方が全く居ない、万事休すだ。
じゃも「メルトの力で地面を液化した。
電脳生命体は地下の独房に落としといたで。
多分速攻で屋上の処刑台に連れてくんだろうがな。
団長さんよ」
あいつが騎士団長だと!?
チャラ民から笑顔は消え厳しい表情をしている。
右手に青く光る杖、左手に青く透き通る剣。
まるで別人のような気迫であった。
チャラ民「日が昇ると同時に処刑する。
電脳生命体は根絶やしにしないといけない。
ただ親友は……淘汰には手を出さないで欲しい」
Lv5300……!?
恐ろしい値に驚いた。
しかしそれでも敵意を持てないのか。
恐ろしい形相だが声は震えているのが分かる。
赤字ではないLvの表記が本心を物語っていた。
その様子を確認した途端背後から声がする。
じゃも「地下牢で話をするか。
文句は言っちゃあかんよ?
互いにここで血を見るのは悪手やし」
俺はこの厳しい状況に為す術も無かった。
じゃもという男に連行される。




