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第40話 事の始まり

「じゃじゃ〜ん。ひさびさの登場でちゅ♪」


 おそらくは夢の中、ロリ女神様の登場である。

 しかし、もう驚きはない。

 繰り返しの登場ともなれば、慣れたものである。


「むぅ〜! 感動がないでちゅね」


 女神様は小さい頬を一生懸命ふくらませて不満を表現する。

 ここは素直に謝っておくことにした。

 あんな顔されたら誰だって――ね。

 機嫌を少し取り戻した女神様は話を続ける。


「まあいいでちゅ。実はわたしが出てきたのは他でもないでちゅ。……ずばり封印についてでちゅ!!」


 後ろから効果音でも鳴りそうな溜めと共に、女神様は宣言する。


「知ってるんですか!?」


 俺は驚きに比例した大きな声で聞き返す。やはりあの物語は史実だったのか?


「いや、知らないでちゅ」


 思わずズッコケそうになる。

 見た目お子ちゃまの女神様が、まさかそんな高等技術を持っているとは――、侮れない。

 その俺の心理状態を華麗にスルーし、女神様は続ける。


「正確にはわたしは見たことが無いというだけでちゅ。わたしのお母様が以前そんなような話をしていた記憶があるだけでちゅ」


 なるほど。

 でも、これであのオーブが封印のオーブだという可能性が大きくなってきたぞ。


「女神様は、その魔王というやつについても知らないんですか?」


 もうひとつの気になったことを聞いてみる。


「わたしも小さかったでちゅから…。お母様が何かの封印の手助けをするということだけしか覚えていないでちゅ」


 それならば知っている人に聞けば良いんじゃないか。

 そう思った俺は、矢継ぎ早に質問をする。


「じゃあ女神様のお母様にその事を聞けないんですか?」


 そうすれば封印の細かいことがわかる。

 もしかしたら助けてくれるかも?

 しかし、その蜂蜜よりも甘い考えはもろくも崩れ去った。


「無理でちゅね。お母様はわたしにこの世界を任せて、別の違う世界のお仕事をしてるでちゅ。帰ってくるのはあと1千年後ぐらいでちゅ」


 俺はがっくりと肩を落とす。

 女神様にとっては大した時間では無いかもしれないが、流石にそこまでは待っていられない。


「そんながっかりすることはないでちゅ。魔王だかなんだか知らないでちゅけど、それに対抗するだけの力は与えたはずでちゅ。あとは特訓あるのみでちゅよ」


 俺の意識がぼやけてくる。おそらく目覚めるのだろう。


「頑張るでちゅよ〜〜…………」





 はっ!と目が覚めるとそこは布団の上だった。


「よう、坊主。よく寝られたか?」


 もうすでに起きていたダグラスさんに声をかけられる。


「はい。しっかりと」


 ダグラスさんのいびきでなかなか(・・・・)寝付けなかったのは言わない方が良いだろう。


「そうか、じゃあ今日はみっちり仕込んでやるからな! 覚悟しとけよ」


「はい。よろしくお願いします!」


 女神様の言う通り、特訓あるのみ。

 もしもの為にしっかりと強くなっておこう!









「なかなか良いのが無いな」


 王都ギルドの掲示板に貼り出されている依頼を1つずつ見て回る。

 俺はダグラスさんの特訓を乗り越え、王都へと戻ってきていた。

 更なる実戦経験をつけるため、ちょうど良い依頼が無いか吟味中である。


「ん!?」


 何か視線を感じる。

 振り向くと、その先にはおよそ冒険者には似つかわしくない派手な鎧を着た通称金ピカが、こちらをじっと凝視している。

 あまり絡みたくないので無視の方向で……。

 そう思った矢先に、どこからともなく現れたメイドに声をかけられた。


「ミューラー様よりお話があります。こちらに来ていただけませんか?」


 あのメイドにしては殊勝な言葉使いに、面倒くさい予感がしないでもない。


「行きたくないなぁ〜。この間のお礼だったらいらないからさ」


 俺の正直な気持ちである。だが、もちろん口には出していない。

 そうこう考えているうちに、俺たちは金ピカの目の前へとたどり着いてしまう。

 近くに寄れば寄るほど、趣味の悪い鎧が眩しく感じる。

 金ピカは相変わらずの尊大な口調で、俺たちに話しかける。


「久しいな、庶民よ。何でもこの私を助けたとサツキから聞いておる。何でも好きな褒美を与えてやろう。望みを言ってみるが良い」


 面倒くさそうなので、俺は全力で回避を試みる。


「いえ、当たり前のことをしたまでですので、特にお礼は要りません」


 しかし、その答えに金ピカは食い下がる。


「まあ待て。何でも良いのだぞ。まさか欲しい物が無いとは言うまい」


 なかなか諦めてくれない。

 どうしようかと思っている所に、メイドが金ピカに耳打ちをする。

 金ピカは一瞬大きく目を見開く。

 長いメイドの耳打ちが終わると、すぐさま金ピカは俺たちに告げた。


「すまんが急用ができた。褒美は後で聞くとしよう」


 そう言うやいなや、脱兎のごとく駆け出していった。

 何だか分からないが助かった。

 俺はホッと胸をなでおろし掲示板へと戻る。



 その金ピカの慌てた原因に、俺たちもこれから関わることになろうとは、このときは夢にも思わなかった。




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