第16話 ゴブリンとの戦闘②
「ミウ、右の敵を牽制頼む!」
「ミサキ! 正面に魔法を頼む!」
一瞬の油断も許されない攻防に緊張感が漂う。
どうやら俺たちは、深く潜りすぎてしまったらしい。
大広間のような空間に入った途端に目にしたのは、団体というのもおこがましい程のゴブリンの群れ。少なく見積もっても300はいるだろうか?
数が多いという情報は村でもらっていたが、まさかここまで多いとは思っていなかった。
ミサキという戦力も得て、油断もあったと思う。
とにかくこの場を乗り切ることに専念しなければ…。
3人でかなりの数を倒したと思う。しかし、ゴブリンは一向に減る気配がない。
ミウ、ミサキは魔法職の為、どうしても前衛は俺になる。体力的にはかなりキツイが、ここで俺が倒れたらアウトだ。
幸い広場の入り口付近での攻防の為、まだ後ろは取られていない。
だが、このままでは俺の体力がどこまで持つか。MPに関しても、そろそろミウに限界が来るはず。
賭けに出るしかないか。
「ミサキ! 何秒か時間を稼いで欲しい。目の前の敵を何とか出来るか?」
まだMPに余裕があるだろうミサキに問いかける。
「……ん。やってみる」
ミサキが詠唱に入る。
「……炎の嵐よ、全てを巻き込み灰塵と化せ。ファイアストーム」
炎の嵐が俺の目の前のゴブリンたちを飲み込む。
俺の目の前に迫り来るゴブリンが途切れる。
今だ!
「全てよ凍れ! アブソリュートゼロ!」
詠唱など知らないので見よう見まね、現代知識での絶対零度をイメージする。
俺から魔力がごっそり抜け落ちていく。
目の前の集団が氷の檻に包まれていき、その氷が割れるとともにゴブリンたちが粉々になる。
キラキラ破片が舞い散る幻想的な雰囲気の中で、俺の意識は薄れていった。
目が覚めると、目の前にミサキの顔があった。どうやら膝枕をされていたようだ。
「……大丈夫。ゴブリンは殲滅された」
俺が聞く前にミサキが答えてくれた。どうも3時間くらい意識を失っていたらしい。
腹の上ではミウが寝息を立てている。
ミウも疲れたのだろう。
起こさないように腕に抱えて、俺は立ち上がる。
「ミサキ、ありがとう」
最後の魔法や、介抱してくれたこと、すべてを含めてお礼を言っておく。
「……問題ない。私たちはパーティ、助け合うのは当然」
少し照れくさそうに(表情はあまり変わらないが)ミサキが答える。
しかしゴブリンとはこんなに集団発生するものなのか。
ミサキに聞いてみると、やはり特殊なケースらしい。
何か原因はあるのだろうか。
体力もある程度回復したようなので、広間を探索することにした。
俺は寝ているミウをそっと頭の上に乗せ、辺りを見て回る。
どうもこの広間がの巣窟の終着点らしい。
俺たちはさらに周りを探索する。
すると、入口から見て一番奥に何やら禍々しい感じがする水たまりを発見。
丁度その時、その水たまりの中から1体のゴブリンが現れた。
反射的に剣を振るい、ゴブリンを倒す。
「……どうやらこれが原因。早急につぶす必要がある」
ミサキは続ける。
「……あなたとミウは聖属性を持っている、浄化が出来るはず。大丈夫、何事もイメージ」
なるほど、魔力もだいぶ回復してきた、やってみるか。
「ホーリーフィールド!」
眩いばかりの光が、禍々しい水たまり全体を包み込む。
一瞬、目が眩むような光を発した後、徐々にその光は薄れていく。
光が完全に消えた頃には、もう水たまりは存在していなかった。
どうやら成功したらしい。
「ふぅ…」
やはり魔力が完全に回復していなかったせいか、少し疲れを感じる。浄化には、かなりのMPが使用されたようだ。
ふと見ると、その水たまりのあった場所に1つの腕輪が落ちていた。
ミサキがそれに近づき、何やら呪文を唱える。
「……大丈夫、呪われていない」
鑑定してくれたようだ。
無属性魔法だそうなので、俺も試してみることにした。
魔力の腕輪
対象者の魔力を10%UP
なるほど、わかりやすい。
腕輪を小袋にしまい、この場を後にすることにする。
「よし、帰るか」
「……了解、帰還します」
「くぅ〜」
俺たちはミウを起こさないようにしながら帰途についた。
後半部分を修正しました。
修正内容
クリーン→ホーリーフィールド
変更に伴う話のつながりを修正




