第11話 馬車とおまけ
「これが今回の報酬、銀貨6枚になります。それと今回の成功により、ランクがGランクになりました。おめでとうございます」
あれから半月、ようやくギルドのランクが上がった。
これでFランクの依頼まで受けられることになる。
ドルムさんへの借金も返し終わり、現在持ち金は銀貨80枚ほどだ。
別荘の利用により、遠出の採取がかなりうまくいったのが良かったのだろう。
現在の武器はロングソード改、防具はバレン村でもらった革の鎧、ほとんど傷ついていないので新調の必要はなさそうだ。
よし、当初の予定通り馬車を買おう!
俺は馬車売り場まで再度足を運んだ。
「ミウ、どれがいい?」
「ゆっくりお昼寝できるようなのがいいな♪」
俺たちはいろいろな馬車を、ウィンドウショッピングさながら見て回っている。
ただ、大きさ以外に俺には違いが分からない。
店員に聞いてみたところ、やはり大きさ以外はそれほど違いがないとのこと。
それなら6人乗りくらいで良いかな。
何となく当たりをつけたところで、今度は馬選びである。
残り銀貨の30枚ほどで買える馬は…。
「お客様、馬をお探しですか」
店員が声をかけてくる。
「それならばこの馬はどうでしょう。元気いっぱいの4歳馬、お役に立ちますよ。銀貨25枚ほどで如何でしょう」
「6人乗りの馬車を引かせたいのですが、この馬で大丈夫ですか」
「でしたら馬は2頭必要ですね。こちらの毛並みの良い馬もつけて銀貨40枚にまけておきますよ。如何でしょう」
う〜ん。微妙にお金が足りない。
どうしようか思案していたところ、奥の方にいる白い馬と目が合った。
よく見ると他の馬より2回りは大きい。あれならば1頭で十分だろう。
「あの馬はいくらですか?」
すると、店員さんは困った顔をして答えた。
「ああ、あの馬ですか。確かにあの馬ならば1頭でも十分馬車を引けるでしょう。ただ、あの馬は気性が荒くてね。正直に言うと、何度も返品されているんですよ。売り先で暴れて何人も怪我させたりで、逆にお金がかかってしまってね。そろそろ殺処分にでもしようと思っているんですよ。選んでくれるのは有り難いんですが、また賠償騒ぎになるとちょっと……」
その時、なんとなく馬の目の色が変わった気がした。
「ちなみにいくらなんですか」
「買ってくれるのなら銀貨5枚、……いや、タダで持っていっていいですよ。ただし返品不可、暴れても責任は負わないという条件になりますが……。こちらとしては置いておくだけでも出費でね。貰ってくれるだけでも有難いです」
俺は近くで見てみることにした。
「カナタ、普通の馬のほうがいいよ! 何か感じ悪いよ」
ミウにしては珍しく主張してきた。
「何だと! このチビ!! この高貴なる我に向かって感じ悪いとはどういうことだ!!」
馬が一鳴きしたが、俺には言葉として聞こえてきた。
「えっ!? 喋った! こいつもしかして魔獣か?」
「おおっ! 我の言葉がわかるのか。今までの人間は、我の言葉が通じなくてな。お主、よほど高貴な出の人間なのであろう。そんなお主に朗報がある。我の従者に任命してやろう。さあ、我をこの鎖から解き放ち、我に仕えるのだ!」
ミウの予感は正しかったようだ。
「……行こうか、ミウ。馬車はもう少しお金が貯まってから考えよう」
「……うん、カナタ。それがいいよ」
俺たちはとっととその場から離れようと踵を返す。
「待つのだ! ……いや、待ってくれ! 我はこう見えてもユニコーンの末裔、役に立つぞ! 何なら従者ではなくパートナーということでも良いぞ!」
「カナタのパートナーなら、ミウがいるからいらないよ〜」
ミウが即座に却下する。
しかし、馬?は、なお食い下がる。
「そうだ! 馬車を引くのに馬が必要だと言っていたな。我が引いてやろう。……いや、引かせてください」
だんだん馬?が弱気になってくる。少し可哀想になってきた。
「う~ん。まあ、それなら連れて行くか」
「え〜っ!?」
ミウは不満そうだ。
俺は店員に馬?を引き取る旨を伝えた。
かなり感謝された。
よほど始末に困っていたのだろう。
「よろしくな。大人しくしているんだぞ! ちなみに俺の名はカナタだ」
「……ミウだよ」
「我の名は、ボンジョピエール・スペルノビッチ・フラン………」
「長いからユニ助な」
「なっ!?」
馬(ユニ助)は絶句している。
「ユニ助、ユニ助〜♪」
ミウがからかう。
「何だ、このドチビ! やんのかコラ!」
高貴な出の割にはガラが悪いな、こいつ……。
「おとなしくしろと言ったろ。これから一緒に過ごすんだ、喧嘩すんなよ!」
「……うむ、わかった」
「……は〜い」
ユニ助とミウは不満そうに頷いた。
こうして俺たちは馬車(+おまけ)を手に入れた。
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