第10話 これからの方針
「はい、確認させていただきました。ヒナタ草は全部で60束ですので銀貨3枚になります」
俺はサトミさんから報酬を受け取った。
「カナタさん、すごいですね! お持ちになったすべてがヒナタ草でした。慣れた冒険者でもこうはいかないのに…」
サトミさんが理由を聞きたそうな眼差しを送ってくるが、俺はそれをスルーして別の話題を振ることにした。
「サトミさん、この街で馬車を売っている場所を知りませんか?」
実はあの後、ゲートの魔法についていろいろ試してみた。
ゲートはどの場所でも展開出来るが、戻る場所については、登録した5箇所の場所から選択して戻る仕様になっていた。頭の中にウィンドウが展開され、その中からの選択となる。6箇所目の登録に関しては、先の登録の中から1箇所を選んで消しておく必要があった。また、登録がなければ、元いた位置に戻るらしい。
俺が思いついたのは、「長旅にて、休む段階でゲートを展開、別荘で休息を取り、その後元の位置に戻り冒険を続ける」といった反則技が出来るのではないかという事だ。
そこで、欲しいと思ったのが馬車である。
移動が楽になり、普段は別荘に置いておけば良いから場所は取らない。
しかも馬の餌は家庭菜園でまかなえる。
良いことづくしである。
強いて問題があるとすれば、それは現在の資金。
おそらく手持ちの金額では足らないだろう。
だからこそどれだけ貯めれば良いのか、相場を見ておきたかった。
「馬車ですか。それなら街の東の入り口のところにありますよ」
「ありがとうございます。早速行ってみます」
頭の上で寝ているミウを起こさないように注意しながら、俺は目的地へ向かった。
「いらっしゃい! 性能の良い馬車ばかりだよ! 遠慮せず見て行ってくれ!」
売り子さんに促され、馬車の売り場に案内される。
売り場にはいろいろな大きさの馬車が展示されていた。
相場は……、6人乗りで銀貨50枚か。
これに馬も含めていろいろ揃えると金貨1枚(銀貨100枚)は必要になるな。
貸馬車は、1日銀貨1枚か。頻繁に使うようなら、買ったほうがいいかもな。
「馬車かうの?」
いつの間にか起きていたミウが質問してくる。
「いや、もう少し資金を貯めないとね」
「うん。ミウも頑張るよ!」
俺たちは売り場を後にした。
現在、俺たちは別荘で休憩中だ。
宿屋でゲートを広げて別荘に移動してきた。
宿屋に泊まらなくても良いんじゃあないかとも思うが、そこはカモフラージュだ。
他人にバレないようにしなくてはならない。
ミウはふかふかのベットがお気に召したようで、ぴょんぴょんと飽きずに飛び跳ねている。
この別荘、見れば見るほど良くできていて、冷蔵庫やシステムキッチン、洗濯機など完全に現代仕様となっていた。
しかも冷蔵庫やキッチンには米と各種調味料が完備、無くなった分は次の日に補充されているという不思議仕様だ。
どういう仕組みなのかは、考えても無駄なので考えないことにした。
女神様、ありがとう!
特に米に関しては、日本人としてはかなり嬉しかった。
宿屋の食事も美味かったが、やはり米が恋しかったのは日本人として仕方のないことだろう。
スラ坊も今ではいろいろ使い方を覚え、管理人としてしっかり仕事をしてくれている。
なかなか優秀である。
さて、当初の目的である冒険者登録は無事に出来た。
これからの方針だが、どうすれば良いだろうか。
ミウ、スラ坊にも聞いてみることにした。
「カナタと一緒なら何でもいいよ〜♪」
「助けてもらった身ですから、カナタさんについていきますよ」
俺が決めるしかないらしい。
このまま別荘で暮らしていても良いかとも思ったが、それではただの引きこもりである。
せっかく異世界に来たからには、いろいろな場所へと冒険に出て、見聞を広めたいものである。もちろん死なない程度にではあるが…。
まだ見ぬ土地には、スラ坊のような魔物?もいるかもしれない。
偽善かもしれないが、やはり1人(匹)でも助けたいものである。
それには……。
先ずは馬車を手に入れることを目標にするか。
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