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63.地球のアルケーナ受け入れ準備

読んで頂いてありがとうございます。

間違えて機械知性体の本拠をアンドロメダ星雲と書きましたが、マゼラン星雲の間違いでした。

マゼラン星雲は銀河系の1/10程度の質量で、16万光年距離です。

前の投稿に遡って訂正します。


 アクラの呼びかけの日本における予行演習は、成功したといって良いだろう。アクラによる国会議事堂周辺に限定して念話の呼びかけは、その後の調査で結局2万8千人ほどが受け取ったことが判った。


 元々は国会議員を始めとする国の指導者とその係累に対象者を絞る予定であった。それが、野党議員の一部が「秘密にすべきでない」と自分なりの正義感に駆られて拡散したために、SNSなどで広まって対象が5倍ほどに広がったのだ。


 とは言え、結果から言えば失敗ではなく、皆が深くそのアクラとの接触と彼の言い分を心に刻み、行動を起こす必要を認識したのだ。30分ほどの念話の後、いつもは政府のやることに反対しがちな野党議員もその印象深い時間の後に、同僚議員とこのように語りあった。


「矢島先生、これは大変なことになりましたね。政局には色んな事がありますが、当分棚上げですね……、というよりそういう政局は吹っ飛びます。1週間後には今回のあの『アクラの時局説明念話』ですかな、あれの全世界版をやるそうですので、全世界の人が我々と同じことを知ることになります」


「うん、佐治先生。明日の国会には、永井大臣の献金問題を追及することになっていました。ですが、そんなことをしていたら、今日一緒に『念話』を受けた皆から馬鹿にされます。ですから、我が党としても政府にどうやって、アルケーナの地球援助隊を受け入れて、どう協力するかを質すしかないでしょう」


「でも、矢島・佐治両先生、そういうことを聞くということは、政府と協働しながら、正すべきは正し、同じ方向を向いていくということになりますが、それは良いのでしょうか?それでは野党といて役割を果たせないのではないか、私はそう思うのですが……」


 女声議員の佐伯涼子議員が口を挟む。彼女は、とりわけ与党の諸政策、議員の起こした問題にとりわけ鋭く追及してきた論客として知られている。


「うん、佐伯さん、今や全世界を含めて日本は非常時になったのだと思う。今までは、明日予定していたように、皆川大臣の献金問題を追及していても、別に日本全体としてはどうということはなかった。ついでに言えば、それをしなくても同様だ。

 公には『同様なことを繰り返さないようにする、正義のため』ということになるが、率直に言えば、それは自分達の存在をアピールしつつ、与党を叩いてその支持率を下げるためのものだ、それが……」

 そこで、佐伯が顔を赤くして話に割り込み、高い声で叫ぶ。


「何を言うのですか。矢島さんは、そんなことを思って議員をやっていたのですか?私たちはねえ……」

 しかし、矢島は手で佐伯を遮り、睨みつけながら鋭く言う。


「黙って聞きなさい!」

 普段は温厚な、長老議員の矢島の叱責に佐伯はひるみ黙る。


「我々、そして今日集まった日本の指導者達がアクラの念話を受けたことによって、事態は変わったのです!」

 矢島は強く言い切って、注目している周りの議員を強い目で見渡した。


「あの明瞭なアクラの意を受けて、その内容の真実を疑う者はいないと思う。どうですか皆さん?」

 矢島の視線に全員が深く頷く。


「さらに、アクラが代表する銀河中央の知的種族協議会の意思、それは地球をその末端ではあるが一員に加え、そのいわば通過儀礼のために進化が必要であること。そして、それをアルケーナという種族が大規模に支援をするということも確かに受けたが、皆は?」


 矢島の話に、大部分のものはすぐさま深く頷いたが、一部は首を傾げ、その一人一人がおずおずと手を挙げて言う。


「『念話』というもので、頭の中に直に内容を展開されて、それが真実であることは疑う余地はない。それは確かです。そして、我々が何らかの行動を起こさなくてはならないことは理解したし、今の状態では未熟すぎて手助けも出来ないことは解りました。

 しかし、その銀河の先進種族のアルケーナが我々を導くというのは話が旨すぎるだろう。それに伴う条件というのが、共に防衛戦を戦うことはともかく、地球がアルケーナの立場になった時に、同様に他に手助けするというのは、如何にも嘘くさい。とは言え、アクラの真実性は疑えないし……」


 それに対して矢島が応じる。

「木村さん、君のような人は一定数出るだろうことは解っていた。しかし、君は念話の中でその知性の核に触れたアクラのことは信じられるだろう?」


「ええ、アクラは信じられる、信じて良いと確信しています」

 若い木村議員は悩みながらも深く頷く。


「そうであれば、素直にアルケーナの話を信じなさい。君がどう思うおうと、今後わが国の政府が今日のアクラの話の線で動いて行かざるを得ないのは間違いありません。これは世界も同様です。これに対して、野党の一員である我々が非協力に動くことはできません。

 なにしろ、国民全員が魂に刻まれた同じメッセージを共有するのです。そこに、全体が向くべき方向に逆らうなら、それこそ国民から見放されるでしょうね。ただ、より良い方法があるという提示は必要ですし、それが我々の役割であろうと思います。


 また、君と同じように『話がうま過ぎる』と考える人は、少なからずいると思います。でも、そう思うこと自体は同調圧力に負けていないという意味でいいでしょうしかし、それは周りと同調してやっていく中で疑問を持ち、その疑問を提議して改善するという形で生かすといいでしょう」


 矢島議員の話に頷きながら聞いていた佐治が話を引き継いだ。

「矢島先生の云う通りだと思いますよ。まさに世界は変わったのです。5年と言っていましたね。5年で我々がより進んだ社会を作りより優れた地球人になって、銀河宇宙の知的生物に伍していく。……生易しい期間ではないと思いますね。

 そして、その5年間において地球側のリーダーはあの翔君です。彼は先ず数々の画期的なその発明でまず日本を変え、世界を変えていきました。その中で国として最も彼の発明や開発の恩恵を受けたのは我が日本です。


 そして、そして我が日本はその中で形を変えていき、様々な事態、まさに今回のような事態に最も対応しやすい国になっていると思っています。政府に対して最も対立している野党の我々が言うのも何ですが、現時点での与党率いる政府は、的確な対応策を立てると期待しています。そして、それがある程度納得のいくものなら私は全面的に協力するつもりです」


 この野党重鎮の言葉には眉を顰める者もいたが、多くは賛同している。

 そこに、各議員が持っているスマホに緊急連絡が入るという合図の音が鳴り、各員に政府が緊急連絡手段としているテキストメールが入った。


「衆参両院の各議員は本日16時に本会議場に集合してもらいたい。本日のアクラ氏の念話についての通達を行いたい」

 という連絡であり、各議員の名指しになっている。


「何を失礼な。このような急な連絡で私達を拘束するなんて!」

 佐伯議員などは早くも怒っているが、相手にせずに矢島が周りに向かっていう。


「今日は殆ど前議員が来ているだろう。まあ、何か言い渡すには絶好の機会だな。政府とはしてはある程度の緊急的な行動方針は固めているのだろうな。翔君についてなにか発表があるのかな。まあ、党の控室に行って待っていようよ」


 彼の云う通り、その日は病床にあった2名の他は、全議員が集まっていた。その時点で午後3時であったからさほど議員を待たせることはない。ちなみにこの日は早耳であるマスコミも当然大勢集まっており、念話を受けた人数の1割程はマスコミ関係者であった。


 彼らは、自分の受けた念話の内容を様々な媒体で発表したが、自分の思念にはアクラの伝えてきた様々な画像がクリヤーに浮かんでいる。だが、それを映像が無い状態で文章又は言葉で伝えるのは非常に難しいことが判って頭を掻きむしった者が多い。


 なお、政府はマスコミの傍聴を認めて記者席、傍聴席に議員数より多い空いた席まで解放して記者を入れている。やがて、時間がきて議員がぞろぞろと議場に入ってくる。

 基本的に説明者は衆議院で説明し、参議院では正面の大スクリーンの映像を見ることが出来、音声は各議席のマイクで拾うことになる。当然その情景は、ライブでのテレビ・ラジオの放送がされている。


 やがて時間が来て、衆議院の正面の段に閣僚が並び、なかに圧倒的な若い翔が混じっていて首相と官房大臣の間に座る。それを見て、翔を指さしてひと際私語が増えるが、最初に官房長官が立ち上がって話し始める。


「衆参両院の同僚議員の皆さん。皆さんは先ほど、銀河宇宙から来た高次知性体アクラ氏の『念話』による接触を受けて彼が地球に来た理由と、我々の今後について説明されて得心がいったことと思います。

 念話による接触というものは、今私が言葉で喋っているのに比べて、自在に映像も受けられて早く・深く必要なことを理解できるということを感じましたが、皆さんも同様だと思います。

 さて、今回のアクラ氏の我が国の国会における登場は、全世界の人々に対して同様な念話による語りかけの予行演習的なものでありました。


 今回については、今解っている限りではその念話により体の不調等を訴えた人はいないようですし、それによる事故も報告がありません。ですから、現在世界の国々に働きかけて、1週間後に世界に向けての念話のいわば放送を行う予定にしています。

 ですから、日本の方々で今日念話を受けていない方も、1週間後には我々と同じ体験ができることになります。内容についてはすでにマスコミ等で報じられてつつありますが、政府として明朝別途文章で説明させて頂きます。


 そして、アクラ氏の要請は、銀河中央の高度な知性体の集まりである評議会に加わらないかということです。この理由は、機械生命体が我々の銀河宇宙を犯そうという試みを防ぐためです。この生命体は、我々がマゼラン星雲と呼んでいる銀河の知的生物を滅ぼして、すでにすべて征服していると見られています。

 しかし、残念ながら地球はまだ、その一員たる資格を満たしていない。このため、評議会はその一員であるアルケーナという先進種族を送ってきて、地球の社会と人を『進化』させるということです。


 我々政府は、先ほどの閣議で受け入れるという仮の決定をしましたが、これには国民の皆さんの合意が必要です。従って、政府は、今から一月後にインターネットによる受け入れの可否を問う国民投票を行います」

 そこで、議場及び傍聴席・記者席から「「「「うおー」」」」というような声が沸いた。


「では、後は川村首相に本件についてお話をお願いします」棟

 田は首相にマイクを譲る。


「川村です。今回は誠に常識では考えられない事態になりました。今や我が国が新ヤマトを開発しているという状態にあっても、正直に言って銀河宇宙などと言う言葉は自分から縁遠いものと思っていました。

 しかし、アクラ氏という我々には想像もできないほどの知性と能力を持った存在が、翔君と出会ったことから、地球を訪れ我々人類に彼らの共同体に加わること促しているのです。

 しかもその中で、未だ発達が充分でない我々に対して、先生役かつ必要な援助を与えてくれる種族、アルケーナを選んで我々が選択するなら実際に手助けをしようということです。


 無論、これは侵略して来ることがはっきりしている強力な機械知性種族に対抗するためであり、我々もこの誘いを受ければ、銀河と自分を守るために戦わなくてならないでしょう。

 実際のところ、我々が今まで進めてきた宇宙開発も、そのような敵対種族の出現を恐れて慎重に行ってきました。

 しかし、今回の敵である機械知性種族は、太陽系が百億個あるというマゼラン星雲をほぼ征服しているという、途方もなく強力な敵です。そして、すでに1回はその侵略は退けられたのですが、再度の侵略は必ずあると見られています。


 そして、その侵略は、多方面から一斉に攻めかかられる可能性も十分あり、それが地球のある太陽系の方面である可能性も十分あります。従って、私は日本国の指導者として、それに対抗することを選ぶべきだと思っています。

 また防衛戦というものは、やむを得ない反面で、持ち出しのみでメリットは少ないものです。ですが、この場合には、進化の階段を登るためには指導種族を付けてくれて物的援助も得られるというのです。私は是非このアクラ氏の申し入れを受けるべきであると思っています。


 そして、アルケーナの皆さんが、我々の進化を手助けする期間は5年と言われております。これは、機械知性体の侵略の再開が5年後に行われるという予測によるものです。この期間は誠に短く一瞬でも無駄にする時間はありません。従って、1ヶ月後の国民投票の前であっても、アクラ氏の申し入れを受け入れることを前提に準備を進めさせて頂きます。


 さらに、アクラ氏の話では、現時点で我が地球には高度知性体の協議会に伍していける知性の持ち主は、この翔氏しかいないそうです。従いまして、地球としてのアルケーナ始め、協議会への交渉に係わる代表者は翔氏になります。翔君、では後はお願いします」


 翔は、譲られたマイクの前に立ち話し始める。

「皆さんはすでに私をご存じだと思いますが、翔です。水谷という姓はあるのですが、名のったことは殆どないですね。それに、名刺は持ったことはないです。昔の野球選手に名刺を持ったことが無い人がいたようですが、僕もそれに近いのかな?」

 そこで控えめな笑いが沸くが、翔は笑っていた顔を引き締めて、話を続ける。


「今回の話は、ホウライにいた僕をアクラが探し当てて始まったものです。先ほど話に出た機械生命体は、本当に途方もない存在です。

 どうも、彼らは高度な知性を司る機体と単純作業を行う機体に別れているようですが、その高度な知性を持った機体が十兆位存在すると推定されています。

 かれらの本拠は16万光年離れたマゼラン星雲ですが、そこには銀河系の1割の百億の太陽系があります。そこにも我々のような知性体がいたはずですが、どうもすべて滅ぼしたようです。さらに、元々彼らも我々のような知性体に生みだされた存在ですが、最初に産みの親のその種族を滅ぼしたのでしょう。


 だから、彼らに備えるということは避けては通れないと思います。それに、アルケーナの指導を受け、彼らの進んだ機器、テクノロジーを受けることで地球はその住む人々はもっと豊かに、かつ楽しく暮らせるようになると思っています。

 その指導を受ける5年間は、皆さんそして世界の人々が賛成するなら、私が地球人の代表という形になると思います。この5年間は、皆さんが出来ないことは、交渉してやらなくていいようにしますが、楽なものではないということは申し上げておきます。


 私は、アルケーナとの間に入って、やむを得ず皆さんに厳しい要求をせざるを得ないことから、皆さんからの不満の対象になると思っています。正直に言えばそんなことはやりたくはありませんが、これは必要なことです。

 そのために一つの組織を作ります。それは『地球進化プロジェクト推進機構』とでも呼びようになるでしょうか。国民投票では皆さんの同意は得られるとは思っていますが、その節はどうか協力をお願いします」


誤字の訂正ありがとうございます。

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