第89話 俺、異世界でデュラハンを再認識する
俺とシスティの会話を聞いていた3人は慌てふためいていた。まぁそれはそうだろう、あの頭部のない黒騎士が本当はシスティでしたと言われても信じないだろうし、俺もステータスを見てやっと分かったぐらいだしな。
それにしても黒騎士の時・・・頭無かったよな・・・だけどシスティとして召喚すると普通に頭がついている、これはどういうことなんだろうか。
どうしてもその事が気になった俺は頭部について彼女に質問した。
「あのさ・・・システィ、言いにくかった言わなくてもいいんだけど、黒騎士の時、頭無かったけど、あれは・・・?」
「お嬢様・・・それはですね、私めがデュラハンという種族なのが起因しているかもしれません」
「えっと、それはつまり・・・・・・あっ、そういうことか!?」
「言葉で説明をするよりも実際にお見せした方がよろしいかと・・・」
システィはそう言うと、両手で自分の頭を掴むとそのまま勢い良く上へ引っ張った・・・するとスポンッ!と見事に頭部が首から引っこ抜かれたのだった。
その瞬間、俺を含めた4人はその光景を受け止めきれず、まさに阿鼻叫喚と呼ぶに相応しいほど・・・パニックに陥った。
姉のセルーンは震えながら手を合わせると片膝をつき、ひたすら何かに祈りを捧げている。
妹のセレーンはその姉の耳元でさらに恐怖を与えるためか、こそこそと何か語りかけている。
そして俺らが冒険者ギルドのギルドマスターことセンチネルはというと・・・目を開けたまま動かなくなっている、彼の目の前で手を振っても眼球が動く気配が一切ない・・・器用なことに立ったまま気絶しているようだ。
最後に俺はどうかというと・・・システィが自分の頭部を掴んだ時点で嫌な予感はしていたこと、それにデュラハンという言葉が何を意味するのかアニメやゲームの知識で知っていたこともあって・・・何とか耐えることが出来た、それでも実物はなかなかくるものがあった。
大体・・・アニメとかだと首の切れ目というか断面図ってのは黒く塗りつぶしてあると思うんだ・・・でもこのシスティのはそこもちゃんとリアルのままだから、色々と全部見えるんだよ・・・マジで。
俺はシスティにデュラハンのことは理解できたから、頭部を首に戻していいと許可を出した。
「システィ、もう分かったから頭を戻してくれないか。みんな困惑しているようだし・・・」
「はい、分かりました・・・お嬢様」
すると彼女は慣れた手つきで頭部を元あった位置に戻した、この時血管とかがずれてても問題ないのだろうかと思ったが、よくよく考えたらそもそも頭取れてて普通に会話したり、呼吸をしている時点でそんなこと些細な問題だと思った。
少し位置が合っていないのか、彼女は首を左右に動かして馴染ませているようだ
「これでデュラハンについてご理解いただけましたでしょうか?」
「あー、分かったけど、次からはいきなり頭取るの禁止な・・・・・・普通の人は頭取れないから、驚いちゃうだろ?」
システィは少し残念そうに「はい・・・お嬢様」と返事をした。
まだ信仰深く目を閉じ、祈りを続けているセルーンに俺は「もう終わったから、目を開けても大丈夫だ」と声をかけた。
セレーンさんはまだ姉で遊び足らない様子ではあったが、渋々姉から離れると新しい玩具を見つけたのか今度はセンチネルの様子をジーと見始めている。
どうやら俺の声が届いていないらしく、まだ祈りを継続している彼女の肩を軽くトントンと叩きながらもう一度、終わったことを伝えた。
彼女は目を開くと同時に周囲を確認し始め、そして最後にシスティを胸から頭までじっくりと観察するように見ている。
「はぁ~、怖かった、本当に怖かったわ・・・。わたし頭が取れる人なんて初めて見たから・・・」
「そら、そうだろ、普通の人は頭取れないからな・・・。システィにはすぐに頭を取らないように言ったから、今後は大丈夫だとは思う・・・たぶん」
「それと、ごめんなさい・・・システィさん」
システィはセルーンから何に対して謝られているのか、いまいち分かっていないらしく完全に???状態になっていた。
そんな彼女に俺はデュラハンという種族のことをせっかく分かりやすいように教えようとしてくれたのに怯え、恐怖して見ていなかったことを謝っている事を伝えた。
システィは俺の解説でやっとその事を理解したようで、すぐにセルーンに深々と頭を下げ、感謝の言葉を述べた。
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