第88話 俺、異世界でシスティのすごさを知る
俺はみんなにシスティについて説明をした、俺自身もまだハッキリとこうだと言う事が言えないこともあり、かなり情報量の少ない説明になった。
俺の説明を聞いていたセンチネルから能力が増えていないか確認してみてはどうかと提案された。確かにここ最近忙しかったこともあり、自分のステータスを確認していなかった。
早速ステータスを確認しようとステータス画面を表示した瞬間、テーブルに「お嬢様、お待たせいたしました」の声とともにスッと静かに人数分のカップが置かれた。
俺はステータス画面に気を取られていたこともあり、ビクッ!?っと全身が震え驚いたが何も無かったかのように「おかえり、システィ。紅茶ありがとう」と紅茶を淹れなおしてくれた彼女に礼を言った。
ただ・・・正面にいたセレーンさんにだけはその姿を見られていたらしく、セルーンにスキンシップをしている時のような、すごくツヤツヤした笑顔の彼女と目が合った。
システィは今日何度も見た、いつもの会釈をするとこの部屋に入ってきた時と同じように俺の後ろに移動するとまた動かなくなった。
ステータス画面が正面に出ていて、ちょっと邪魔ではあるがせっかく彼女が淹れなおしてくれたことだし、まずは紅茶を頂くことにした。
カップを手に取り、口元まで運ぶとフワッとアールグレイのような柑橘系茶葉の香りがした。その香りに誘われるかのようにカップに口をつけ、湯気が立って熱々な紅茶をゆっくりと一口飲んだ。
俺は顔を上げ天井を見上げるながら「あー、うまい」と独り言のように感想を述べた。
あとで水筒用にまた紅茶を淹れてもらおうと思いながら、ふとカップに目をやるとなぜかそのカップに見覚えがある気がした。
この親しみのあるカップというか・・・毎日のように使っているというか・・・あー、これあれだ、リリアーヌのとこにあるカップだ。
うちのメイドさんはまさかあの宿屋に紅茶を淹れるためだけにわざわざ帰ったのか・・・しかもカップに注いだあと一滴もこぼさないどころか、紅茶の温度も下がっていない・・・これは今そこで淹れましたって言われてもすぐ信じてしまう。
カップ以外にも彼女が載せていたお盆もリリアーヌがよく使っているやつにそっくりだ・・・というかこれも持ってきただろ。
センチネルやセルーン姉妹も美味しそうに飲んでいる、姉妹でもセルーンは熱いものが得意なようでアイスティーを淹れましたかという速度で飲んでいる。
それに対してセレーンさんは熱いものが苦手なようで必死にフゥフゥしては紅茶の温度を下げようとしている、そしてちょっと飲んではまた温度を下げるためにフゥフゥを繰り返している。
システィの紅茶とセルーン姉妹の行動のおかげでだいぶリラックス出来たようだ、さてそれじゃ次は紅茶を飲んでいる時にもずっと見えていたステータスを確認してみるか。
まずはランクからだな、ウソだろ・・・2週間色んな魔物を倒したし、今日はオークエンペラーも倒したはず・・・正確にはシスティが倒したけど、それでも最低でも1は上がっていると思っていたがまさかのランク50のままだと・・・。
ランク50からは必要な経験値が多くなるんだろうな、上がっていないものは仕方ない他の項目を見てみるか。
だが、特に目ぼしいものもなく残すは能力だけになった。
ここら辺も特には変わっていないだろうと思いながら、目を通してみると・・・能力の項目一番上にあったはずの【アスティナを守護する者】が無くなっていた・・・その代わりに【アスティナの従者~システィ~】という能力が増えていた。
アスティナの従者~システィ~の能力についてはこう書かれていた。アスティナの呼びかけによりいつでもどこでも召喚可能。リキャスト時間は無し、また召喚による時間制限もなく永続的に呼び出し可能。
簡単に効果をまとめると、リキャスト24時間が無くなった上に召喚制限も無し、つまりはずっと一緒にいられるということだ・・・。
オークエンペラーを一撃で倒せるメイドがずっとそばにいてくれるとか・・・しかも、家事も料理も完璧な上に絶世の美女ときたもんだ。
それにしてもアスティナを守護する者、あの黒騎士にもう会えないと思うと少し寂しい気持ちになった。
いや、待てよ・・・システィが使っていたあの大剣・・・色は違ってはいたが、見た目は同じだったような気がする。
俺は自分が感じた事が正しいのか答え合わせをするつもりで後ろにいるシスティに尋ねてみた。
「システィ、一つ聞いてもいいか・・・?」
「はい、お嬢様」
「えっとだな・・・その・・・あのな、システィ!君はアスティナを守護する者・・・あの黒騎士なのか?」
「・・・はい、そうみたいです。ただ私めとしても、その時の記憶が曖昧であまりハッキリとは断言は出来ませんが・・・」
「はは・・・ははは、やっぱそうか。そんな前から俺の事を守ってくれていたんだな・・・システィ・・・本当にありがとう、これからもよろしくな!」
いつもの彼女なら軽く会釈して終わるはずなのに、この時だけは夢で呼んでいた時のように微笑みながら「はい、アスティ」と言ってくれた。
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