第71話 俺、異世界でオークキング討伐前夜で寝付けない
あれから・・・朝起きては魔物討伐をし、夜になればセルーンとの特訓という生活を続けること2週間、オークキング討伐前夜の今日までやり続けた。
明日に備えていますぐにでも目を閉じて眠りに就くべきなのかもしれないがいよいよ明日に迫ったオークキング討伐という特大イベントとこの2週間の出来事を思い出してしまいなかなか寝付けずにいた。
なんだかんだ最後まで付き合ってくれたエリン、セルーンとセレーンさんのおかげ・・・センチネルは最初の1日目しかいなかったが彼の根回しとアッシュ、職人たちの試行錯誤によって完成したアスティナ専用デッキケースは涙なしでは語れないほどだ。
デコピンでぶっ飛ばされた日から2日後だったか・・・いつものように冒険者ギルドに行くと2階から覗くように手すりにもたれているセンチネルが見えた、彼は声を出すこともなくただジェスチャーで「こっちにおいで」と言わんばかりに手招きをしている。
その様子に俺は首を傾げつつも、誘われるように階段を上って行くとそのままギルドマスターの部屋に俺たちを招き入れた。部屋に入るとアッシュがソファーに座ってコーヒーを飲んでいる姿が見えた。そしてテーブルには白を基調としたデッキケースとそれを太ももに固定するためのベルトが置かれていた。
俺は興奮のあまり、いつもよりもワントーン高い声でアッシュに質問をした。
「ア、アア、アッシュ!これ、デッキケース出来たのか?」
「えぇ、とりあえず・・・形はね、ってとこかしら・・・まだ試作も試作ってぐらいの段階だから、本当に形だけよ」
「それでも俺の雑な説明でここまで形にしてくれるなんて・・・さすがはアッシュだな!」
それから俺は手に取って色んな角度から見てみたり、実際に太ももに装着してみたり、ケースにカードを入れたりだとか・・・色々と試してみた。
デッキケースは俺の注文通りの50枚がちょうど入るぐらいの厚さになっていた、これ以上厚くすると邪魔になりそうだし、これよりも薄ければカード枚数に不安が残る。それ以上に50枚にした理由は『クインテット・ワールド』がデッキ50枚だからという実にシンプルなものだったりする。
いや・・・やっぱ自分が慣れ親しんだデッキの厚さってあるよね・・・まぁ本当はスリーブとかに入れたりするからもっと分厚くはなるんだが。
それがデッキケースとの最初の出会いであった。
その日からどこに行くのにも身に着け続けた、それは魔物討伐のときも特訓のときもご飯のときも寝るときも・・・さすがに風呂のときはストレージに収容した。そして俺が使って感じたことをその都度、アッシュに会うたびに伝えること2週間、やっと俺専用デッキケースが完成した。
完成したデッキケースを受け取ったのもいまから2時間前ぐらいだしな・・・アッシュ、それと職人さん本当にありがとう・・・。
デッキケースの鑑定内容としては、アスティナの魔力に反応して起動するデッキケースです。全ての素材が最上級品であり、これを売却すればメイド付き豪邸を一括で購入できるほどです。あと値段は???と表記されていた、これについては完全オーダーメイドの品物なことと3つのギルドが総力を挙げて制作したことによって非売品として扱われているからだろう。
能力は3つあり、まずはドローという能力だ。これについてはカードゲームする人ならば、全員知っているのでないだろうか・・・デッキの1番上のカードを引くことをドローというのだが、こっちの場合はそれとは少し違いデッキケースに入っているカードをイメージして「ドロー」と唱えながら、何もない空間で引き抜く動作をするとそのカードが手元に出現する。
このことにより、戦況にあったカードを即座に使用することが可能になった。カード補充は毎回デッキケースのフタを開けて入れないといけないんだけど。
次はリターンという能力、これはリターンと唱えるとデッキケースを自分の手元にワープさせることが出来る。これにより盗難防止にもなるし、置き忘れたとしても取りに行く手間が省けるので今後この能力は色々と重宝しそうだ。
そして最後がチェックという能力で、これも同じようにチェックと唱えると俺の目の前にサーチのようなナビが出現し、そこに残りのデッキ枚数とカードの種類が表示されるというものだ。これにより、いまどの魔法がどれぐらい残っているのかなどがすぐに確認出来たり、カードの補充タイミングを知るのにとても参考になる能力だといえる。
俺の魔力をデッキケースに通さないとフタすら開かないのも実に良い・・・本当にアッシュたちはいい仕事をしてくれた。
今度は俺がこのデッキケースを使って、オークキングを倒してみせる番だな・・・と思いながら、ゆっくりと目を閉じると眠気が来るのを待つのであった。
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