第67話 俺、異世界でセルーンをサーチしてみる
食事を終えた俺たちは宿屋を出て、いまセルーンの靴屋に向かって歩いている。セレーンさんからは晩御飯には帰って来るということしか教えられていない上にその情報もあくまで予定。サーチを使えば帰って来たかどうか確認出来るのではないかとも思ったが・・・鑑定不可だった時点で無理だろうと試さずにいた。
だが・・・いや、待てよ、センチネルも色んな魔法を試して使えるようになっておけと言ってたことだし、とりあえず試すだけ試してみるべきか・・・。
ポシェットからサーチを取り出すと「対象・・・セルーン」と唱えてみた。結果としてはカードのみ消滅しただけでシャドーウルフのときのようにナビが出てくることは無かった・・・やはり鑑定不可だった場合は発動しないようだ。
魔物大全集でオークキングを調べたとしてもやつのランクが俺よりも上位なら、同じようにサーチ不可能だろう・・・。
気分転換も兼ねて次は横を歩いているエリンに対して発動できるか試してみることにした。彼女は問題なく鑑定が出来たのでサーチ対象になるはずだ。
さっきと同じようにカードを取り出すと「対象・・・エリン」と唱えた。すると今回はちゃんとナビが表示され、その画面には右に向いている矢印と距離20センチメートルというなかなか近い距離が映し出されていた。
やはり人物は鑑定可能じゃないとサーチ対象に出来ないことを再確認した俺は正面に表示されているナビが消えるよう念じた。そんなことをしながら歩いていると靴屋が見えてきた、ドアは開いてはいるが多少距離があるため店の中までは確認できない。
「セルーンお姉ちゃん、帰って来ているといいんだがなぁ」
「・・・ねぇ、アスティナずっと不思議に思っていたんだけど、どうしてセルーンにだけはお姉ちゃんをつけるの?」
「あぁ・・・セルーンにそう呼べって言われたからとりあえずそう呼んでるだけだが・・・」
俺の返答を聞いた彼女は手を顎に当てながら「ふ~ん、そうなのね・・・ふ~ん・・・」それは隣を歩いている俺がギリギリ聞こえるか程度の音量だった。彼女の言ったことを聞き返すのはなぜかとても嫌な予感がしたので・・・聞こえなかったことにした。
靴屋に着いた俺は早速中に入ってみた・・・するといきなり目の前が真っ暗になった、どうやら誰かに正面から抱き着かれたようだ・・・ただなかなかの力でハグされているため、呼吸が出来ない・・・。俺は「・・・・くるしぃ・・・くる・・・」と訴えるが・・・どうやら聞こえていないらしい。
こんなことをする犯人は俺の知る限りでは2人しかおらず、1人は俺の後ろにいるはず・・・そうなるともう犯人はあの人しかいないと誰でも推理できそうな難易度の問題を解いた俺は犯人の名前を言った。まぁ抱き着かれたときのクッションの感じで・・・あの人だろうとは分かっていた。
「セルーンお姉ちゃん、おつかれさん・・・あの呼吸ができないから・・・そろそろ離して・・・欲しい・・・・・・」
「あーーーー、ごめん、ごめんね、アスティナちゃん!」
セルーンはそう謝りながら、抱き着くのをやめてくれた・・・がその代わり新しい病気か発作かは分からないが今度は俺の身長に合わせるように屈むと・・・俺の顔を両手で挟み顔を固定し始めた。俺は彼女の行動の意味が全く分からずに停止していると徐々に彼女の顔がこっちに近づいて来ていることに気づいた。
このままでは唇が触れてしまうと思ったそのとき急に彼女の顔が苦痛で歪み始めた。ふと目線を上に向けると俺の頭上を通るように相棒の腕が見えた・・・そしてその腕がどこに向かっているのかを辿っていくとそれはセルーンの頭部まで続いていた。
「あいたたたたた・・・えっ、えっ、ごめんなさいセレーン・・・やめる!やめるから!!」
セルーンはどうやらセレーンにやられていると錯覚しているらしい。ということは・・・エリンも妹様と同程度の能力はあるってことか・・・えっ、こっわ・・・。謝ってもなかなかやめないことにいつもと違うと感じたのかセルーンは目を開けて、状況を確認し始めた。
「あれ・・・エリンじゃない・・・あいたたた・・・でも・・・この痛みは・・・セレーンだわ・・・痛い、痛い、アスティナちゃんから離れる、離れるから!!」
「そぉ?良かったわ・・・セレーンに教えてもらったかいがあったわ」
相棒はセルーンの頭から手を離すと先ほどまで頭部を掴んでいた指をグー、パーと動かしてはポキポキと良い音色を奏でていた・・・。さすがにセルーンに対してみんな厳しくないかと思った俺はセルーンに「セルーンお姉ちゃん、大丈夫か?」と声をかけようとしたときだった・・・俺の見間違いだとは思うのだが・・・彼女が少し嬉しそうな顔をしているように見えた。
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