第58話 俺、異世界で解体現場を見る
それから俺たちは冒険者ギルドを出ると魔物買取所に向かうことにした。討伐証明として牙など魔物の一部を提出するだけならば冒険者ギルドでそのまま手続きを済ませることができたようだが、今回はそのままのシャドーウルフということもあり買取所で手続きをしてもらうことになった。
買取所の場所は冒険者ギルドから出てすぐ見える距離にあったがエリンはあまり魔物買取所に行くことがないらしく師匠とパーティーを組んでいたときはたまに利用していた程度とのことだった。
理由はなんとなくわからないこともない・・・魔物自体をここまで持って帰ることがそもそも厳しそうだ。いまは俺という荷物持ちがいるから魔物を持って帰れるが前はそうもいかなかったんだろう。
ここを利用する冒険者は少数で組んでいるパーティーではなく、大人数で組まれているパーティーまたは魔物をいれることができるほどの大容量のストレージを持っているような冒険者らしい。
魔物買取所の前まで来た俺はドキドキを抑えるために一呼吸をいれた。この場所はただ魔物を買い取るだけではなくその後の処理もしていることは”ヒマリ”さんよりここを紹介されたときに教えてもらっていたからだ。
それはつまり解体をしている場面を見てしまう可能性があるということ・・・。元の世界でそんな光景を見たことがない俺にはなかなか厳しいこともあり、それを目の当たりしたときのために精神を落ち着かせる必要があった。
俺は覚悟を決めると買取所に足を踏み入れた。するとそこにはここの責任者であろう人が俺たちのことを待っていた様子でこちらに向かって歩きながら話しかけてきた。
「おぅ!エリンそれとお前さんがアスティナか?」
「久しぶりガラク!それでどうしてわたしたちが来ることを知ってたの?」
「さっきヒマリからお前さんたちが来るっていう連絡があったからな!」
「どうもアスティナです。ガラクさんよろしくな!」
「おぅよ!それじゃ早速で悪いが奥の解体場に移動しようか。そこでシャドーウルフの状態を見るからよ!」
「わかったわ。行くわよアスティナ」
「・・・了解・・・・・・解体場か・・・」
俺はガラクさんとエリンのあとを追いながら解体場に向かった。解体場に着いた俺が目にしたのは複数の職人さんがひたすら魔物を素材ごとにバラしている光景であった・・・。解体場は自体は白基調のようだがいまは全体的に赤色・・・というかワインレッドのような濃い赤色に染められていた。
俺がこの状況に慣れていないだけのようでエリンはこの光景を気にする様子もなくガラクに査定してもらうためにシャドーウルフを取り出すようにいってきた・・・。
相棒は査定よりもシャドーウルフのにくを早く切り分けて欲しいだけなんだろうな・・・。そんなことを思いつつシャドーウルフを取り出す場所をガラクさんに聞いてみた。
「ガラクさんこの辺で出しても問題ないか?」
「おぅ!構わないぜ。それとさん付けやめてくれ!くすぐったくてたまらないからよ!」
「あぁ、わかったよガラク」
そして俺はストレージからシャドーウルフの亡骸を11枚取り出すとそれを唱えた。1枚1枚名称をいわないとダメなのかと思っていたがこれも対象枚数を指定すると一斉に実体化することができた。
このことにより魔法も枚数指定で一気に発動できるのかもしれないと思った。ただ・・・もしできたとしても金が持たないか。取り出したのを見るとすぐにエリンが数を数え始め・・・。
「1、2、3、4・・・・・・11匹ちゃんとあるわね」
「当たり前だろ・・・。ガラクこれで全部だ。それじゃ買い取りを頼むよ!」
「・・・おぅ!ヒマリから連絡を受けた時点である程度予想はしていたが・・・こうきやがったか!ちょっと待ってな。すぐに査定するからよ!」
そういうとガラクは俺が取り出した大量のシャドーウルフを査定し始めた。
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