第55話 俺、異世界でハイヒールを唱える
俺は門番の前で降りるとすぐに麻ローブをほどきエリンの方を振り向くと彼女のほほに手を当てながらハイヒールを唱えた。キュアにするか迷ったが壁が壊れるほど吹っ飛ばしたゲケレストのダメージを治すことができるほどの回復魔法は必要ないだろうと判断した結果、中級のハイヒールを選んだ。
ヒールでも良かったかもしれないが、どうも最初のイメージがあまり良くなかったのかそんなに回復するようには思えないんだよな・・・。
「・・・どうだエリン。傷は治ってそうか?」
「・・・・・・あっ、もう痛くないわ。こんなにすぐに治っちゃうのね。ありがとう”アスティナ”助かったわ!」
「飛行中にしゃべってもいいけど・・・次は回復しないからな・・・」
「ええぇぇぇぇ・・・わかったわ。しゃべるの我慢する・・・」
「まぁ・・・それは冗談だけどさ。ただ痛かっただろ?」
「そうね、回復してもらうまでずっとジンジンしてたわ・・・」
「回復はしてやれるけど毎回すぐに治してやれるわけでもないからな」
彼女は反省したのか少し低めのトーンで「わかりました」と返事をした。とりあえず重症はキュアで軽症はハイヒールにしておくか。そうなると今後ヒールを使うことはあるのだろうか・・・。
そんなことが起こっている最中、空から降りてきた俺たちに気づいたリスタが近づきながら話しかけてきた。
「おーい、エリン、アスティナちゃーーん!!飛んで帰ってくることにもビックリしたけど・・・その様子だとシャドーウルフは見つからなかったのか?」
「いや、討伐完了したぜ!」
「そうか、そうか。アスティナちゃんの初依頼だったからもう少し嬉しそうに帰ってくると思ってたから、てっきり失敗したのかと思ったよ」
「あー、そういうことか。俺なにもしてないからさ・・・達成感もなにもないんだよ・・・」
「なるほど・・・な。まぁ翠弓姫が横にいる時点でそんな感じはしてたよ。それでも依頼達成したことには変わりないよ、初依頼達成おめでとう!!」
「ありがとうなリスタ!!」
それからガーランにも挨拶をすると俺は町の門をくぐり抜け、そのまま冒険者ギルドに報告しに行こうと思ったがそれよりもまずお腹を満たすために一旦宿屋に寄ってから冒険者ギルドに向かうことにした。
「おかえり!エリンお姉ちゃん、アスティナちゃん!!」
「ただいま!リリアーヌこのあと用事があるんだがひとまず昼飯を食べてからにしようと思ってさ」
「そうなんだぁ。お昼は定番のランチセットと日替わりセットの2種類があるけどどっちにする?」
「リリアーヌちゃん今日の日替わりってなに?」
「今日はね。ウルフ肉のレモンステーキといつものパンとサラダだよ!」
「レモンステーキ・・・・・・絶対うまいやつじゃん・・・それ」
「アスティナもそっちが気になるみたいだから、日替わりセットをふたり分お願いね」
「はい、はーい!日替わりセット2人前だね。好きな席に座って待ってて、すぐに持って行くから」
俺はこの待っている間にセンチネルのとこでもらったお菓子がちゃんと元に戻るかを試してみることにした。間違いなく元に戻るであろうことは分かってはいるがこの目で確かめるまで多少なりとも不安が残っていた・・・。
ただこれで確実に問題がないことは分かれば今後もっと選択肢が増えることになり、どこでも好きなモノが食べられることになる。
カードとなった大福を取り出し、唱えると本当にあのまま粉が付いた状態でカードがあった位置から降ってきた・・・。そしてそのままテーブルに大福が着地したのであった。俺はちょっと悲しい気持ちになりつつも食べてみることにした・・・。
センチネルのとこで食べてから3時間ほど経っているが最初に食べた状態と同じで普通にただただうまかった。試すにはまだ全然時間としても短いが最初にいれた状態から変化は特に見受けられなかった。次回は日にちを空けて試してみるか・・・。
「あーーー、アスティナだけずるーい!わたしにもあとで出しなさいよね!!」
「あー、はいはい。ちゃんと取り出せるか試しただけじゃないか・・・」
「それなら別に食べる必要もないわよね!」
「・・・・・・そうだな。それとあと一つ気づいたことがある・・・。これさ・・・そのまま出てくるから、食器がいるな」
「野外でそうなるのはさすがに嫌だわ・・・。あとで買いに行きましょう!」
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