第37話 俺、異世界で冒険者ギルドに行く
「もう忘れモノはないよな?」
「・・・えぇ、たぶん大丈夫なはずよ。それにもし、忘れていてもすぐに取りにこればいいのよ!」
「いや・・・それはそうなのだが・・・まぁいいか」
何度目かの外出準備の確認をすませると俺たちはやっと宿屋を出て冒険者ギルドに向かうのであった。それと今日からアッシュの助言通りにポシェットを常に持ち歩くことにした。
このポシェットも実はエリンたちが用意してくれたシューズと同じブランドのリリアンクラインシリーズだったりする。リリアンクラインポシェット、子供に人気のブランドの女の子用ポシェットです。長持ちするのもポイントが高い。値段は金貨5枚。
冒険者ギルドは俺たちが泊っている宿屋から北側にあるらしい。そしてその冒険者ギルドを挟むように商人ギルドと職人ギルドがそれぞれ建てられていると歩きながらエリンが教えてくれた。
距離としては徒歩5分ほどで目的地にたどり着いた。冒険者ギルドの前まで来たところで俺は立ち止まり、まじまじと建物を見てしまった。
傍から見れば、親御さんの用事に無理をいってついてきた子供のように見えているのだろうか・・・。いまはそれよりも冒険者ギルドを見ることに専念しよう。
正面には大きな扉があり、その真上には冒険者ギルドと書かれた看板が打ち付けられている。左右を見ると商人ギルド、職人ギルドも同じような外見をしていた。来るのが少し早かったのかまだどのギルドも扉が開いていなくてどうしようかと考えていると後ろから声をかけられた。
「あら?アスティナじゃないの。あなたもギルドになにか用事があるの?」
「おっ、その声はアッシュか!ちょっと冒険者ギルドに用があってな~」
「そうなの、わたしは商人ギルドの方ね。あらあらあら!エリンその胸当てよく似合ってるわよ♪」
「ありがとう。それはそうとアッシュいつアスティナと購入の打ち合わせをしたのよ?」
「あー、それはね・・・」
「あああ、アッシュ、扉が開き始めたぞ!もう行った方がいいんじゃないか!!」
「・・・・・・あ~、そうね。それじゃまたね~♪」
危うくアッシュによって、俺と師匠でなんとか作り上げたアリバイが全て無に帰すところだった。あと少しギルドが開くのが遅ければ危なかったかもしれない。ギギギと音を出しながら扉が全開したことを確認すると冒険者ギルドに向かって歩き出そうとしたときエリンに止められた。
「アスティナ、あなた紹介状ちゃんとポシェットにいれてる?」
「あー、大丈夫だ。ちゃんとはいってる」
「それじゃ・・・会いに行きましょうか」
「ふぅ・・・だな、行こう!」
そうして俺はファンタジー世界に毎回出てくるといっても過言ではない場所、冒険者ギルドに足を踏み入れた。ギルドの中は正面に受付窓口があり、そこに向かうまでにテーブルやイスが複数配置されていた。右側には依頼書が貼られているボードがあったり、左側には2階へと続く階段が見えた。
まずは俺たちは受付窓口に向かい紹介状を見せに行くことにした。まだ開いて間もないこともあり、待つことなくそのまま受付まで進めた。
俺の担当をしてくれる受付嬢を見たとき、ついある人の名前を口に出してしまった。
紺色の髪、晴れた空のような瞳がとても印象的な女性を忘れるわけがない。というか、昨日初めて会ったにもかかわらず、あんなテンションで話してきた女性を忘れられるか。
「・・・・・・セルーンお姉ちゃん?」
「・・・あぁ!あなたがアスティナさんね、姉からあなたのことは聞いているわ。自己紹介がまだだったわね、わたしはセルーンの妹のセレーンよ。よろしくね」
「またまた~、そうやって俺を騙そうとしてるんだろ?そうはいかないぜ」
「ま~た・・・この反応。本当にあのバカ姉・・・」
「まさか・・・本当にセルーンお姉ちゃんじゃないの・・・?」
「最初からそういってますけど」
セルーンとセレーンは双子の姉妹らしい。俺は鑑定で確認をしようとしたがセレーンさんも案の定、鑑定不可であった。
紹介状を渡すと彼女は中身を見ることもなく、ギルドマスターのところへ直接案内するため、受付窓口から出てきてくれた。
そのときやっと別人だということがわかった。どこがとはいわないがセレーンさんはとても大きかった・・・。
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