第208話 俺、異世界で自分の戦闘スタイルについて考える
わーさんとデスサイズのことで会話が終わったあと俺は明日のカスミとの手合わせについて考えていた。
デスサイズの本当の能力を知れたのは良かったけど、それで俺の戦闘スタイルが変わるわけでもなく・・・とはいっても自分で補充しなくていいのはかなり助かる。
今回は三日後に大会がある上に依頼主のカスミも出場することが分かっているため、デスサイズを発動せずにセルーン直伝の体術を主軸とし、魔法はあくまで補助として使用している。
いつもの戦闘スタイルとは全くの真逆。
いつもは魔法を主軸として遠距離で戦い、魔法だけでは倒し切れず近づかれたときに相手の射程距離から離れるために体術を用いることにしている。
俺の魔法とエリンの弓矢という圧倒的な火力で一方的に攻撃するので、魔物討伐とかの場合だとほぼ体術を使用することはない。
俺が身につけた技術は攻撃タイプではなく防御タイプのもの、相手の動きに合わせて攻撃するのではなくて、防御や回避など避ける方に重きを置いている。
セルーンの一撃を如何に食らわないように行動するかを心掛けた結果そうなった。
別にこれがダメだというわけではないし、実際にこの戦い方で今まで問題なく戦えている。
それにこの戦闘スタイルじゃなかったら・・・俺はカスミの猛攻に耐え切れなかっただろう。
敵の攻撃を躱しながらドローをして魔法を発動することも何度かしたこともある、今回もカスミの連撃を躱して魔法を数回発動もした。
ただ・・・相手がカスミのような熟練者となると一切これが通じない、理由は簡単・・・攻撃に移るまでの時間が明らかに俺の方が遅いからだ。
発動したい魔法を思い描いてからカードをドローして、手元に出現したあとに唱えるまでの二秒にも満たない時間ではあるが、その僅かな時間で対策を講じられる。
それはカスミの霞流抜刀術を使用するときに技名を言うのと同じ、俺もカスミから発せられるその技名を聞くことで対策を講じている。
どちらも条件は等しいように思えるが・・・流れの中で技を発動するのと、一旦動作を切ってから魔法を発動するのとでは難易度が変わってくる。
離れていれば特に問題はない・・・相手の状況を見て最善のカードを選んで発動すればいいだけ・・・だが、面と向かって戦っている最中にそんなことをしている余裕は俺にはまだない。
しかも、大会ともなると決められて範囲から出てしまうと即失格になる・・・あの広場全域を使えたとしても俺やエリンが得意とする遠距離をずっと維持して戦うことは厳しいと思える。
そうなると最終的には直接殴り合うような距離・・・近距離戦にシフトするはず。
いや・・・聖弓ユグドラシルを持ったエリンなら誰も近づけずに倒しそうだな・・・。
なんか相手の隙を作ることができる攻撃とかがあれば良いんだけど・・・そんな技も俺は持っていないしなぁ。
「お嬢様・・・アスティナお嬢様!!」
聞き覚えのある声が聞こえる・・・顔を上げると目の前には我が姉システィの姿が見える。
どうやら自分ではそれほど時間が経過した感覚はなかったが、思った以上に考え込んでいたらしくシスティが来たことに気づかなかった。
ベッドを見ると大の字で寝ていたはずのエリンもすでに起きており、ベッドに腰かけいつでも風呂に直行できる準備をしていた。
もちろんベッドには俺の寝間着や下着が入ったカゴも見事に準備されている。
「あー、システィおかえり・・・ごめんちょっと考えことして、気づくのが遅くなった。それじゃみんな揃ったことだし早速風呂に行こうぜ!!」
「はい、お嬢様」
「システィ、分かっているとは思うけど一応念のために言っておくわね・・・今日は!わたしが!アスティナのお風呂係だからね!!」
「はい、分かっていますよエリン。その代わり・・・今日は私めがお嬢様と一緒の布団で寝ますので♪」
「分かってるわよ。言ってみただけよ・・・言ってみただけ・・・アスティナお風呂行くわよ!!」
「分かった、分かった!風呂に行こうぜって俺、最初に言ったよな・・・だからさ・・・腕を引っ張るのやめない?ちゃんとエリンについて行くから」
このルールが決まってからというもの・・・このやり取りが毎日途切れることなく続いている・・・今回はエリンだったが、昨日はシスティがこれと同じようなことを俺に対してしていた。
毎日毎日同じことをしていて、よく飽きないな思いながらもこの状況に慣れてきている俺がいる。
まぁ彼女たちのおかげで毎日最高品質のアスティナを拝めることには感謝しかない、俺ひとりでは絶対にこうはならないだろう。
そしていつもの洗礼を受けに俺は風呂に向かう。
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