第18話 俺、異世界で靴を買ってもらう
俺は彼女に連れられ、いま靴屋に来ている。ここに来るまでの間、俺は常にキョロキョロと周りを見ていた。異世界でのはじめての町ということもあったが、中世を模しているような町並みが不思議なことになぜかとても心地良く感じたこと。それともう一つ理由があった。
それは俺のいた世界にはいなかった人々。犬や猫のような耳がある人、尻尾が生えている人、背中から羽根が生えている人など多種多様な人々が町中を歩いていたことだ。
俺はこの眼で見たその光景が新鮮で仕方なかった。
「なぁなぁ!エリンいろんな人がいるな!あの羽根で飛んだりするのかな?あの尻尾って、どうやって動かしてるんだろう」
「はいはい!アスティナまたお風呂のときみたいになってるわよ。そんなに気になるなら、リリアーヌちゃんとこの宿泊者にも他種族の方がいるから聞いてみたら。それよりもいまは靴を見ましょうね?」
「あー、そうだな。また暴走してしまったようだわ・・・、とはいってもどんな靴を選べばいいのやら」
俺は元々服や靴などに金をかけるタイプではなかったこともあり、正直なところ彼女たちにプレゼントしてもらったリリアンクラインシューズだけで満足してしまっていた。
さすがにこのまま手ぶらで帰るほどの勇気もなく、迷いながらあちこち店内をウロウロしていると、冒険者用と書かれているシューズラックを見つけた。俺はそれぞれの靴の違いをエリンに聞いてみた。
「あっちの靴と冒険者用の靴はなにが違うんだ?」
「あ~、簡単に言うと。あっちのは戦わない人用でこっちのは戦う人用!」
「すっげーザックリした説明だな。それなら、俺が選ぶとしたらこっちの冒険者用だな!」
「そうなの?そっちは冒険者用だから、可愛いのはあまりないわよ?」
「可愛いやつはもうエリンがくれたやつがあるから問題ない!さてさて、どれにしようかな~」
俺はたくさんある冒険者用の靴の中から一つだけ気になる靴を見つけた。その靴の名はバトルブーツ。その靴を手に取るといつものように鑑定が発動した。戦闘用のブーツです。体術主体で戦う冒険者に人気があります。
との説明と値段銀貨4枚が表示された。俺はバトルブーツに貼られている値札を確認した。そこに書かれていた値段も銀貨4枚だった。
「店員のおねぇさん~、ここにあるバトルブーツってデザインとかが違うけど、全て銀貨4枚でいいの?」
「はい、そこに置いてあるバトルブーツは全て銀貨4枚です」
「いや・・・、でもこっちのやつとか装飾すごいけど?」
「それは作っている靴職人さんがそういうのがお好きだったんでしょうね」
「・・・お客様、商人ギルドはご存知でしょうか?」
「知らない・・・、いま初めて聞いた」
そういうと店員のおねぇさんがこの世界での商売の仕方について教えてくれた。まずこの世界の商人は基本的に商人ギルドとやらに登録するらしい。どんな店がしたいかを商人ギルドに伝えて、審査に通ると登録完了とのことだ。
審査に通ると開業資金がない人は商人ギルドが全額または一部を審査時の評価によって負担してくれるらしい。あと席を置くために毎月契約で取り決めたお金を納めることが必要だともいっていた。
自分で商品を仕入れて商売をすることも出来るし、または商人ギルドを通して商品を仕入れて商売をすることも出来る。ただ自分で仕入れて商売をする人はごく少数だといっていた。
大多数の人は後者の方だという、例えば俺が気になったバトルブーツだが、これを仕入れる場合まず商人ギルドに金額指定をして依頼をする。今度はその依頼を手数料などを差し引いた分の金額で商人ギルドが職人ギルドに制作依頼する。
その依頼を受けた靴職人が制作し、職人ギルドに納品したものが商人ギルドを通してこのお店に届くらしい。毎回制作する靴職人が違うため値段は同じだがデザインなどが違うバトルブーツがあるんだと説明してもらった。
俺がそれだと売れない商品もあるんじゃないかというと店員のおねぇさんはこう答えてくれた。
「もし、期間中の売れなかった場合、商人ギルドが買い取ってくれるのよ。ちょっとだけマイナスにはなっちゃうけどね」
「へぇ~、いろいろ教えてくれてありがとう!店員のおねぇさん」
「いいの、いいの!それと私、セルーンっていうの。あなたのお名前はなんていうの?」
「俺の名前?俺はアスティナっていうんだ。よろしくな!セルーンおねぇさん」
「よろしくね!アスティナちゃん、それでどのバトルブーツにするの?」
「おっ・・・、ちょっと考え中」
なぜか急に距離が縮まったことに俺はちょっと困惑しながら、バトルブーツを一つ一つ手に取り選んでいると、最後に手に取ったバトルブーツだけが違う名称で表示された。
疾風のバトルブーツ・・・戦闘用のブーツです。魔力を通すことにより、脚力UP、移動速度UP。そして値段がなんと金貨150枚。
「あのさ・・・セルーンおねぇさん。このバトルブーツも銀貨4枚でいいんだよな?」
「もちろんよ、だってバトルブーツは全て銀貨4枚だもの?それが気に入ったのアスティナちゃん」
「・・・うん、これに決めるよ!エリン俺これが欲しい!!」
「うん?やっと決まったのね。途中ずーと、店員さんと楽しそうに話していたから目的を忘れたのかと思ったわ」
「あっ、ごめん・・・。そうだな、今日はエリンと一緒に買い物を楽しむんだったな」
「ふふ、わたしもちょっと言い過ぎたわね。ごめんねアスティナ」
そんなやり取りをセルーンは楽しそうに見ながら会計を済ませてくれた。
「ありがとうございました~、またのお越しをお待ちしております」
「また来るよ~、セルーンおねぇさん」
「はいはい、アスティナ次いくわよ!次!」
俺は店員のおねぇさんことセルーンに挨拶をすると次の店に向かうのであった。
「面白い」「続きが気になる」と思っていただけましたら
是非ともブックマーク、評価よろしくお願いいたします。




