第164話 俺、異世界でシスティの説得方法を考えるその3
システィに王城に留まってもらうために俺が受け入れた妥協案にエリンの指摘を加えた案を足した結果。
朝はみんな揃って朝食を取ること、夜は一日おきに交代で添い寝をする、添い寝ができない日は代わりに一緒に風呂に入る・・・そして最後にどのタイミングでハグをされたとしてもそれを静かに受け入れること。
ルールの1つである一緒に風呂に入る・・・基本的には風呂に入る時はみんな一緒に入るのだが、これには別の意味が込められている。
例を出すとするなら脱衣や髪を乾かすといった風呂に関連すること全てをひとりで行えるらしい・・・。
このことに俺が気づくのはもう少しあとの話になる。
俺やエリンも正直なところシスティから離れるのは寂しいと思っていたし・・・これでライユちゃんの安全が買えるのならば安いものだ。
だが・・・前以上にスキンシップの頻度が激しくなるのか・・・俺の心臓もつかなぁ・・・。
システィの説得も終わり、俺はほっと胸をなでおろす。
アルトやカークランドは俺たちの話をただ黙って静かに最初から最後まで聞いていたが一度も話に割り込んでくることもなく、俺たちの案を受け入れている。
ちょっとぐらいは会話に入って来るのかなと思っていただけに少し気になった俺は彼らに事後報告ではあるが話すことにした。
先ほども言ったように最初からずっと聞いていたから今更言う必要はないかもしれないがなんか言っておかないと俺自身が落ち着かない。
「アルト、それにカークランドさん。そういうわけだからシスティのことよろしく頼む!」
「あぁレクメングルが洗脳されておった以上、余からしてみればこれほどありがたい話はないが・・・本当に良いのか?」
「大丈夫だ、問題ない。それに会う時間は短くなるかもしれないが・・・毎日顔は合わせるしな。俺としてもシスティがそっちにいてくれることで安心して他の国に行けるってもんさ!!」
「ふぉっふぉっふぉ、アスティナ女史がそれで良いのなら、儂らもこれ以上言うことなど何も無いのぉ」
カークランドは考える様子もなく、あっさりと俺たちが出した答えを受け入れてくれた。
その姿を見たアルトは数秒目を閉じる。
そしてゆっくりと目を開け、俺たちひとりひとりの手を両手で包み込んで感謝の言葉を述べる。
「そうだな・・・アスティナ、エリン・・・そしてシスティ・・・せっかく再会できた妹と別れる決断までして余たちの護衛を受けてくれたこと・・・誠に感謝する。本当にありがとう!!」
俺とエリンは国王アルトとして感謝されたことにちょっと動揺しつつ彼の言葉に無言で頷く。
システィは俺たちとはまた違う反応を示す。
「いえ・・・国王様に感謝される覚えは私めにはございません。なぜなら貴方様のおかげでこちらも利を得ることができましたので・・・」
「そぉ・・・なのか?だが・・・そうだとしてもだ!ありがとう、システィ!!」
「国王様は本当にお人がよろしいのですね。・・・なるほど、理解いたしました。どおりでアスティナが懐くわけですね」
システィはそう言うと正座している足を崩して対面に座っているアルトに対して片膝をつき、右手を心臓に位置まで上げて左手は後ろに回して肘を90度に曲げ首を垂れる。
「ご安心ください、陛下。システィの名にかけて陛下を守護する剣となりましょう!!」
「おおおぉぉ!!実に実に頼もしい、よろしく頼むぞ、システィ!!」
「はい、お任せください。ですが、一つだけお忘れなきよう・・・お嬢様が旅に出ている期間のみだということを・・・」
最後に鋭い目でアルトにそう釘をさすとまた正座に戻った。
俺とエリンはシスティが最後に言った言葉の圧が強すぎて・・・ちょっとビビッてしまった。
そこら辺の冒険者だったら・・・彼女の声を聞いただけ、または目を見ただけで気絶するレベルのやつだわ。
とりあえずはこれで王都全体は無理だとしても王城に関してだけ言うと守りは完璧だ。
・・・・・・そういやアラームが鳴ってから一分弱ぐらいで消えてたけど、これはシスティは対象外として設定し直してくれたのか。
「なぁアルト・・・そういやさ、これから王城にシスティが出入りすることになるのだが警報とか大丈夫なのか?」
「あぁそれは問題ないぞ。そなたがシスティを呼ぶことは余の勘で分かっておったからな!!」
「・・・・・・あぁそういうことか。なら全然問題ないな」
アルトが言った余の勘で・・・というのはきっとソレイユの予知能力で教えてもらっていたのだろう。
ソレイユのやつ能力が使いにくいとか言ってたくせに・・・結構使いこなしているじゃないか・・・。
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