第163話 俺、異世界でシスティの説得方法を考えるその2
あれから言葉を崩して分かりやすいようにエリンに説明すること10分・・・やっと彼女は旅行の目的について理解してくれた。
「そういうことなら初めからそう言ってよね」
「・・・あー、そうだな」
俺の肩をバンバンと一定間隔で叩いてくるエリンを横目に見ながらそう答える。
エリンに理解させるためにあれやこれやと考えながら話していたこともあり・・・システィを説得するための材料について全く何にも浮かんでいない。
何にも思いつかないが・・・とりあえずまずは紅茶でも飲んでリラックスしよう。
この短時間の間に3回目になるであろう紅茶をおかわりする。
目の前にあるカップを手に取って、システィが新しく注いでくれた紅茶を口に含んではゴクンと流し込む。
程よく温められた紅茶が喉を通る。
鼻に抜ける風味、砂糖を入れていないにも関わらず舌に感じる優しい甘み。
やはり・・・何度飲んでもシスティが淹れてくれる紅茶は最高だな。
紅茶のシスティとハーブティーのリリアーヌ・・・この二強が最強すぎるな。
・・・さて・・・それじゃ頑張って説得するか・・・。
俺はシスティの目を見て話し始めた。
「あの・・・な、システィにお願いしたいことがあるん・・・だけど」
「お嬢様・・・それは私めにここに残って欲しいとかそういうお話でしょうか?」
「・・・はぁ、やっぱ俺の考えは全部お見通しってわけか。あぁそうだ、システィが考えている通りでたぶん合ってる・・・王城に留まって彼らの護衛、やつらに勧誘されている者がいないか監視しておいてほしいんだ」
俺は手の震えを抑えるため自分の太ももをガッシリと掴みながら彼女の反応を見る。
だが・・・俺のそんな予想は外れることになる。
なぜならシスティは嫌がる素振りも反論もせずにたた一言「かしこまりました」と返答してきた。
彼女のその返答につい拍子抜けしてしまうが・・・今度は俺が彼女の【お願い】を聞くことになる。
「・・・えっ?システィ本当にいいのか・・・ありがとう、助かるよ!俺はてっきり嫌がると思っていたからさ・・・」
「その代わりとは言っては何ですが、私めもお・ね・が・いがございます・・・」
「・・・・・・おぅ、なんでも言ってくれ。俺にできることならなんでもするからさ!!」
このとき俺は言ってはいけない言葉を口走ってしまったと気づきすぐに口を塞ぐが・・・システィの耳にはしっかりと聞こえていたらしく、こっちをすごい形相で見ている。
そして・・・彼女はまばたきひとつせず・・・口を開く。
「な・ん・で・も・・・といま仰いましたよね、お嬢様?」
「あぁ・・・で、できる限りのことはするよ」
俺は声を上ずりながら答える。
それを聞いた我が姉は・・・スーっと息を吸い込み、深呼吸をすると・・・一瞬でも油断してしまうと聞き取れなくなるほどの速度でお願いを羅列する。
朝起きてから着替えなどの身だしなみチェックから始まり、夜は添い寝する・・・といういままで以上に俺に付きっきりじゃないかと思えるほどの内容だった。
「さすがにそれ全部は無理かなぁ・・・それだと本来の目的がちょっとおろそかになるからな」
「そうですか・・・では、毎日朝起こすのと夜添い寝すること、あと・・・妹成分補充のためどこでもハグをする許可で手を打ちます」
「・・・・・・あ~、それでお願いします」
いもうとせいぶんってなんだろう・・・と思いながら俺はシスティの妥協案を受け入れることにした。
隣で聞いていたエリンは急にシスティに怒鳴り始める。
「システィ!!アスティナが許したとしてもわたしが許さないわ!!」
「私め・・・なにかおかしいことを言いましたでしょうか?」
「えぇ・・・アスティナと一緒に寝るのは一日おきで交代する約束だったでしょ!!」
エリンのどうでも良い指摘を聞いた俺はため息を吐く。
システィの表情には変化は無かったがチッと舌打ちが彼女から聞こえた気がしたが・・・スルーした。
「そうでしたね、エリン。私めとしたことがすっかり忘れておりました」
「あなたって本当にアスティナのことになるとすぐ暴走するわね・・・仕方ないわね、本当に」
エリンはそう言って微笑むのであった。
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