第156話 俺、異世界で名状しがたいミンチを手に入れる
謁見の間を片付ける前にまずは・・・そこの喉が死んでいるアルトをどうにかしないとだな。
ストレージから水筒とコップを取り出した俺はリリアーヌお手製のハーブティーをコップに注ぐと、喉が死んだアルトに手渡す。
「アルト・・・大丈夫か、これ喉にいいらしいから飲んでみ?味も絶品だぜ!何てったって、うちのリリアーヌが淹れたからな!!」
「すまない・・・頂こう・・・・・・程よく温かいのがとても良いな。それにそなたが言うように実に美味い、痛みもだが心が安らぐな!」
ハーブティーを飲んだことにより、喉まではさすがにすぐには回復しなかったが元気を取り戻した。
正直リカバリーで喉を治療した方が早かったのかもしれないが、このときの俺は頭の中からすっかり抜け落ちていた。
「あー、そうだ。俺としたことがすっかり忘れていたわ。これも足して飲んでみ?」
そう言って俺はストレージからビンを取り出して、その中に入っている琥珀色のとろみのある液体をアルトが手に持っているコップに大さじ一杯いれてかき混ぜる。
アルトはその謎の液体が足されたハーブティーを飲む。
そして・・・ゴクンとひと口食道に流し込むと、そこから一気に残りを口に流し込んでいく。
空になったコップを俺に手渡すと同時にこの状況下でまさかのもう一杯と言ってきた・・・さすがリリアーヌお手製だ・・・リラックス効果絶大すぎて怖いわ。
追加でハーブティーをコップに注ぎ入れ、大さじ一杯の例のあれをいれてかき混ぜるとアルトに手渡す。
アルトは二回目とは思えない勢いでまた一気にハーブティーを飲み干す。
「ぷはぁ~!あ~、美味かった!!風味も香りも素晴らしい・・・それに最後に入れたハチミツの優しい甘みが実に良いな!!」
「だろ?喉の痛みにはハチミツがいいらしいし、丁度今のアルトにもってこいだと思ってな!」
「なるほど・・・確かに先ほどに比べて声も出るようになった気がするな!助かった、ありがとう、アスティナ」
「そこまでの即効性ねぇよ!さてと・・・アルト・・・それじゃそろそろ目の前の現実を受け入れようか・・・でどうするよ、これ?」
周囲を見渡しながら、俺はアルトにこの部屋の惨状をどうするかべきか質問する。
コップを俺に手渡しつつ、アルトは顎に手を当てなにか考えている。
俺はアルトの考えがまとまるまでの間、水筒やコップなど取り出したものをストレージに収容しながら待つ。
コップやスプーンはウォッシュで洗浄してから収容しておいた。
次に取り出した時に汚れたままなのは気持ち的にあまりよろしくないしな。
「ふむ・・・そうだなぁ・・・・・・アスティナよ・・・逆に聞くがなにか案は無いか?」
「そうだなー、元オークエンペラーはもう買値もつかないほどぐちゃぐちゃだし、あれはもうストレージに封印して・・・あとはこの赤色をウォッシュで洗い流すってのはどうだ?」
「オークエンペラーは貴重な素材ではあるが、確かにこれではなぁ・・・それでウォッシュとはどういう魔法なのだ?」
「あー、ウォッシュというのはさっきコップとかを洗うのに使った魔法だな。これ使用枚数さえ足りていれば、どんな汚れですら綺麗に洗い落としてくれるんだぜ!」
「コップが泡だらけになっておったのはその魔法をかけたおったからか。ふむ、案外悪くないかもしれんな・・・費用のことなど気にせず全力でやってくれ、余が全部負担しよう。もちろん報酬も支払おう、ではよろしく頼むぞ、アスティナ」
「あぁ!任せろ、しかも費用までもってくれる上に報酬まで貰えるときたら、俺も本気を出さざる負えないな!!」
俺は右肩をぐるぐると回しながら、そう答えると使用枚数がどれだけ必要になるか分からない現状・・・唱えるたびにドローしていては埒が明かない。
っと・・・その前にこの塊をストレージに収容しておくか・・・。
俺は【オークエンペラーの亡骸】改め・・・【オークエンペラーの名状しがたいミンチ】をストレージに収容した。
ストレージに収容する際、少し離れた位置で名称指定をすることによって、あの塊に一切触れずに謁見の間から消去しておいた。
さて・・・次は赤色を落とす作業を開始しますか。
とりあえず50枚ほどショップで購入すると、次にアルトに手のひらを合わせて皿を作るように頼んだ。
アルトは俺の指示に従い意味も分からず、両手で皿を作る。
そこにショップで購入したカードを束にしてそこに置く、そこから数枚取っては唱え続けた。
そしてアルトの両手に置かれていたカード50枚全て唱え終わる。
「ふむ・・・50枚で三割弱ってとこか・・・さて・・・追加購入しますか」
こうして俺はさらにウォッシュをカートに追加していくのであった。
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