第151話 俺、異世界で狂った小太りなおっさんを見る
アルトとの会話をすませた俺は次に宰相のカークランドに今回色々と助言をしてくれたことに感謝の言葉を述べる。
「カークランドさんオークエンペラーのことで諸々助けてくれてありがとうございました」
「いやいや・・・儂も久方ぶりにオークエンペラーをこの目で見れて感無量じゃったよ。・・・・・・アスティナ女史よ、またいずれ」
「あー、それまであんたも息災でいろよな!!あー、それとこのオークエンペラーは絨毯の弁償代として置いていくから、好きに使ってくれ!!」
予定ではオークエンペラーを見せた後でストレージに収容して持って帰ろうと思っていたが・・・収容して、絨毯をウォッシュで綺麗にしてとかする余裕も時間もあまり残っていないはずだ。
そりゃそうだ・・・王都の大臣を無礼なやつと呼んだ時点でブタ箱行き決定だろう・・・ブタにブタ箱に送られるなんて笑えない冗談だ。
俺たちを捕まえるため謁見の間に兵士が一斉になだれ込んでくるのも時間の問題だろう。
「おい!娘!!この私を無視するとはいい度胸だな!!もう言い逃れは出来ぬぞ、侮辱罪でお前たちを牢獄にぶち込んでやるからな!!」
「はぁ・・・おっさんさぁ・・・国のために頑張っているのは知っているし、ご先祖様がすごい方だったってのも聞いたけど・・・ちょっと人を見下しすぎな、それじゃいざってときに誰も助けてくれないぜ?」
「むすめぇぇぇぇ!!言いたいことはそれだけか?・・・そんなもの権力と金さえあれば、何とでもなるだよ!!このクソガキがぁ!!」
「はぁ・・・・・・分かってねぇな、おっさん。お・ま・えはいま国王であるアルトの前で自分から暴露したんだぞ?金さえ権力さえあれば、俺の思うままにできると・・・そのことがどれほど重大なことか・・・大臣様は本当にご理解しておいでですかな?」
大臣様は俺が指摘した意味がようやく理解できたのか・・・ハッと我に返ったのかアルトに向かって深々と頭を下げてひたすら言い訳をしている。
それはもう聞くに堪えないほどでただただ我が身可愛さのあまりに心にも思っていないことを羅列している。
そんな無駄な時間が経過していく最中・・・俺が思っていたよりも早く扉が勢い良く開くと、これからどこかの戦争にでも出兵するのかというほどにガチガチの武装をした兵士20名ほどが俺たちを謁見の間から逃がさないようにするため出口付近に陣取る。
そこから数名がさらに前に進み俺たちを包囲するため近づいてくる。
アルトもその暴挙には口を出さざる負えなかったのか・・・兵士にこの場から出て行くように指示をする。
「お前たちを呼んだ覚えはないぞ!すぐに警護の任に戻れ!聞こえなかったのか、余は戻れと言ったのだぞ!!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
アルトの声が虚しく謁見の間に響くだけで・・・誰ひとりその指示に従おうとしない・・・それどころか国王であるアルトの言葉に返事をすることさえしない。
さすがにこれはなにかおかしいと様子を見ていると・・・先ほどまでゴミみたいな言い訳をしていたレクメングルが急に高笑いし始めた。
あまりにも唐突な出来事だったため、俺とエリン・・・それにアルト、カークランドは唖然とする。
「ガーーーーッハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!王よ・・・残念、非常に残念ですが・・・国のために亡くなっていただきます。私は勝手に動く人形には興味がないのでね・・・あなたの息子にさっさと跡を継いでいただくとしよう!!いや・・・私が王としてこの国を治めた方がもっと強大な国に育っていくのではないか・・・あぁ!ああああああああああああ!!そうだ!そうしよう!!ガハ、ガハハハハハハハハハハ!!」
もうおかしいどころではない・・・このおっさん、いま王族を殺すとかぬかさなかったか・・・確かにレクメングルの一族は途中から国の中枢に入って国の政などに携わっていたことは聞いていたが、自分たちが王になることまでは望んでいなかったはず・・・。
そこまでやってしまうと、甘い蜜を永続的にすすり続けることができなくなってしまうからだ。
いや・・・それ以前にこのおっさんの言動がヤバい・・・もうなにがどうとかではなく、とにかくヤバい・・・それにこっちを包囲してきている兵士もどこか目が虚ろで焦点が合っていないように思える。
アルトの言葉をガン無視した時点で怪しいとは思っていたが・・・これ精神攻撃的なあれか・・・【眷属の魔眼】のような能力で操られているのでは・・・。
しかし、それをどうやって調べる・・・また解くことができるのか分からない・・・鑑定で分かるのはその人物の性格や特徴だけで状態異常といったことはまでは確認することができない。
そして・・・レクメングルは首を左右に振ってふらふらしながら、兵士に命令する・・・その命令をしたことにより・・・俺も彼もう引き返せなくなる。
「兵士諸君いまから楽しい楽しい絵の具遊びだ・・・色は赤のみだがね、ガハハハハ!!コクオウ、サイショウヲ・・・コロセ!!」
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