第149話 俺、異世界でオークエンペラーの亡骸を取り出す
右手に持ったオークエンペラーの亡骸を実体化するため、名称を唱えた・・・。
オークエンペラーの切り分けられた上半身と下半身が絨毯に落下する。
落下したことによる衝撃でドオーンっと地響きとともに・・・ぐちゃ・・・と水分を含んだ物体が絨毯に着地する音が聞こえた。
そして・・・やつの断面からはドクドクと・・・どす黒い血液が絨毯を侵略してやろうと勢い良くあふれ出している。
思った以上に絨毯の吸水性が良かったため血液がこっちに飛んでくることはなく、俺を壁にして身を隠していたエリンはそれを見て安堵している。
俺たちにウォッシュをかける必要は無さそうだが・・・ただ外に出る前に絨毯はウォッシュをかけてあげることにしよう・・・アルトの許可を得てやったとはいえさすがにこれを放置して帰るのは後味が悪い・・・。
辺り一帯に生臭い血の匂い・・・目の前には無残な状態で動かなくなっているオークエンペラー・・・。
そしてそのあまりにもおぞましい光景に目を背ける者・・・吐き気を催す者・・・器用に立ったまま気絶している者などがどんどん量産されていく中で国王、宰相は怯えることもなく、また目をキラキラさせ興奮気味にあ~だこ~だと語り合っている。
難癖をつけてきた大臣はどうしているのかと様子を見てみると・・・左手で口を抑え、胃からこみあげてくるモノを必死に耐えている様子。
先ほどまで呼吸も荒れて、目も血走っていた大臣だったが・・・さすがはこの国の重鎮といったところだろうか、最後まで絨毯を汚すこともなく耐えきっていた・・・。
他の臣下たちがどうなったかというと・・・テイル他数名を残して、全員リタイアしている。
さすがにこのままリタイアした者を謁見の間に放置しておくわけにもいかないと思ったアルトはテイルたちに外に連れ出すように指示をしている。
テイルは扉の外にいる守衛に開けるように言うと、すぐさまギィィと巨大な扉が開いていく。
まだ完全には開き切っておらず、人ひとりがやっと通れるような状態になるとその隙間めがけダウンしている人を肩に担いで、通り抜けていく。
レスキューとかで見たことがあるやつだと感心しながら、俺はただただその人の動きを見続ける。
テイルが王冠も軽く持ち上げていたことなど・・・ここの人たちはみんなこれぐらい出来て当然なのだろう。
確かに俺が泊まっている宿屋の看板娘リリアーヌでさえ、平然と大盛りのメニューを片手で配膳しているしな・・・。
テイルたちがリタイアした人たちを全て外に運び終えたことを確認したアルトは彼らに感謝の言葉を述べたあと、謁見の間から出るように伝える。
国王の言葉を聞いた彼らはその場で一礼すると、踵を返し次々と外に出て行く。
彼ら全員が扉を通り過ぎると、守衛がまた扉を閉める。
ここに残っているのは俺たちふたりと、国王に宰相そして駄々っ子大臣の5名。
ただ臣下たちの体調を気にして、彼らを外に出したというわけではなく・・・アルトは彼らにここ先の会話を聞かせたくなかったのだろう。
あまり近づこうとせず、離れてオークエンペラーを見ている大臣にオークエンペラーの亡骸を彼に紹介する。
本当なら紹介する相手は大臣ではなく、亡骸を取り出す許可を出してくれた国王であるアルトにするべきなのだが・・・お前の我がままのためだけにわざわざだしてやったんだぞ・・・という嫌味を込めて彼を選んだ。
「大臣様こちらが・・・オークエンペラーでございます」
「・・・・・・あぁ、そうみたいだな・・・・・・うっぷ・・・」
「これでわたくしたちが討伐したと認めていただけますか・・・大臣様?」
「あぁ・・・お前たちのパーティーが倒したのは認めよう・・・・・・」
やっと俺たちがオークエンペラーを討伐したことをレクメングルが認めてくれたことに、ほっと胸をなでおろした瞬間・・・彼はある言葉を口にする。
「では・・・最後にこれを真っ二つにしたお前たちの仲間を私に紹介してくれないか?」
「恐れ入りますが・・・こちらに伺ったときに彼女が来れない旨はお伝えしているはずですが?」
「あぁ・・・そうだったな!だが、おかしいな・・・私が仕入れた情報では王城に入るまでは3人揃っていたと聞いているのだがなぁ・・・」
その言葉を聞いた俺は眉をひそめる。
王城直前にシスティを帰すのではなく、王都に入る前に帰しておくべきだったか・・・これは完全に俺のミスだ・・・だけど、そうだとしても俺とエリンそしてシスティの3人で王都に来たこと・・・色んな店舗を見て回れたことはとても楽しく有意義な時間だった。
俺のミスだったとしても・・・そのことで後悔などは一切ない・・・あるはずがない。
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