第146話 俺、異世界で大臣と宰相を鑑定する
ストレージから王冠を取り出した俺はカードに書かれている名称を唱え実体化させる。
ストレージに収容する時だって、持ち上げることができなかったためシャドーウルフを収容したときのように対象指定で収容した王冠をここで取り出した時点で察しはついていた・・・やはり予想通り出現した瞬間ガコンッ!!っと絨毯の上に落ちた。
しゃがんで高低差をできるだけなくしてからカード名称を唱えれば良かったのだが・・・この時の俺はそんなことにすら気づかないほど場の雰囲気に飲まれていたのかもしれない。
収容したモノを実体化する場合も魔法を使う時と同じで手に持った状態でしか発動することができないという微妙に面倒くさい仕様となっている。
絨毯が敷いてあったから、まだそれほど大きな音はしなかったが・・・これがそのまま床に落ちていたら、それはもう王城にいる兵士が臨戦態勢でここに集まっていたかもしれない。
俺とエリンはこの光景を何度も見ているため、驚くこともないがこの能力を初めて見た臣下たちは俺が肩から掛けているポシェットがストレージ機能付きのマジックアイテムだと怪しんでいるようで、出現した王冠よりもポシェットに視線が集まっている。
アルトはソレイユの能力で俺のことを知っていたのか、もしくはセンチネルが彼に俺の能力についても情報を与えているのかは分からないが、驚く様子もなくごく普通にしている。
取り出した証拠品を彼らに確認してもらうように促す。
「失礼いたしました・・・こちらがオークエンペラーが被っていた王冠となります。どうぞ手に取りご確認ください」
すると、テイルが王冠に近づきそれを持ち上げるとそのままアルトの元へ持って行った。
どれほどの重量があるのかまでは分からないが、それでも10キロとかではないだろう・・・それを予備動作なしでそのまま持って行くあたり、テイルもそれなりに体力はあるのだろう・・・まぁ俺というかアスティナが非力すぎるだけかもしれないがな。
ただ実物をあまり見たことがないのか、アルトもそうだが他の臣下たちもあまり関心があるようには見えなかった。
ただその中でひとりだけ丸眼鏡をかけたおじいさんだけが「ほぉほぉ・・・これは」と関心を示していた。
そんな中、国王であるアルトよりも先に俺に質問をしてきた臣下がいた。
「娘、アスティナと言ったか?これでは証拠としては少し弱いのではないか、もう少し分かりやすいものはないのかね?」
その声の主は誰かと目を向けると、そこには小太りのおっさんがいた。
今の今までスッカリ忘れていた鑑定を発動し、そのおっさんのことを調べてみると・・・そのおっさんがレクメングルその人だった。
アルトグラム王国の大臣~レクメングル~、アルトグラム王国の大臣で、国王に意見をすることが出来る。またこの国をさらに発展させるべく、奮起しているおじさんです、ただとてもプライド高く、下位身分や犯罪歴がある者には酷く冷徹な部分がある。
テキストにはこう書かれていた、アルトやセンチネルが言ってた通り身分や犯罪歴とかで人を判断するのは事実のようだ、それに国のために尽力しているのもウソではない・・・ただテキスト中で一つだけ腑に落ちない一文があった。
それは国王に意見をすることが出来るという一文だ・・・テイルの説明では臣下が判断したことをそのまま国王が承認するだけと教えてもらったが、この一文を見る限り、国王の決断によっては却下される場合もあるのではないか、というかこの一文ではその可能性の方が高いのではないだろうか。
そんなことをつい考えてしまい返答が遅れてしまった俺にレクメングルがさらになにか小言を言おうとしていたとき、謁見の間でひとりだけ王冠に興味を持ってくれたあの丸眼鏡のおじいさんが俺の代わりに返答してくれたのだった。
「レクメングルよ・・・この王冠は本物じゃよ、本物のオークエンペラーの王冠じゃ・・・過去に儂が見たモノと瓜二つじゃ」
その助け舟を出してくれたおじいさんを俺はすぐに調べてみることにした。
アルトグラム王国の宰相~カークランド~、アルトグラム王国の宰相で、国王に意見をすることが出来る。またこの国をさらに発展させるべく、奮起しているおじいさんです、レクメングルとは真逆の性格をしており、身分よりもその人自身を見て判断することに長けている。
このおじいさんは宰相なのか、そしてレクメングルと同じように国王に意見ができたり、国に尽力しているとこまではほぼテキストは一緒か。
違う箇所と言えば、レクメングルが地位を優先するのに対してカークランドは人柄や能力を優先する傾向にあるようだ。
カークランドの言葉を聞いたレクメングルだったが、やはりまだ納得する様子もなく・・・俺に突っかかってくる気満々のようだ。
「宰相の言い分も分かりますが・・・それはいつ頃のことでしょうか?失礼ですが・・・お年を召した方の言葉をそのまま信じることは出来かねます」
「ふぉっふぉっふぉ・・・老いぼれの言う事なぞ、信じるに値しないというわけか・・・」
「いえ、そういうことではないのですが・・・私を含め王も他の臣下も実物を見たことがないので、判断できないのです」
「ほぉ・・・・なるほど、それでは確かに判断するのは難しいかもしれんな・・・すまないがアスティナ女史、他に証拠として出せるものはないかね?例えば・・・そうじゃのぉ・・・オークエンペラーがいつも持ち歩いているあのナタとかはどうかね?」
ナタのことも知っている時点でカークランドという人は本当にオークエンペラーを実際に見たことがあるのかもしれない。
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