第12話 俺、異世界で不意を突かれる
「あー、泣いた・・・もう一生分の涙が出たと思うんだよ・・・マジで!」
「本当にあなたは泣きすぎよ、わたしの服までなんか濡れてるんだけど!」
「いやいや、それはこっちも同じだろ、ほら、俺の服も肩んとこびしょびしょだぞ!あれ・・・、俺いつ着替えたっけ?」
「あ~、それはわたしが着替えさせたからよ。あなたのドレスはクリーニングに出しているわ」
それを聞いた俺はついつい悪戯心に火がついた。大丈夫、いまの俺はアスティナだ。美少女だ、おっさんじゃない・・・よし。
「裸を見られた・・・、わたしもうお嫁にいけないわ・・・」
顔を両手で隠す動作を取り入れつつ、指の間から様子をうかがってみることにした。
「女同士なんだから、それはカウントされないわ・・・そ、そうよね?」
「もう、これは一生養ってもらうしか・・・」
「もう、分かったわよ!わたしがあなたを養ってあげるわよ!!」
「あははは、ははは、ごほ、ごほ、・・・笑いすぎた、ごほ・・しんど・・ごほ、ごほ・・・。ヤバい、笑いすぎて、マジで死にそうになったわ、はぁはぁ、つかれた~」
俺はついに耐えられなくなり、吹き出してしまった。盛大に笑い終えて、冷静さを取り戻した俺はさっきまでほのぼのしていた雰囲気が一気に殺伐としていることに気づいた。
「アァスゥティナァァァ!!」
あっ、やり過ぎたわ・・・、これは俺が悪いな、よし、殴られても文句はいえない。そう思った俺は目を閉じて、体を強張らせながら殴られる準備をした。だが、思っていたげんこつの痛みはなく代わりに額に柔らかい触感があったのだ。なにが起こったのか理解できずにいた。
「・・・・・・・・・・・・・、えっ」
「ふふ、さっきの仕返しよ♪」
どちらの世界でもしたことがないような反応をしたことに気づくと、顔が赤くなっていることを隠そうと勢いよく布団をかぶった。それから少し時間が経ったあと呟くように彼女にこう言った。
「これからもよろしくな、相棒・・・」
「えぇ、もちろんよ」
そういうと彼女は布団越しに俺の頭をナデナデするのであった。
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