第110話 俺、異世界で知らないとこで呼出し命令を受ける
俺の部屋でそんな出来事が起こる・・・2時間ほど前・・・王都アルレイン、王城寝室にて・・・。
アルトグラム王国の王であるアルトはドアをドンドンドンドンッ!!と激しくノックする音で目を覚ました。
アルトは今何時かを確認するために時計を見る・・・時針は朝の6時を指している。
激しいノックが続いているにも関わらず隣で寝ている妃のソレイユは一切目を覚ますようすもなく、スヤスヤと寝息をたてている。
アルトはソレイユを起こさないようにゆっくりとベッドから起き上がり、ノックを止めるためにドアに向かってそのまま何も羽織ることもなく歩き出す。
そして、ただ一言「何があった?」とドア越しに問いかける。
王から問われた臣下は走ってきたのか息も切れ切れに「はぁはぁ・・・王よ・・・オークキングの件でお伝えしたいことが・・・」と返事をする。
オークキング・・・それは2週間ほど前に樹海ミストに出現したオークの上位種である。
臣下から「オークキングの件」で・・・と返答された王は冒険者ギルドマスター、センチネルにより討伐されたことの報告で来たのだとすぐに理解した。
ただ・・・アルトが王位継承してから、一度も臣下がこんな朝早くに寝室に報告をしに来た事などなかった・・・そのことがアルトにある疑念を不安を過らせる。
「分かった・・・身支度を済ませてすぐに向かう・・・皆を謁見の間に集めておいてくれ」
「はい・・・ご命令のままに・・・・・・」
臣下はまだ息も整っていない状態ではあったが、勢いもそのままに王の命令に従い他の臣下を集めるため走って行った。
身支度を終えたアルトは見張りとして立っている兵士に会うたび挨拶をし、まだ日も登り切っていないなか、コツコツ・・・と足音を奏でながら謁見の間に向かう。
アルトが着いた時にはもうすでにアルトグラム王国の頭脳とも言える臣下たちがずらりと並び立っていた。
その列を横目に見ながら、アルトは真っ直ぐ進み玉座まで歩みを進めると、ゆっくり腰を下ろす。
そして寝室に報告に来た臣下の一人であるテイルの方に目を向ける。
「では・・・テイルよ。報告を聞こう・・・皆にも聞こえるように少し大きめで頼む」
「はい・・・昨日、冒険者ギルドマスターより連絡があり、オークキングではなく・・・実際はオークエンペラーが出現していたようです。ただ・・・すでに討伐依頼を受けた冒険者によって、倒されています。斥候部隊のセルーンが同行していたとの連絡も受けているので・・・真実かと」
「オークエンペラーだと・・・。にわかには信じがたいがあのセルーンが同行しているのならば・・・信じるほかないか・・・」
テイルの報告を受けたアルトはまだ完全には信じることが出来ずにいた・・・なぜなら【オークエンペラー】とは災害と呼ぶに等しいものだからだ。
魔物を強さでランク分けすると、ドラゴンなどと同じ災害レベル・・・ただドラゴンの場合は上位種になればなるほど知性があるため、自分よりも弱い生物を相手になどせずに悠々自適の生活を楽しんでいたりするので災害とはいえ、被害はほぼない。
だが、オークエンペラーの場合は同じ災害レベルだとしても意味合いが違ってくる。
そもそもオーク種は自分よりも弱い種族を嬲り殺すことが大好物な種族である。
そのため防衛力が低い辺境の村や町が襲われた場合は言葉にすることも出来ないような惨たらしい光景になることも・・・。
オーク種の最上位種であるオークエンペラーはオークを統率し、軍隊を作りその圧倒的な物量と自身の圧倒的な戦闘力で破壊の限りを尽くす。
ヘタをすれば、村や町ではなく国そのものが無くなってしまうほどの災害を起こしかねない魔物。
それほどの魔物であるオークエンペラーをセルーンがいたとはいえ、冒険者3人のパーティが倒したというのだ・・・すぐに信じるのには無理がある。
テイルの報告を聞いた大臣のレクメングルは手で頭を抑え、はなからそんなこと出来るはずがないと反論している。
「テイル・・・さすがにそれはセンチネルの見間違いだろう。お前もオークエンペラーがどれほど恐ろしい魔物かは分かっているだろ?」
「はい、レクメングル様・・・。ですが、センチネルからの連絡では確かにそう伺ったのですが・・・」
「オークエンペラーだぞ!我が国の精鋭部隊、規模によっては10,000人は導入しないと討伐出来ないような魔物だぞ・・・それをたった3人でなど有り得るか!!」
「分かっております・・・。センチネルの報告ではオーク50体とオークエンペラー1体だったので、討伐できたのでは・・・」
「テイル・・・お前は本当に何も分かっておらんな・・・」
レクメングルはことの重大さを理解していないテイルに呆れると、王に進言するために体の向きを変えた。
「王よ・・・私から一つ提案があるのですが・・・よろしいでしょうか?」
「レクメングル・・・良いぞ、余にその提案を言ってみよ」
「ありがとうございます・・・かの冒険者たちを城に呼んでみてはいかがでしょうか?本当にそれが出来るほどの逸材であるのか実際に会って判断するべきかと」
「うむ・・・実は余もそう思っていたところだ。レクメングルよ、あとのことは頼むぞ」
「はい、お任せください。では、テイルよ・・・早速センチネルに連絡をいれよ」
センチネルに連絡をいれるように指示されたテイルは王に一礼を済ませると謁見の間から急ぎ出て行くのであった。
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