第百九十三話 黒に染まる
お読みくださり、ありがとうございます。
緊急事態だ。
久しぶりに、筆ペンを持ったら。
自分の名前すら、書けぬ……
練習しよう。
そうしよう。
練習してみたが。
全然ダメだ。
人には。
向き不向きがある。
家族に。
代筆してもらおう……
墨が乾いてないうちに触れたのか。
手のあちこちが黒くなってる。
部屋着にもついてるよ。
洗っても、汚れは落ちない。
なんてことだ……
今度、筆ペンを使う機会があったら。
手袋をした方が。
良いかもしれぬ。
あと。
黒い服を着よう。
墨汁は。
危険物だ。
消せる筆ペンを作れ、とまでは言わんが。
汚れの落ちやすい墨汁を開発してほしい。
そう思ったら。
サクラクレパスで。
洗濯で落ちる墨液が。
製品化されていた。
自分以外にも。
ニーズはあるようだ。
ポジティブに考えよう。
筆以外の筆記具が存在する時代に。
生まれてきてよかった。
万年筆に憧れたときもあったが。
インク漏れで手を汚して以来。
使っていない。
墨とか。
インクとか。
汚れやすいモノは。
鬼門なのだ。
インク沼に。
ハマることは。
未来永劫なかろう。
消せるボールペンを愛用する身にとって。
「筆」は、高すぎるハードルだ。
「筆」と名のつくものは。
書き直しができない。
写経とか。
考えただけで、震えてくる。
その昔。
消えるインクといえば。
青紫色の。
「でんぷん」に「ヨウ素液」を入れたモノくらい。
消せるボールペン。
フリクションボール。
開発者には。
感謝しかない。
カラフルなのに。
消せちゃう。
ヘビーユーザーの知人は。
全部消したいときは。
ドライヤーをあてる、と豪語していた。
呪われてるんじゃないかと思うくらい。
書き間違いの多い身の上だ。
やり直しができるのは。
ありがたい。
「筆」には。
緊張感と。
集中力が必要だ。
自分の中で。
その二つは。
常に在庫切れだ。
筆でさらさら書ける人は。
尊敬するが。
うらやましいとは、思わない。
何にもせずに。
字が綺麗な人はいない。
習字が得意とか。
美文字とかは。
その人の努力の産物だ。
習い事か。
場数を踏むか。
その両方か。
代筆を頼めないときに備えて。
ちょっとは練習しとこう……




