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最強錬金術師の異世界開拓記  作者: 猫子
第三章

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第四十話 完全決着

「余、余が……《叡智のストラス》が敗れるなど……ば、馬鹿な……!」


 ストラスは地面に背を打ち付けた後、ぷるぷると両腕を空中のメイリーへと伸ばしていたが、すぐに糸が切れたように降ろし、そのまま白眼を剥いて動かなくなった。

 彼女のすぐ横にメイリーが降り立った。


「都市のせいでちょっと面倒だったけど、無事に終わったね」


「ああ、よくやってくれたメイリー」


 アルマはメイリーを労うように拍手をしながら、そう返した。


 そのとき、破れかぶれというふうに《悪魔の水ショゴス》が、メイリーとアルマへと向かってきた。

 巨大化していき、鬼の頭部を模したような輪郭へと変化する。


「オオ……オオオオ……オオオオオオ……!」


 鬼の口から空気が漏れ、不気味な音を漏らす。

 メイリーは素早く地面を蹴って飛び上がり、《異次元水晶(パラドクス)の鉤爪》で《悪魔の水ショゴス》を抉った。

 悪魔の優位性を《異次元水晶(パラドクス)の鉤爪》で無効化できる時点で、《悪魔の水ショゴス》などメイリーの敵ではない。


 《悪魔の水ショゴス》の鬼の表情が断末魔へと変わり、一気にその形を失っていく。

 周囲に黒い水が爆ぜる。

 メイリーは素早く飛び退き、アルマの横へと並んだ。


 丁度そのとき、ストラスが都市ズリングに掛けていた魔法、《フィールドウォール》の光の壁が薄れて消えていった。


「皆、安心せよ! 悪魔崇拝者であり、悪しき力で都市を支配していたゲルルフは、我ら《瓦礫の士》が打ち取った!」


 カラズが部下に支えられながらゲルルフの塔の目前に立ち、大声でそう宣言した。

 メイリーとストラスの戦いを遠巻きに見守っていた兵士や住民達が歓声を上げ、それは都市全体へと広がっていった。


 無論、ここまでの流れはカラズにも既に大まかには教えていたことである。

 悪魔の登場によって取り乱さず、決着がついた段階で真っ先に勝利を宣言して欲しいと伝えてあった。


「まるでボク、英雄みたいだね」


 メイリーが得意げに腕を組む。


「ゲルルフがわかりやすく悪役に徹してくれていたからな。ゲルルフへの失望、悪魔への恐怖が、そのまま《瓦礫の士》への応援と支持へとすり替わる。完璧なタイミングだろ?」


 散らばった《悪魔の水ショゴス》の色が薄くなり、空気に溶けるように消えていく。


「残念だったな、ゲルルフ。お前はここまでだ」


 アルマは消えていく《悪魔の水ショゴス》越しにゲルルフへと声を掛けた。

 そのつもりだった。

 だが、《悪魔の水ショゴス》の姿が完全に消えた後には、何も残っていなかった。


 アルマは指を噛みながら、ゲルルフの残した跡らしい血溜まりを睨み付ける。


「あいつ……やりやがったな!」


「あれ、主様……あいつは? もしかして《悪魔の水ショゴス》にわざと溶かされて、自殺した……?」


「違う! あの野郎! ストラスとメイリーに注目が集まっている間に、身体引き摺って《悪魔の水ショゴス》だけ残して俺の死角から逃げやがったんだ! まだそこまで動けたのか!」


 ゲルルフの部下も《瓦礫の士》も、ゲルルフどころではなくなっていたのだ。

 誰も彼に注意を払ってはいなかった。

 アルマからしても警戒対象は瀕死のゲルルフではなくストラスであった。

 目を離しているつもりはなかったが、《悪魔の水ショゴス》による粘体の鎧のせいで、ゲルルフの姿をしっかりと視認することができなくなっていた。

 その間にアルマの目を盗んで、死角の方角から逃げていったらしい。


「まあ、いいんじゃないの、主様。今更あいつ崇拝してる奴なんていないでしょ? 錬金術だって、悪魔の力がなかったら大したことはできないだろうし。アイテムだって、そこまで大したものは抱えてないでしょ?」


「恨み持ってる奴野放しにすると、後で何してくるかわかったもんじゃない! クソ……情報漏洩を恐れて、ここまでの流れをカラズにしか話していないのも失敗だったか。いや、リスクを考えると、そこは仕方がなかった……」


 アルマは苛立ったように、自身のこめかみを指で叩く。

 ゲルルフは《瓦礫の士》の兵も見張ってくれていると考えていたが、ストラスの出現から状況についていけずに混乱する者、恐怖のあまりに逃げ出した者、ただただストラスを茫然と見上げることしかできなかった者も多く、アルマの想定から微妙に事態がズレていたのだ。

 結果としてゲルルフへの警戒が薄くなっていた。


 ゲルルフの執念と豪運を軽視していたともいえる。

 これだけ人の目がある中で、堂々と逃げ遂せることに成功するとは。


「おい、ゲルルフを捜してくれ! 逃げたのはついさっき……奴自身、まともに歩けない状態だったはずだ! まだ近くにいる! 絶対に逃がさないでくれ!」


 アルマが大声でそう言ったとき、ゲルルフの塔の影からゴンッと鈍い音が響いた。

 ぬっとロックゴーレムが現れる。

 肩には、血塗れで気を失っているゲルルフを担いでいた。


「あっちに隠れてやり過ごそうとしてたみたいだね」


「保険でロックゴレームを多く作っておいて助かったな。部下を使ってアイテムを回収して、地下室にでも引き籠って隠れられていたかもしれん」


 アルマは安堵の息を漏らしながら、額の汗を拭った。

 新連載作、第一章完結いたしました!

 また、こちら連載一ヵ月目ですが、なんと四半期ランキング三位に入りました!

 こちらも読んでいただければ幸いです。(2021/5/29)


『大ハズレだと追放された転生重騎士はゲーム知識で無双する』

https://book1.adouzi.eu.org/n8465gx/

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― 新着の感想 ―
[良い点] まさかのゾフィーが無駄働きじゃなかった!w
[一言] ゲルルフしぶてぇな(^^) あとはアルマが、どのくらい無茶言うかやね。 スリングの尻の毛まで抜くんだろうけど、アルマさんの方に理があるからな〜(^^)
[良い点] いつ見てもメイリーちゃんのキャラが良い
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