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最強錬金術師の異世界開拓記  作者: 猫子
第三章

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第二十八話 カルペイン決着

「もう少し近づきたかったが、ここが限界のようである! しかし我が全力の一撃、とくと味わっていただくのである!」


 カルペインが《魔法袋》より、素早く二つのアイテムを取り出した。

 瓶に入った赤色の液体と、紫に輝く結晶石の破片であった。


「い、一体何を……」


 カルペインの鬼気迫る様子を見て、フランカは不安げにそう口にした。


 このとき、まだカルペインとアルマの間には十メートル以上の開きがあった。

 間にも何体ものロックゴーレムが存在する。


 とてもカルペイン単騎で何かができる状況だとは、フランカには思えなかった。

 カルペインは次の瞬間にも、ロックゴーレムに殴り殺されてもおかしくない状況なのだ。


「フ、フフフフ……知りたいのならばお教えするのである! 《ニトロスライムの濃縮ポーション》に、《ロックアイの欠片》である! どちらも簡単に大爆発を引き起こす危険な魔物の身体の一部であるが、この二つを掛け合わせればどうなるか! 見るがいい、そして恐怖するのである! 我が命を懸けた一撃を!」


「あの二つか……最悪だな。いや、ある意味悪くないチョイスだが」


 アルマが苦い表情で零す。


 《ニトロスライムの濃縮ポーション》も《ロックアイの欠片》も危険な爆薬である。

 原価に対して大きな被害を齎すことができるため、そういった点ではコストパフォーマンスがよく、マジクラの中でもよく話題に上がるアイテムであった。


 ただ、二つとも、錬金術師が扱うには大きな欠点を抱えている。

 それは両方共不安定であるため誤爆の危険性が高く、錬金素材として用いることが現実的でないことだ。

 これらのアイテムを用いて実用的な他のアイテム、たとえば爆弾を錬金しようものならば、元のアイテムより更に不安定な状態になって大事故の可能性が増すのだ。


 一応、素材次第で安定性を高めることができるが、結局そちらに苦心すれば肝心な威力が弱まったり、最終的な費用が高くなったりでアイテムの旨みを潰してしまい、これらのアイテムを採用する意味がなくなってしまうのだ。


 そういうわけで、結果的に使えそうで使えないアイテムとして名高かった。

 恐らく一番多かった使い道は、初心者プレイヤーへの悪戯目的でのプレゼントだろう。


 だが、カルペインがこの場でこの二つのアイテムを選択したことは、ある意味で悪くない行動であった。

 元々不安定で威力の高い二つの爆薬を掛け合わせることで、長所と短所を大きく伸ばしたアイテムを錬金することが可能となるのだ。


 つまり、恐ろしく不安定で恐ろしく威力の高い、加工不可能の爆薬ができあがる。

 その使用方法など一つに限られる。


 カルペインの最後の秘策。

 それはアイテムを用いた盛大な自爆であった。


「この距離で優秀な錬金術師であるアナタを仕留め切れるかはわかりませんが、一矢は報いさせていただくのである! ゲルルフ様よ! この爆発で私は証明しましょう! この私こそが、最も優れたアナタ様の弟子であったことを! さぁ、《アルケミー》!」


 カルペインは《ニトロスライムの濃縮ポーション》の中へと《ロックアイの欠片》を投入する。


 カルペインの《アルケミー》のスキルの光が二つのアイテムを包み込む。

 ニトロスライムの液体が蒸発していき、《ロックアイの欠片》が膨張して赤紫に変色していった。


 アルマは《魔法袋》から取り出していた小瓶を、傍のメイリーへと軽い動作で投げ渡した。

 中は灰色の液体に満たされている。


「メイリー、あいつに頼む」


「ん」


 メイリーは受け取ると地面を蹴って翼を用いて大きく宙返りにし、勢いをつけてカルペインへと投擲した。

 小瓶が割れ、中身の液体がカルペインの全身へと飛び散った。


「うぷっ! し、しかし、私がどうなろうとも、この《ダイナライト結晶》は止まらないのである!」


 カルペインは完成した赤紫の石を、瓶ごと地面へと叩き付けた。

 《ダイナライト結晶》は些細な衝撃で大爆発を起こす。

 本来であれば、この衝撃で爆発が巻き起こるはずであった。

 だが、《ダイナライト結晶》はただ地面を転がっただけであった。


「は、はひ……? な、何故である……私の理論に、間違いがあったはずは……」


「《不爆のポーション》だ。熱を奪いつつ魔力反応を阻害して、爆発の規模を引き下げる他、爆発物を不発に抑える効力がある。魔力含有量の低い廉価アイテムなんざ、飛沫が掛かっただけでガラクタになる。さっきも言ったが、初見殺しのクソアイテムの対策なんざとっくに終わってるんだよ。増殖系の錬金生物に爆発物なんざ、どっちもその筆頭だ」


 アルマもマジクラ時代において、この二つのアイテムには散々辛酸を舐めさせられてきた。

 上位プレイヤーの一人になった頃には、この対策はどちらも常に持ち歩くようにしていた。


「確かに急ぎの拠点だったから、この場所自体にその対策はなかった。そういう意味では結果的に狙いは悪くなかった。ただ、それでも俺相手にぶつけたいなら、三重には策を巡らせた上でやることだ。手間暇掛けてそこまでやるなら、地道に戦力を蓄えることをお勧めするがな」


 カルペインは信じられないといった表情で床へとしゃがみ込み、ぺたぺたと《ダイナライト結晶》に手を触れる。


「こ、ここ、こんなことが……! お、おお、ワ、ワンダフール……」


 カルペインの手より、《ダイナライト結晶》が床へと落ちた。

 それに合わせてカルペインは頭をぺたりと床につけ、足を礼儀正しく折り曲げる。


「降伏するのである……。私の負け……いや、最初から勝負にさえなっていなかった……。私が被害を気にせず戦えば、たとえ大都市相手であっても一人で陥落できると信じていた。しかし、まさか、こうも容易く完封されるとは……! 私の世界が、狭かったのである……」

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― 新着の感想 ―
[良い点] ヒロイン、増える……!
[一言] 錬金奴れ・・・もとい、助手その2ゲットか
[良い点] これは弟子入りなパターンかw 類友だなぁw
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