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機装少女アクセルギア  作者: 黒肯倫理教団
七章 Encounter with the cause

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98/99

98話 終結

 有希が駆け出すと、一花マザーイーターは迎え撃つように槍を構えた。その威圧感は、攻撃する余地がないのではと思わせるほどだ。

 しかし、強大な敵を相手に有希の動きは鈍らなかった。むしろ、今までよりも遥に速くなっているほどだった。

 神速の槍を突き出すと、赤い閃光が弾けた。確かな手応えと共に一花マザーイーターが弾き飛ばされる。

 砂埃が舞い上がり視界が悪くなるも、有希は槍を振るうだけで視界を晴らした。

 前方を見据える。そこにいるのは、相変わらず笑みを浮かべている一花マザーイーターの姿だった。この戦いの間、ずっと笑っていた。

 高城の言う通り、これはゲームなのだろう。一花マザーイーターにとっては単なる暇つぶしにすぎないのかもしれない。あの笑みは、そう思わせるほどに邪悪なものだった。

 チェスをするように人類を追い詰め、それを楽しんでいる。有希には、その感覚が理解できなかった。理解しようとも思わなかった。

 ただ、一つだけ分かることがある。それは、(マザーイーター)は悪であるということだった。

 ならば、自分はヒーローになればいい。背後で倒れている唯を、七海を、舞姫を。地下シェルターの皆を。全てを守れるような、理想のヒーローになれば良い。

 故に、有希は槍を振るう。いつしか一花マザーイーターの笑みは無くなり、変わりに苛立ちが現れていた。一花マザーイーターの戦闘力が高まるも、有希はそれに食らいつく。

 有希は誓ったのだ。一花に託された想いに応えると。どれだけ劣勢になろうとも、その度に有希は進化していく。

 ヒーローは人々を守るために、絶対に挫けない。それは一花の言葉だった。一花の憧れだった。一花は神速機装アクセルギアと共に、有希に希望を託した。

 だから、有希は挫けない。何があろうとも、最後まで諦めずに戦い続ける。仲間を守るために、絶対に挫けない。

 一花マザーイーターの表情が焦りに変わった。どれだけ突き放しても追い付いてくる有希に焦りを感じていた。このままでは、自分が消されかねない。

 一花マザーイーターは距離を取ると、空高く飛び上がって槍を構えた。それは、先ほど舞姫と七海が打ち倒された一撃。否、それ以上か。

 槍の先端に禍々しく赤黒い瘴気が集まっていく。一花マザーイーターの全力の一撃は、先ほどの一撃など比ではなかった。下手をすれば、世界が壊滅するかもしれない。

 そんな瘴気の塊を前に、有希は迎え撃つように槍を構えた。これが、最後になることを感じ取っていた。

 手首に付けた神速機装アクセルギアに視線を向けた。神速機装いちかはこちらにいる。

 そこで、有希は気付いた。一花マザーイーターの手首に付いた機装ギアの存在に。よく見れば、赤黒い水晶が不気味に輝いていた。

 有希は槍を突き出すように構えた。これは何度も練習を重ねて習得した、一花の攻撃の構えだった。その先端に赤い光が宿る。

 そして、有希は地を蹴った、背中の翼を展開させ、中空の一花マザーイーターに向かって飛んでいく。

 そして、槍が交差した。赤い閃光と赤黒い瘴気がぶつかり合う。空にいるというのに、余波だけで周囲の地面を破壊していた。

「ぐっ……」

 僅かに一花マザーイーターの力が上回っていた。有希は歯を食いしばるが、徐々に押されていく。

「有希!」

 声が聞こえた。見れば、地上で唯たちが有希を見守っていた。唯たちだけではない。地下シェルターでも、高城たちがその勝利を望んでいた。

 ここに来るまでに、有希は沢山の想いを託された。自分のために、唯たちが時間を稼いでくれたのだ。皆のためにも、有希は信頼に応えなければならない。

「はぁぁああああああッ」

 有希は声を上げた。その気迫に、一花マザーイーターが気圧される。僅かにだが、有希の槍が押し返し始めた。仲間を守りたい。そんな思いが有希の力となっていた。

 有希は一花マザーイーターの目を見つめる。そこには恐怖の色が見えた。有希を恐れていた。

 やがて、決着が付く。一花マザーイーターの槍が耐えきれずに折れてしまったのだ。その直後、有希は一花の手首に付いた機装ギアのようなものを切りつけた。

 手首からそれが外れ、地に落ちていった。同時に、一花の体から瘴気が離れていく。闇色の装甲が消え去ると、元の一花の姿に戻った。

 一花はそのまま意識を失ってまう。有希は落下しそうになった一花を優しく抱き留めると、地上に戻った。

 有希は一花を横たえると、最後の使命を果たしにいく。有希が視線を向けると、、そこにはすっかり力を失ってしまった原因体マザーイーターの姿があった。

 赤黒い水晶にはひびが入っており、周囲の黒い霧もほとんど残っていなかった。もはやそこには、圧倒的な強さを誇っていた姿は見る影もなかった。

 原因体マザーイーターは有希を見るなり逃げ出そうとする。しかし、神速機装アクセルギアを装着した有希からは逃れられない。

 有希は素早く回り込むと、原因体マザーイーターの赤黒い水晶を破壊した。

 戦いはここに終結した。

七章終了。

次回で最終話になります。

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