表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
機装少女アクセルギア  作者: 黒肯倫理教団
一章 The man experienced in many battles

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

9/99

9話 決意

 翌日、早朝。まだ日が昇って間もない時間ではあったが、クロエは目を覚ます。眠い目を擦りながら、枕元に置いておいた端末を手に取った。

「あと、一時間か……」

 クロエは端末に羅列された情報を見ながら、ぐっと体を伸ばした。

 未来では、今日の朝五時半頃に二回目の波が来た。そのため、今回も同じ時間帯に現れるかもしれないと思ったクロエは、2人よりも早めに起きて待機をしていた。

 クロエは寒さに震える身に鞭を打ってベッドから出ると、一花たちの方を見る。二人は仲良く身を寄せ合って寒さをしのいでいた。すーすーと寝息を立てて気持ちよさそうに眠っている。

(まだ、寝かせといてやるか……)

 気持ちよさそうに眠る二人を起こす気にはなれず、クロエはそっとしておくことを選んだ。

 クロエは端末に視線を戻す。端末内で検索をかけると、羅列された情報の中から必要なものを探し出した。

 端末に表示されたのは、未来で起きたイーターの襲撃――波についてまとめたものだった。一回の波毎に詳しく情報が並んでいるが、それも五回目からは日時と僅かなしか表示されていない。敵の攻撃が激化したために、情報を得ることは出来なかったのだ。

 一時間後に起きる波は前回と同様に犬型のイーターのみと表示されている。しかし、数は前回に比べて遙かに多く、前回のような甘いものではなかった。未来では、前回の波は地球の戦力を測るための様子見との見解だった。

 もし前回の波が様子見だった場合、次の波が未来で起きたものと異なってくる可能性がある。こちらの戦力に応じて相手がどう反応するかにもよるが、イーターがどのような思考回路を持つかも分からない以上、予想の域を出ない。

 クロエは結論に至らず、ため息を吐いた。

「あと三十分か……そろそろ起こした方が良いな」

 クロエは二人の方に行くと、まずは一花の肩を揺らす。

「おーい、一花。朝だぞー」

「うーん……」

 肩を揺らされても一花に起きる様子はなかった。

 クロエはため息を吐き、今度は七海の方へいく。

「おーい、七海。起きろー」

「すー、すー」

 肩を揺らしてみるが、一花よりも反応が薄かった。

「おーい、二人とも。起きてくれー」

 しかし、クロエの努力も空しく、二人は起きなかった。クロエはため息を吐く。

「仕方ないな……」

 そう言うと、クロエは大きく息を吸い込み、口を開いた。

「起きろおおおおお!」

「「うわあっ!」」

 二人は耳元でいきなり大きな声を出され、飛び起きた。特に、一花は驚きのあまり、ベッドから転がり落ちてしまっていた。

「やっと起きたか……」

「ん、朝か……おはよう」

 眠い目をこすりながら七海が言う。

 ちなみに、一花はというと「つ、冷たい! 床が氷みたいに冷たいよ!」と体を震わせながらベッドに戻っていく。

「はあ、あったかい……すやすや」

「寝るなー! というか、すやすやって自分で言ってどうする!」

 朝からツッコミ役はフル稼働をさせられていた。

 一花をどうにか起こすと、クロエは説明を始める。

「こんな朝早くに起こした理由は他でもない。後少しで波が来るからだ」

 その言葉を聞いて二人は震える。一花のソレは武者震いの類だが、七海のソレは恐怖から来ている。

 前回の波で余裕のあった一花はゲームをやっているのに近い感覚でやっていたのだが、七海のこともあってその恐ろしさを知り、真面目に、しかし怯えずに構える。

 対して、前回の波で命の危険があった七海は、波が来ると聞いて怯える。だが、自分はブレイクギアという力を持っている。その力に対する責任感から七海は恐怖を無理やり抑え、戦うことを決意する。

 前回の波と比べて、二人の目から強い意志が感じ取れた。波の後に自問自答を繰り返した末の決意は、クロエに伝わる。

 それがクロエには嬉しくもあり、申し訳なくも思った。もう少し未来で研究を進めることが出来れば、適正などを関係なくギアを装備させることが出来ただろう。事実、後一ヶ月あればその機能は完成していた。そしてもう一ヶ月あればギアを量産化出来た。

 そうすれば、二人のような少女に頼まずとも、軍隊に配備すれば波も容易に退けられるし、二人に背負わせることもなかっただろう。

 そんなクロエの心情を察したのか、一花はクロエの目を見つめて頷く。そしてリュックからバナナを取り出すと、クロエに差し出した。

 クロエはバナナを受け取り、首を傾げる。意志が通じ合ったと思っていたクロエだったが、突然バナナを差し出されてきょとんとする。

「おなか減ってるんだよね?」

 一花の言葉にクロエがひっくり返る。そんなクロエには目もくれず、一花は内心で(クロエの心の中を読みとっちゃう私すごい!)とはしゃいでいる。

「はあ、まあ良いか。そろそろ行くぞ」

 二人とクロエは準備を終えると、町へ向かう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ