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機装少女アクセルギア  作者: 黒肯倫理教団
二章 The girl who denies fate

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21話 隣町

 支度を終えた一花と七海は千尋の元に来ていた。

「あのさ、この後みんなで……」

「もちろん行きます!」

 即答だった。それも、七海の言葉を最後まで聞かずに。驚く二人にを気にせず、千尋は行動を開始する。

「では、急いで準備してきますね!」

 そう言うと、千尋は仮設住宅の中に文字通り飛び込んでいった。ドタバタと慌ただしい音が聞こえてきて、二人は目を合わせて苦笑いした。

「お待たせしました!」

 少しして千尋が飛び出してきた。その額にはうっすらと汗が滲んでいた。しかし、その服装はしっかりと整っており、慌てて着替えたとは思えない様子に二人は感嘆のため息を出した。

「じゃあ、行こっか」

「うん!」

「はい!」

 三人は歩き始める。

「じゃあ、まずは服でも見にいこう! どこのお店がいいかな?」

「いつもの場所は事件のせいで行けませんし……」

「う、うん。そうだね」

 七海が慌てて頷く。千尋はイーターを見はしたが、ギアについては知らない。不意に口から漏らしてしまう可能性もあるため、気を付けなければと七海は考えた。

「そういえば、この間の事件はどうなったんでしょうか? 恐ろしい化け物がいたと思うんですが……」

「さ、さあ。どうなんだろうね」

「それ、実はわたしたちがふぐっ!」

 自慢げに語ろうとした一花の口を七海が手で覆って押さえつけた。

「むぐー! むぐむぐー!」

 むぐむぐとまだ喋ろうとしていたが、少ししてギアについて口外してはいけないことに気付き、喋るのを止めた。それを見て、七海も手を退かした。

「ぷはっ」

 息が苦しかったらしく、一花は大げさに呼吸をする。

「わたしたちが、どうかしたんですか?」

 千尋が上品に首を傾げながら尋ねる。七海は誤魔化す方法を探す。

「わ、私たちが見に行ったんだけど、自衛隊の人たちが居て見れなかったんだよね?」

「自衛隊じゃなくて異変調査部隊だよ?」

 一花が七海のフォローを見事に打ち砕く。七海がやっちゃったと言わんばかりの表情でうなだれる。一花はその意味が分からずに少し考え、はっとなる。

「異変調査部隊……って何ですか?」

 千尋が訝しそうな目で二人を見る。

「や、やだなぁ一花。それはゲームの話でしょ?」

「えっ? そんなこと……あ、う、うん。そうだよ!」

 一花が正直に答えようとするが、七海の目線に気が付いて修正する。無論、嘘を付いているのはバレバレなのだが。

 いよいよ苦しくなってきて、二人は焦る。恐る恐る千尋の方を見ると、千尋はやれやれと肩を竦めた。

「何か、言い辛いことなんですね。なら、仕方ないですけれど、余計な詮索は止めにしますね」

 そう言って千尋は少し悲しそうに笑ってみせた。それを見て、二人はほっとすると同時に罪悪感を感じた。

「うん、ごめんね……」

 一花がしょんぼりと落ち込みながら言う。それを見た千尋がくすりと小さく笑った。その笑みはいつもの明るく品のある笑みだった。

「誰にでも言い辛いことはありますから、気にしないでください。私にだって、言えないことの一つや二つくらいあるんですから」

 そう言って千尋は頬を赤く染めながら一花を見る。一花はその視線の意味が分からずに首を傾げている。七海はその熱っぽい視線を見て、しかし気には留めなかった。

(いつもながら、あからさますぎる……)

 むしろ呆れていた。本人は気付かれていないと思っているようだし、その対象である一花も気付いていないのだから仕方ないのかもしれない。しかし、七海を含め、他の友達や知り合いは皆が気付いているほどに分かり易かった。

「よくわからないけど……それより、早く行こうよ!」

「はい!」

 呆れる七海を余所に、二人は歩き始めた。七海も慌てて後を追う。

 そこからしばらく歩き、駅の方に着いた。駅とはいっても、いつも三人で出かけている駅は異変調査部隊によって封鎖されている。今回来たのは隣町の方の駅だ。

「はー、すごい人がいるね」

 七海が呟いた。隣町の駅は何度か来たことがあるが、それでもこんなに人がいた記憶はなかった。しかも団体で行動する人も多く、その手にはカメラが握られていた。

「なんかの観光かな?」

「さあ? でも、この辺りに観光名所なんて無いよね?」

「何か、新名所でもできたのでしょうか?」

 疑問に思うが、特に気になるほどのことでもないため、三人はそのまま歩いていく。

 駅は賑やかで、活気に溢れていた。デパートからアミューズメントまで様々な店があり、いかにも都会、といった賑わいを見せていた。

「あっ! あのお店ってもしかして……」

 一花が突然立ち止まり、声を上げた。その視線の先にはファッションショップがあった。

「ユニシロだ!」

「こんなところにあったんですね」

「うん、知らなかったよ」

 そう言って、一花が嬉しそうに笑う。ユニシロの服は一花好みの可愛い服が多い。かといって子ども向けというわけではなく、幅広い年齢を対象にしたファッションショップである。

 有名なファッションショップのユニシロを見つけ、三人は嬉々として入店した。


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