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【コミカライズ企画進行中】学園のマドンナの渡辺さんが、なぜか毎週予定を聞いてくる  作者: まるせい
二章

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第65話 学園のマドンナは「カワハギですか?」と質問をする

 相沢に打ち明けた日の夜、一本の電話が掛かってきた。


「ん? 富田さん? 珍しいな」


 釣り場で知り合った中年の男の人で、釣りが上手く、釣り場の情報や安い餌の仕込み方など色々と教えてもらうことがある。


 奥さんと小さな子どもがいるらしく、この時間は一家団欒をしているので繋がらないはず。


「もしもし、相川ですが?」


 ひとまず電話に出てみる。


『おっ、繋がった。良かったよ』


 通話口の先から明るい声がした。どこかホッとしたようなニュアンスを含んでおり、彼にとって不都合な事態が発生したのではないかと想像する。


「どうしたんですか?」


 想定できる彼に取っての不都合を頭に思い浮かべながら質問する。

 限定販売のルアーを代わりに買ってきて欲しいとかだろうか?



『相川君、今度学校の友だちとカワハギ釣りするって言ってたよな?』


 ところが、彼は予想外にも質問を返してきた。


「ええ、言いましたね」


 つい先日、堤防で一緒した際「学校の友人とカワハギを釣りに行く予定」と口にしていた。それをどうやら覚えていたようだ。


『実は、今週末船釣りを予約してたんだけど、カミさんの実家に行かなくちゃならなくなって……』


 なんでも、二人目が生まれるらしくその前に事前準備をしないといけないのだと説明を受ける。


『今からだとキャンセル代がかかるし、それならいっそ相川君に利用してもらった方がいいかと思って』


 そんな彼からの提案は、船代を持つから船釣りに行かないかというものだった。


「良いんですか?」


 船賃というのは高校生にとって支払うのが痛いかなりの高額になる。

 そんな船釣りを譲ってくれるというのは嬉しすぎる。


『竿は自分たちでレンタルしてもらうことになるぞ?』


「全然大丈夫です! ありがとうございます!」


 そのくらいなら皆出せるだろう。何より最初の釣りで釣れる場所に連れて行けるのはでかい。


『それじゃあ、こっちの方で連絡入れておくから当日は頼んだよ!』


 富田さんはそういうと通話を切った。

 しばらくして、頼んでいた釣り船の詳細がおくられてくる。


「これは面白いことになったぞ」


 口元にスマホを当てると、俺はニヤリと笑うのだった。








「週末の釣りなんだけど、ちょっと場所を変更してもいいだろうか?」


 翌日の昼食時になり、俺は釣りに行くメンバーを集めるとそう話を切り出した。


「元々、相川っちに任せてたから、私は問題ないよ」


「俺も問題ない」


「私もありません」


「構わないわよ」


 沢口さん・相沢・渡辺さん・石川さんの四人とも承諾してくれる。元々は俺に任せていたのでスムーズに了承をとれた。


「それにしても、急に場所を変更するということは、何か良い情報でも得られたのでしょうか?」


 渡辺さんは弁当箱に箸を置きながらじっと俺を見てくる。

 彼女だけは元の釣り先を知っているので、気になったのか聞いてきた。


「実は、知り合いに予定ができて、船釣りを譲ってもらったんだ」


 俺は興奮を抑えきれずに皆に向かって説明をする。


「相川っちってそういうの多くない!?」


 沢口さんが驚いてそんなことを言った。


「確かに、この前のグランピングとかもそうだけど、結構な金額するのに譲ってもらえるなんて凄いじゃん?」


 石川さんがそれに同意する。


「社会人は急に予定が入ることが多いからね」


 うちの父親もそうだが、仕事の予定は急に入ってくるらしくいつも忙しそうにしている。

 そして大抵はキャンセルをすることになるのだが、前日のキャンセルではお金が戻ってこないことがほとんどなのだ。


「学生の方が急な都合がつきやすいと思ってるのか、結構声を掛けてくれることは多いよ」


 今回ほどではないが、船釣りの権利を譲ってもらったことは何度かある。


 俺がそう説明をすると……。


「まあ、相川は人たらしだからな」


 なぜか相沢がそんなことを言い出した。ニヤリと笑っている。


「言い方に妙に含むものを感じるんだが……?」


 俺が睨んでいると……。


「確かに、相川は人の話を聞くのが得意そうだし、年上に好かれるタイプかもしれないね」


 石川さんが急に褒めてくれた。

 彼女からそのような言葉をもらえるとは思っておらずビックリする。


「それで、相川君。狙いは変わらずカワハギなのですか?」


 渡辺さんはターゲットとなる魚種が変わることを気にして質問をしてきた。

 おそらく、対象魚種が変わる場合に備えて予習をしたいのだろう。


「それについてはあらかじめ相談していたこともあってカワハギのままだよ」



 俺が返事をすると、


「そうですか、それは楽しみですね」


 渡辺さんは柔らかく微笑むと弁当を食べ始めた。以前食べたカワハギの味を思い出しているに違いない。


「朝早くから船に乗って、午前中釣りをして昼に港に戻るって感じになるけど良いよね?」


 俺は皆に最終確認をすると、


「異議なし!」


「問題ないぜ!」


「大丈夫です」


「……起きれれば」


 若干一名不安そうだが問題ないということにしておく。


「それじゃあ、集合場所については後でLINEで送るから、前日は酔い止め飲んで夜更かししないようにね」


 皆楽しみそうな顔をしている。

 俺は今から釣れる魚の姿を想像すると、とてもワクワクするのだった。


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