表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
逆行の劉備 ~徐州からやりなおす季漢帝国~  作者: 青雲あゆむ
第3章 荊州攻略編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

23/67

14.夏口城、陥落

建安3年(198年)7月 揚州 廬江郡 尋陽じんよう


 俺が荊州に兵を出し、さらに張羨ちょうせんが反乱を起こした結果、劉表は3方向に敵を抱えることになった。

 南陽郡の曹操、江夏郡の俺、そして長沙郡の張羨だ。

 さらに零陵郡と桂陽郡も、張羨に同調しているという。


 さすがにここまで来ると、劉表も身動きが取れなくなる。

 結局、どこにも増援が出せず、現地の勢力は孤立した。

 俺はこれ幸いとばかりに張遼を増援に出し、さらに江夏郡で噂をばらまいた。


”朝廷に逆らった劉表には、朝敵として討伐命令が出た。しかも劉表は3方に敵を抱えているので、増援は出せない。江夏郡は見捨てられる”


 てな具合である。

 実際には劉表はまだ、朝敵あつかいまではされてない。

 しかし劉表は天子さまが許都に遷都してから、朝廷に税(職貢)を納めなくなっている。


 さらに天子のみが主催できる儀式を行うなど、皇帝の座を狙っている節もあるという。

 まあ、劉表は俺と違って、前漢の景帝の4男 魯恭王ろきょうおう 劉余りゅうよの末裔という、立派な家系を持っているからな。

 首都を捨てたような天子さまを、敬えなくなったとしても不思議はない。


 いずれにしろこのネタを使って、俺たちは劉表陣営の士気低下に勤しんだ。

 さらに張遼の軍勢が加わり、関羽も奮起したのだろう。

 夏口城に猛攻撃を掛けたおかげで、とうとう黄祖が降伏したそうだ。


 さすがは関羽、頼りになる男である。

 ここは一気に、江夏郡を制圧してもらおう。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


建安3年(198年)8月 荊州 江夏郡 夏口かこう


「よう、関羽。制圧は順調か?」

「はい、劉備さま。ここが落ちてからは、続々と我らが軍門に降っております。例の噂が、よく効いているようですな」

「そうか、それは良かった」


 江夏郡の情勢が落ち着いたので、俺は夏口城を訪れていた。

 そこでは総大将の関羽が、にこやかに出迎えてくれる。


「そういえば、例のヤツは見つかったか?」

「はい、一応、見つけ出して、声は掛けてあります。しかし仕えるかどうかは、劉備さまに会って判断したいと申しておりますな」

「そうか。じゃあ、呼んでもらえるか」

「かしこまりました」


 しばし待っていると、薄汚ない偉丈夫が現れた。


「俺が甘寧かんねい 興覇こうはだ」

「おい、無礼だぞ、貴様」

「いいって、関羽。ようやく会えたな。俺が劉備 玄徳だ」


 関羽が無礼な態度をとがめたが、俺は気にならなかった。

 なぜなら目の前の男は甘寧 興覇。

 前生の孫呉で、一、二を争ったほどの猛将だ。

 たしか黄祖の下にいたと思ったので、関羽に探して勧誘するよう、言ってあったのだ。


「何歳だ?」

「……25になる」

「ほう、いい面構えだな。それに腕っぷしには自信がありそうだ」

「ヘへっ、まあな」


 俺がちょっと持ち上げると、甘寧は得意そうな顔をする。

 実際、甘寧の身体は筋骨隆々で、かなり強そうだ。

 聞けば益州は巴郡はぐんの生まれで、一時は官吏として働いたこともあるが、すぐに辞めてしまったそうだ。


 その後はチンピラみたいなことをやっていて、やがて荊州の南陽郡へ流れてきた。

 祖先が南陽に住んでたらしいな。

 そこでもヤンチャをしていたが、張繍が攻めてきたりして、物騒になったので、江東へ移ろうとしたそうだ。


 しかし夏口では黄祖が陣取っており、甘寧の通過を許さなかった。

 なまじ数百人もの手下を連れていたおかげで、引っかかったようだ。

 そこでやむなく黄祖の下で働いていたが、重用もされずに腐っていたというわけである。


「そうか。それじゃあ元々、俺に興味があったんだな? 実際に会った感想はどうだ?」

「まだ分かんねえよ。だけど、あまりうるさいことを言わないのは気に入った。それに徐州だけでなく、九江や廬江、そしてこの江夏郡まで制圧した手腕は、見事なもんだと思う。できれば俺を、使ってほしい」

「いいだろう。期待しているぞ、甘寧」

「ああ、がんばるよ。いや、がんばります」


 俺が採用を伝えると、甘寧は嬉しそうに笑って、さっそく言葉遣いも直そうとしていた。

 これでまた1人、頼りがいのある武将が増えた。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


建安3年(198年)9月 荊州 江夏郡 夏口


 江夏郡の制圧が進むのと並行して、曹操が南陽郡を制圧しつつあるそうだ。

 最初はえんにこもった張繍ちょうしゅうに手を焼いていたが、俺の侵攻に加え、張羨ちょうせんたちが反乱を起こした。

 これによって劉表は、張繍への支援がほぼできなくなった。


 それを察した曹操が、南陽郡にその噂をばらまいたそうだ。

 これによって続々と周辺豪族が帰順してきて、宛城の中でも士気が低下した。

 さらにあれこれと圧力を掛けた結果、とうとう張繍も降伏したんだとか。


 その条件のひとつとして、以前の戦闘での責任を問わないというものがあった。

 曹操も腹心の部下や息子まで殺されて、はらわたが煮えくり返っていただろうが、ちゃんと約束は守ったらしい。

 まあ、前生でも曹操は張繍を許してたんだから、それも不思議ではない。


 それにしても、これで賈詡かくが曹操の配下になっちまうんだよな。

 たしか賈詡ってのは、すげえ優秀な人材らしいから、曹操の力がまた強くなっちまう。

 とはいえ、それを止める手立てはないから、俺は俺で優秀な人材を配下にして、陣営を強化するしかないな。


 そう思って、いろいろ探してみたんだが……


「え、黄忠こうちゅうって長沙にいないの? 魏延ぎえん伊籍いせきも見つからない?」

「はい、おそらく南郡か南陽郡にいるのだと思われます」


 ガーン、めぼしい人材がいない。

 正確に言うと、俺の支配地にはいないのだ。

 たしかに前生で荊州を支配したのは、10年以上先の話だからなぁ。


 ちなみに前生で役立ってくれた馬良ばりょう劉巴りゅうは蔣琬しょうえんとかは、ようやく10歳を超えたぐらいだ。

 仮に見つけたとしても、幼すぎてとても雇えないよ。

 トホホ、南郡を制圧するまで、人材採用はお預けだな。


 かといって、すぐに南郡に攻めこむわけにもいかない。

 この江夏郡は制圧したばかりで、まだまだ不安定だからな。

 本拠地の徐州だって空にできないし、しばらくは統治に専念して、機会をうかがおうかね。

とりあえず甘寧をゲットしました。

実際に彼がこの時期に夏口にいたかは微妙ですが、劉備の噂を聞いて動いてたってことで。

その他の人材はまだしばらくお預けです。w

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
孫呉が好きな方は、こちらもどうぞ。

それゆけ、孫策クン! ~転生者がぬりかえる三国志世界~

孫策に現代人が転生して、新たな歴史を作るお話です。

― 新着の感想 ―
[一言] >>え、黄忠って長沙にいないの? 魏延や伊籍も見つからない? 魏延はわりと益州に居たりするし(ゲーム知識)、 黄忠も「大陸北部(河北省)の代々の城主の親族」とかいう設定の時もあるから(無印…
[一言] 太史慈と甘寧がいない呉なんて余裕じゃないか(笑)
[良い点] 張遼、太史慈、甘寧を採用して、史実より武官の層が厚くなった上に、将来の魏呉の猛将を減らしたのは大きいですね。曹操が正攻法で来ても、既に簡単には敗れなくなっているでしょう。 [一言] 勢力拡…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ