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逆行の劉備 ~徐州からやりなおす季漢帝国~  作者: 青雲あゆむ
第2章 揚州攻略編

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幕間: 劉備の妻たち

劉備の家族関係を明らかにするため、書いてみました。

ちなみに夫人の名前は記録に残ってないので、勝手につけてます。

(正妻においては名字すら不明)

【楊夫人】


 私の名は楊梓涵よう しかん

 徐州牧 劉備さまに嫁いだ、楊家の女です。


 旦那さまとは10年ほど前に知り合い、いつの間にか男と女の関係になっていました。

 最初はお役人だからと安心していたのに、あの宿六やどろくが。

 短気を起こしては、簡単に仕事を放り出してしまうのです。

 それも何度も。(怒)


 その度に収入を失い、苦労をさせられました。

 しかし私も惚れた弱み。

 かわいい阿斗あともいるために、長年つれそってきました。


 時には戦場を移動することもあり、とても怖い思いをしたこともありました。

 しかしそれも最近になって、大きく報われたのです。

 なんと旦那さまが、徐州の牧になられたのですよ。


 あのこらしょうなしの宿六が、ずいぶんと出世したものです。

 しかしそのすぐ後に、私は異変に気がつきました。

 旦那さまが異様に優しいのです。


 今までは、”女なんて、黙って言うことを聞いていればいい”、とでもいう態度だったのが。


”今日は元気にしているか?”

”いつも忙しくて、あまり話をできずに悪いな”

”うん、今日もご飯が美味い。いつもありがとうな”


 なんてことを臆面もなく言ってくれるようになったのです。

 最初は夢でも見ているのかと思いました。

 おまけに、夜のあっちの方まで上手になって。(赤面)


 ひょっとして何かの気まぐれで、そのうち収まるかと思ってましたが、いまだに変わりません。

 逆に気の病か何かではないかと不安になり、私は思いきって訊ねたのです。

 ”何か変わったことでもあったのですか?”、と。


 すると旦那さまは、最初おどろいていましたが、やがて恥ずかしそうに打ち明けてくれました。


「こんなことを言うのは恥ずかしいんだけどな、実は不思議な夢を見たんだ。それは――」


 その夢の中で旦那さまは、30年ほど先まで生きて、辺境に独立勢力を打ち立てたと言うのです。

 しかしそれまでの過程でもいろんな失敗をし、最後も失意のうちに倒れたそうです。

 それは夢というにはあまりに生々しく、とても忘れることはできないほどだとか。


 旦那さまはその夢を、自身のあったかもしれない未来と受け止めたそうです。

 そしてそんな失敗を繰り返さないため、必死に努力しているのだと。


「そんなわけで、俺は別に頭がおかしくなったとか、そんなことじゃないんだ。ただ少し不思議な経験をしたおかげで、謙虚になったというか、優しくできるようになったんだな。もちろん、根は変わってねえから、今後も失敗はするだろう。だけどこれからは大事にするから、俺についてきてくれねえか? 俺にはお前が必要なんだ」

「……はい、喜んで」


 私は今まで生きてきて、あんなに嬉しかったことはありません。

 旦那さまは私を必要としてくれている。

 一生、ついていきます、あなた。



 その後、旦那さまの奮闘により、徐州の治安が落ち着いてきました。

 実は徐州には、様々な問題があったにもかかわらず、それをひとつひとつ片付けてきたそうです。

 その間には呂布という無法者が旦那さまを人質に取ろうとしたり、袁術という軍閥が攻めてきたりもしました。


 しかし旦那さまは毅然としてそれに立ち向かい、見事に切り抜けてきたんだとか。

 おかげでしばらくは静かになると思っていたのですが。


「え、正式に鎮東将軍になったのですか? しかも徐州牧も?」

「ああ、今までは正式に朝廷からは認められてなかったからな。だけど揚州の平定に貢献したってんで、詔勅をたまわったんだ。これで俺も、誰はばかることなく徐州牧を名乗れるぜ」

「……それは、おめでとうございます」


 しばらく東城へ行っていたと思ったら、その間に袁術を討伐し、さらに揚州全体の平定にも貢献したそうです。

 おかげで今は徐州のみならず揚州の2郡を支配し、正式な官職まで賜ったとか。

 ああ、なんてことでしょう。


 私は徐州が平和なら、それでいいと思っていたのに。

 旦那さまが出世するのは嬉しいけれど、あまり危険なことはしてほしくありません。

 しかしそれは私の我がままなのでしょうね。


 私は気を落ち着けるために、息子の阿斗に話しかけます。


「阿斗や。お父さまが手柄を立てて、正式な将軍になったそうですよ」

「え~、本当? 父上はすごいのですね」

「ええ、お父さまは凄いのですよ。あなたもその名に恥じないよう、勉強や鍛錬を怠ってはなりませんよ」

「うん、ぼく、がんばる!」


 子供は単純でいいですね。

 彼は今年10歳になったので、旦那さまから劉封りゅうほうの名を贈られました。

 旦那さまの跡継ぎとして、立派に成長してほしいものです。


 そして私ものんびりはしていられません。

 おそらく旦那さまは、今後も勢力を拡大するような気がします。

 ならば私は大領の支配者の妻として、家内を仕切る必要がでてくるでしょう。


 旦那さまのため、そして阿斗のためにも、私はがんばりますわよ。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


【糜夫人】


 私の名は糜若汐び じゃくせき

 今は劉備さまの第2夫人である、糜家の娘です。


 旦那さまのことは2年ほど前から知っていましたが、昨年、急に輿入れすることとなりました。

 その陰には兄の強い後押しがあり、持参金という名の資金を提供するための、名目として嫁いだのです。

 おそらく我が糜家に、旦那さまを繋ぎ止める狙いもあるのでしょう。


 旦那さまにはすでに楊夫人という正妻がいたので、あまり気乗りはしませんでした。

 しかし”劉備さまはこれからもっと大きくなるのだから、側室が必要だ”、という兄の主張が容れられ、私は第2夫人となったのです。


 そんな私を、旦那さまは温かく迎えてくれました。

 それどころか楊夫人も私を邪険にすることなく、普通に接してくれます。

 おかげで当初、心配していたような確執もなく、穏やかにいられるのです。


 もちろん、正妻の楊夫人のことは、しっかり敬っています。

 楊夫人は素敵な方ですし、嫡男の阿斗ちゃんも産んでおられるのですから。

 阿斗ちゃんは元気で、かわいらしいお子さんです。


 私も早く旦那さまの子供が、欲しくなってしまうほど。

 でもこういうことは焦っても仕方ありませんからね。

 すでに嫡男がいるのですから、私は女の子でも授かりたいものです。


 そんなある日、お兄さまから言われました。


「若汐。元気にしているか?」

「はい、お兄さま。急にどうしたのですか?」

「うむ、実は劉備さまが、揚州の九江と廬江を制圧したのだ」

「まあ、そうなのですか。めでたいですわね」

「うむ、めでたい。しかし劉備さまは、これぐらいで終わる方ではない。もっと大きくなるだろう」

「そうなのですか?」

「ああ、私はそう睨んでいる。そうなるといずれ、婚姻政策というものも、必要になってくるだろう」


 ああ、そういうことですか。

 私にもっと、子作りに励めと。

 しかしこればかりは、思いどおりになりませんからねえ。

 まあ、お兄さまもそんなことはご承知でしょうから、前向きに答えておきましょう。


「分かりました。今後は一層、旦那さまに尽くすよう、心がけますわ」

「うむ、それがよいだろう」


 そう言うと、お兄さまはいそいそと去っていかれた。

 わざわざそんなことを言うために、会いにきてくれたようですね。

 そうやって圧力を掛けられるのも、ちょっと辛いのですけど。


 まあ、私も糜家の女です。

 旦那さまのため、そして実家のため、できることをしていきましょう。

楊夫人とは185年ぐらいに結婚して、10歳の子供がいるという設定です。

史実では徐州を失った後の混乱で、2人は亡くなったと想定。

その時の罪ほろぼしとして、劉備は楊夫人に目一杯やさしくしてます。

おかげで195年ぐらいに妾になったはずの甘夫人はおらず、劉禅も生まれません。

阿斗は劉禅の幼名ですが、実は最初の子供も同じ幼名を使っていたとしました。

そして前生の養子だった劉封を思い、その名を嫡男に贈ったと。


それから糜夫人は、予想以上に優秀な劉備に対して、持参金名目で糜竺が妹を押しつけたという設定にしました。

今後はこの2人の夫人を中心に、劉備の家族が形成されていく予定です。

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