27.防波堤
レオノアは自分が考えているよりも大騒ぎになっていて首を傾げていた。サルバトーレからは褒められたし、一応カイルからも褒められた。それでもまだ実用には至らないという。しかし、様々なことに影響があるのだと説明は受けているので黙っている。
(なんかご褒美でお金をたくさんもらえるということでしたけど)
色んなものを作るのにはそれなりに金がかかる。なので、それ自体はありがたい。けれど、レオノアはあくまでも家族と頻繁に会いたくて作ったものだ。目的が果たせないというのはちょっと不満である。
サミュエルはそんなレオノアを見ながら苦笑する。彼だって、レオノアの思うまま作らせ、それを活用させてやりたい。だが、今回は国も大きく動いている。今、レオノアが設計図を描いているものも含めて考えるとそれが及ぼす経済効果は非常に大きなものとなる。彼女自身に権力などへの興味がなくとも、国に縛り付けてもっと新たなものを作り出してほしいと思われても仕方がないことだろう。
(今はカイル殿下が防波堤になってくださっているが……)
ロンゴディア王国の先人が赤色の魔法使いの家系に侯爵位を与えていたのは逃がさないためだったのだろう。当の本人は「こんなに高い爵位はいらない。面倒で仕方がないわ。研究だけさせてくれないかしら」と言っていたという記録もある。
責任感で縛り付けていたのに、追い出してどこへ行くのも自由なレオノアを生み出してしまった。今更、彼女が貴族社会でストレスなく生きられるかを考えると首を横に振るしかない。
(かといって野放しにもしておけない。だから、上では議論が紛糾している)
そんなことを全く気にせずにとりあえずは精神異常を治すためのポーションを作るための資料を集め始めたレオノアを見つめる。レオノアのためになにができるだろうか。サミュエルはそんなことを考える。
「……彼女ではなく、俺が功績を上げる、とかか?」
しかし、何で功績を上げるのか、を考えると難しいような気がした。
サミュエル自身の能力はあくまでも魔物や動物を使役するというものだ。役に立つ能力ではあるし、使い方によっては脅威にもなるかもしれない。だが、サミュエルは友と呼べる彼らのことを戦い等で傷つけたくはなかったし、一度人の味を覚えてしまえば人を餌として認識してしまうような魔物も少なくない。そうなれば、殺されてしまう。自分が『そう』運用したせいで、殺される。それは、避けたいことだった。そもそも、そんなことをして功績を上げたところで、レオノアは喜ばないだろう。
「サミュエル、どうかしたの?」
「……いや、いろいろと面倒なことが起こっているな、と思っただけだよ」
「そうねぇ。私は暮らしに困らずゆっくり研究できればそれでいいのに。次は逃走じゃなくて、普通に旅なんかもしてみたいし」
「旅?君、そういうの興味あったんだ」
「だって、他の国や地域にある素材とか直接見に行ってみたいじゃない」
あっけらかんとそう言うレオノアに「君って子は……」とサミュエルは呆れたように言う。
「きっと、その隣にあなたがいればもっと楽しいでしょうね」
「俺を弄んで楽しいかレオノア」
咄嗟に出た声は重い。
サミュエルの言葉に「弄ぶ、とは……?」という背景に宇宙を背負ったレオノア。彼女の様子を見ながら、無意識にでも一緒に居たいと思っているだけでもよしとすることにした。
「素直な感想を言っただけなのに」
「無意識なのがタチ悪い」
サミュエルの言葉に、レオノアは不服そうに頬を膨らませた。
「鈍いのはあなたも同じじゃないかしら」
「……今、何か言ったか?」
聞こえなかったのか、不思議そうな顔をするサミュエルに「何でもないわ」と言ってぷいとそっぽを向いた。そして、そんな彼女に、サミュエルは愛し気な視線を向けていた。
相変わらず、すれ違っていた。
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