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アプリ『異世界ポイント』で楽しいポイント生活 ~溜めたポイントは現実でお金や様々な特典に交換出来ます~  作者: よっしゃあっ!
第三章

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82/123

82.EXステージ5 その1


 視界が晴れると、そこに闘技場風のフィールドが広がっていた。

 ボスクエストの時に似てるな。

 闘技場の中心には、四体の魔女の眷属たちが居る。


『ヨウコソ』


 呪い人形が声を上げる。

 すぐに戦闘態勢になるが、呪い人形たちは動かない。

 ……すぐに戦うって訳じゃないのか。

 ただ俺が武器を構えた瞬間、呪い人形たちからどこか嬉しそうな雰囲気が伝わってきた。


『良イ判断。ソレデコソ、私タチノ主ニ相応シイ』

「お前が言ってた、また後で(・・・・)ってのはこのことか」

『ウン。私タチハ、貴方ヲ認メタ。ダカラ――試練ヲ破ッテ真ノ主ニナッテ欲シイ』

「真の主、ね……」


 タイトルも『真の主に至るための試練』って表示されてたな。

 今までも力を貸してくれていたが、それはあくまでも前の所有者――魔女からの借り物ってことか。

 勝利条件は魔女の眷属たちを全て撃破すること。


「お前たちに戦って勝てってことだよな? すぐに戦わないってことは何か条件(ルール)があるのか?」

『ウン。ルール、説明スル』


 呪い人形がステージのルールを説明する。


・戦闘方法は一対一。他の眷属は手を出さない

・一体を倒すと、また次の眷属と勝負

・それを繰り返し、四体全てを倒せばクリア


「一対一……だからカードが使用不可って条件あったのか」

『ウン。試練ハ主シカ受ケラレナイ。ア、デモ観戦ハ出来ルヨ』


 呪い人形が手を上げる。

 すると、闘技場の観客席に雷蔵たちが出現した。


「ウガァ?」

「ウッキィ?」

「どこ、ここ? ……あ、りゅーぅだ。りゅーぅ~」

 

 俺に気付いたセイランが手を振ってくる。

 俺が手を振り返すと、笑みを浮かべた。……可愛い。

 夜空も必死に手を振ってくる。

 雷蔵は武器を取り出して、壁を壊そうとしているようだ。


『声ハ聞コエルケド、『バフ』ハ届カナイ』

「そりゃ残念だ」


 まあ、そうだろうな。

 サポートが出来るんなら、観客なんてそもそも呼ばないだろうし。

 

「声援があるだけで、十分だよ」

『……ソウ』


 少しだけ、呪い人形から嬉しそうな気配がした。


「あ、でも雷蔵に壁を壊そうとするの止めるように伝えてもらえるか?」

『ウン』


 呪い人形が手を上げると、向こうに何か伝わったらしく、雷蔵が大人しくなった。

 少しだけ表情が不貞腐れるようにも見える。

 一緒に戦えないのが不満なのだろう。ごめんな。

 

『ソレジャア、始メルネ』

「ああ。こっちはいつでもオッケーだ」


 魔女の眷属たちが一体ずつ消えてゆき、最後に嘆きの亡霊だけがフィールドに残された。


「まずはお前が相手か」

『■■■■……』


 コイツは無数の下級幽霊を召喚し、敵を恐慌状態に陥らせる。

 何より厄介なのが、コイツには通常の物理攻撃は一切通じないことだ。

 魔法スキルか、『浄化』が付与された武器でなければダメージは与えられない。


(……実質カードだけじゃなく、武器まで制限されたようなもんだな)


 俺が使える武器は実質的に『ファントムバレット』のみ。

 銃一丁で、コイツを倒さなければいけない。

 ドォ~~ン! とどこからか銅鑼を叩くような音が響く。

 おそらくは戦闘開始の合図なのだろう。

 

「じゃあ、戦おうか」

『■■■■■■~~!』


 かかってこいとばかりに、嘆きの亡霊は叫び声をあげる。

 同時に、ヤツの周囲に五体の下級幽霊が出現した。

 嘆きの亡霊の見た目はステレオタイプな幽霊の姿だ。

 足がなく、黒い丸が三つ着いたような顔に、白い布を被ったような姿。

 配下の下級幽霊はバスケットボール程の大きさの青白い人魂のような形をしている。


(モンスター図鑑の更新はなしか……)


 今更だが、俺は魔女の眷属たちのスペックをはっきりとは把握していない。

 魔女の心臓から、彼らを召喚した時に、ある程度の知識として彼らの能力を伝えられるが、雷蔵たちのカード表示のような詳細な情報はない。


(俺が知らない隠し玉もあると考えるべきだな)


 俺が彼らを召喚したのは二回。

 一回目はデイリーダンジョン、二回目は養護院。

 デイリーダンジョンでは、ほぼ捨て駒のような扱いだったし、養護院でも彼らが本格的な戦闘をすることはなかった。

 つまり、まともな戦闘自体、これが始めてなのだ。

 ほぼ初見の相手4体を相手に、カードを制限された状態での決闘。しかも相手は、俺の手の内をほぼ見ている。

 俺の方が圧倒的に不利な立場。

 だがそんなの関係ない。

 これまでのEXシナリオやデイリーダンジョンでその手の理不尽は慣れっこだ。


「シッ」

 

 俺は嘆きの亡霊に向けてファントムバレットを放つ。

『浄化』の属性が付与された弾丸。

 それは嘆きの亡霊の下腹部へと命中した。


『■■■■■■~~~~~~!?』


 よし、効いてる。

 弾丸の命中した箇所は大きくえぐれていた。

 あと二発くらい当てれば、アイツの体は全て消し飛ぶだろう。

 

『……■■■■』


 嘆きの亡霊が何かをつぶやく。

 すると、次の瞬間驚くべきことが起こった。

 奴の体が怪しい光を放ったかと思うと、その体が再生したのだ。


(幽霊なのに回復能力があるのか……いや、違うな)


 よく見れば、奴の周囲に漂っていた下級幽霊の数が減っている。

 回復したのではなく、ダメージを押し付けたのか?

 試しにもう一度、銃弾を放つ。

 嘆きの亡霊の体が削れたかと思うと、次の瞬間には再生し、代わりに一体の下級幽霊が消滅した。

 ダメージを肩代わりさせていると考えて間違いないだろう。

 そういや、呪術猿も似たようなスキルを使ってたな。

 周囲の猿に自分のダメージを押し付けるスキル。

 幽霊や呪い系のモンスターには、その手のスキルがあるのだろう。


(……となると、まずいな)


 この状況、俺にとってこの上なく最悪だ。

 嘆きの亡霊は一度に5体の下級幽霊を召喚する。

 そのCTはおそらく5秒以下。

 現にすでに新たな下級幽霊が奴の周囲に漂っている。

 最初のと合わせて既に8体。


 そして――俺のファントムバレットの弾倉は6発(・・)


 6発撃てば、着替えで一瞬で再チャージ出来るから最大で12発まで。

 その後、5秒のCTが発生する。

 嘆きの亡霊を仕留めるのに必要な弾数は最低でも3発。

 だがその3発を撃ち込むには、下級幽霊を全て排除しなければいけない。

 俺の攻撃回数は12回、下級幽霊を含めた奴のライフは13。

 

(……弾が足りねぇ)


 全弾命中しても、一発分足りないのだ。

 止めを刺しきる前に、下級幽霊を召喚され、ダメージを肩代わりされる。

 奴の召喚の方が、俺の着替えよりもCTが短い。

 たった一発の差は、いずれ圧倒的な差となって現れるだろう。


(……呪術猿の時のように引き離すか?)

 

 いや、奴のダメージ肩代わりの有効射程が不明な以上、これは危険な賭けだ。

 ひょっとすればこのフィールド全てが奴の肩代わりの有効射程の可能性もある。

 なにせ試練だからな。

 それに動き回りながらの射撃は命中率が極端に下がる。

 一発も外すわけにはいかない。

 

(流石、EXシナリオだな……)


 こんな問題、雷蔵や夜空たちが居れば簡単に解決するのに。

 アイツらの存在の大きさを改めて実感する。

 一人で戦うってのは、やっぱり大変だ。

 だが嘆いてばかりもいられない。

 どうにか打開策を見つけないと。



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― 新着の感想 ―
ソウルイーターで攻撃すれば良いのでは? 消滅するかもだけど
謎の光に実は浄化能力があって下半身を見せつけるような攻略法出ないことを祈る
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