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アプリ『異世界ポイント』で楽しいポイント生活 ~溜めたポイントは現実でお金や様々な特典に交換出来ます~  作者: よっしゃあっ!
第二章

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40.救われぬ少女に救いの手を その3


 呪術猿を倒すにあたって解決しなければならない問題がもう一つ。

 それは奴が最初に見せたあのダメージを魔術猿へと転嫁させたスキルだ。

 あの発動条件を見極めないと、奴にダメージは与えられない。


(まずは――肩!)


 俺は呪術猿目掛けて引き金を引く。


「ギィィ!?」


 狙い通りに肩に命中。

 しかし、次の瞬間、近くに居た魔術猿が苦しそうにその場に倒れた。

 致命傷だけでなく、普通のダメージも転嫁出来るのか。


(……奴がスキルを発動させる予兆や、周囲の変化は確認できなかった)


 オートで発動するのか、それとも後ろの祭壇が関係しているのか?

 思い返してみれば、呪術猿は戦闘が始まってからずっとあの祭壇の前から動いてはいない。試してみるか。

 俺は祭壇に狙いを定めた。


「これならどうだ!」


 ドンッ! ドンッ!

 放たれた銃弾は、呪術猿の背後の祭壇へと撃ち込まれた。

 しかし――。


「なっ!?」


 銃弾は弾かれた(・・・)

 頑丈だったとか、スキルで防がれたという感覚じゃない。


(今のはフィールドの『壁』に当たった時と同じ反応……!)


 つまりは破壊不能のオブジェクト。

 呪術猿が笑う。


「ギッギッギッ! 無駄、無駄! 儀式ハ絶対! 誰ニモ止メラレナイ!」


 儀式……?

 そういや、さっきも「もうすぐ準備が整う」って言ってたな。

 だがクリア条件には何も儀式に関する記載はなかった。

 ステージとは関係ないってことか?

 もしくは時間経過で発動するステージギミック?


(いや、それなら祭壇について考えるのは後回しだ!)


 破壊不能な以上、今はどうすることもできない。

 しかし呪術猿の反応からして、ダメージ転嫁のギミックにあの祭壇は関係なさそうに見える。

 

(だとすれば、他に考えられる可能性としては効果範囲か……?)


 奴の周囲、一定範囲内に仲間がいる事。

 もしフィールドの猿全てが対象なら、戦力として貴重な魔術猿より、弱い森猿にダメージを転嫁するはずだ。

 試してみるか。


「おい、猿共! そんなへなちょこスキル、そんな遠くからいくら撃ったって当たんねーよ! 悔しかったらもっと近づいて来やがれ! あ、無理か。だってお前らコソコソ、後ろに隠れるだけの臆病者だもんな! あっはっは!」


「「「「ッ……ギィィイイ!」」」」


 はい、釣れた。チョロすぎる。

 魔術猿共はあっさりと挑発に乗って、こちらへ向かってきた。

 当然、俺も挑発しながら、もっと距離を取り、出来るだけ呪術猿と他の猿を引きはがす。


「オ、オ前ラ、ドコニ行ク! 我カラ離レルナ! オイッ!」


 すると呪術猿はあからさまに狼狽する様子を見せたではないか。

 俺は焦る呪術猿へ銃口を向ける。


「ヒィ……!」


 呪術猿はたまらずその場を離れ、仲間の方へと向かっていく。

 そうはさせまいと、銃弾を撃ちまくるが、呪術猿の動きが予想以上に素早く当たらない。

 そういえば、門番が呪術猿は素早いみたいなことを言ってた気がするな。


「ヒ、ヒィィィ! クソッ! クソッ! キキィイイ!」


 呪術猿は忌々しそうにこちらを睨みつけてくる。

 これで確定だな。

 アイツのダメージ転嫁は一定範囲内に仲間がいることが条件だ。

 しかし呪術猿にも俺たちの狙いはわかったはず。

 こうなった以上、アイツはなにがなんでも仲間の傍を離れようとしないだろう。

 

(……厄介だな)


 周囲の雑魚を倒さなければ、奴にダメージは与えられない。

 しかし雑魚を倒せば倒すほど、奴は強力なデバフを俺たちに使用してくる。


(何かいい方法はないか……)


 雷蔵の範囲スキルで、周囲の雑魚ごとダメージを与えてみるか?

 いや、アイツは既に雷蔵の『雷閃』を見ている。

 絶対に警戒しているはずだ。

 その証拠に雷蔵とは一定の距離を保っている。

 雷蔵が『雷閃』を使おうとすれば、すぐに別の猿のもとへ逃げるだろう。


(無駄に賢く、臆病で慎重な性格をしてやがる……)


 だからこそ、厄介なことこの上ない。

 一番いい方法は、猿たちが自主的にアイツから離れてくれることだけど、そんな都合のいい方法あるわけが――。


「あっ」


 あるじゃんか。そんな都合のいい方法が。

 仮に失敗してもなんのリスクもないし、試してみるか。

 俺は収納からありったけのソレ(・・)を取り出し、猿共へとぶちまけた。


「キキッ!?」

「キキ……キッキー♪」

「キシャ……ムグッ! キッキ~~~~♪」


 俺が放り投げたソレに猿共は最初こそ驚いたものの、盛大に食いついた。

 戦闘中にもかかわらず、憑りつかれたかのように夢中で頬張っている。

 そう、雷蔵や雲母の大好物――『美味しい餌』に。


「キッ?」

「キキ……?」

「ウッキィ?」


 他の猿共も「なんだ?」「どうした?」とこちらを向く。


「お前たちも欲しいか! 欲しけりゃくれてやる!」


 俺は手当たり次第に、『美味しい餌』をばら撒く。

 よほど腹が減っていたのか、それとも『美味しい餌』の効果なのか、猿共は戦うことも忘れて食いついてきた。


「キキー! オ前ラ、ナニヲシテイル! 食ッテル場合カーッ!」


 呪術猿は叫ぶが、猿共は全く聞く耳を持たない。

 やがて『美味しい餌』が尽きると、名残惜しそうにこちらを見つめてきた。


「なんだ、もっと欲しいのか?」


 俺の言葉に猿共は無言で頷く。


「なら俺たちにつけ! このままソイツについても呪いの生贄になって死ぬだけだぞ! 俺たちの仲間になれば殺さない! 傷も手当てするし、今の食い物だって腹いっぱい食わせてやる!」


 そう、俺が思いついたのは猿共の離反である。

 ストーリー1でゴブリンに餌付けしたら、クリア条件が変わり、傭兵として雇用することが出来たのだ。

 ひょっとしたら猿たちにも「そういう仕様」があるかもしれないと思ったのである。


「……キ、キキ」

「キキ……?」

「キィ……」


 猿共はチラチラと俺と呪術猿を交互に見る。

 明らかに迷いが見て取れた。


「ナニヲ惑ワサレテイル、役立タズドモガ! ナンノ為ニ、貴様ラヲ、生カシテルト思ッテイルノダ! 屑ガ! ゴミガ! サッサト戦エ!」


 呪術猿の怒声。


「ッ……」


 すると、意を決したように一匹の魔術猿が俺の方へ向かってきた。

 線の細い、スラっとした体形の猿だ。ひょっとしてメスだろうか?

 肩から血が出ているところを見るに、先ほどのダメージを肩代わりされた個体だろう。


『魔術猿が従属カード化を希望しています』


従属カード化しますか?』


 頭の中に響くアナウンス。


「……いいのか?」

「ッ……」


 魔術猿は無言で何度もうなずく。

 よくよく見てみると、傷の他にも魔術猿の装備や毛並みはボロボロだった。

 よほど劣悪な扱いを受けてきたのだろう。

 怯え、憔悴しきったその姿に、俺はどこか哀れみすら覚えた。

 イエスを選択すると、魔術猿がカードとなってその場から消えた。

 俺は魔術猿のカードをバインダーに収めると、すぐに傷薬を使用した。

 三回の使用で、重傷だった状態が消える。


「出てこい」


 全快になった魔術猿をカードから解放。


「ウキ……? キィ♪ キッキー♪」


 魔術猿は肩の傷が治ったことに驚くと、嬉しそうに俺の周りを飛び跳ねた。

 その様子を見て、猿共が更にどよめく。


「見ての通りだ! 傷は治す! 俺達につけ!」


「キ……」

「キキ……」

「ッ……」


 それが最後の一押しになった。


『魔術猿が従属カード化を希望しています』

『魔術猿が従属カード化を希望しています』

『魔術猿が従属カード化を希望しています』

『森猿が従属カード化を希望しています』

『森猿が従属カード化を希望しています』

『戦士猿が従属カード化を希望しています』

『戦士猿が従属カード化を希望しています』

『戦士猿が従属カード化を希望しています』

『森猿が従属カード化を希望しています』

『森猿が従属カード化を希望しています』

『森猿が従属カード化を希望しています』

『戦士猿が従属カード化を希望しています』

『音猿が従属カード化を希望しています』

『音猿が従属カード化を希望しています』

『音猿が従属カード化を希望しています』

『戦士猿が従属カード化を希望しています』

『森猿が従属カード化を希望しています』

『森猿が従属カード化を――』


 鳴りやまぬアナウンス。

 やがて、その通知が収まると、広大なフィールドには呪術猿ただ一匹が残された。


「ギッ……キィィ……!」


「……お前、全然人望ねえな」


 人望というか猿望か。

 ここまであっさりと手のひらを返されるなんて、逆にあっぱれだ。

 マザー・スネイクもそうだったけどさ、お前らもうちょっと仲間を大切にしようよ。

 俺が銃を構えると、呪術猿は狼狽したように両手を上げた。


「マ、待テ! 呪イ解ク! 羊人ノガキ要ラナイ! 村ニモ手ヲ出サナイ!」


「……で?」


「解イタ! 呪イ、今、解イタ! 降伏! 仲間ニナル! ダカラ、ダカラ――」


「嘘つくなよ」


「ッ……」

 

 もしそうなら何故、アナウンスが出ない。

 仲間になるフリをして、だまし討ちをする気だったのか、もしくは裏切る気満々の相手は従属化出来ないのか。

 どちらにしても、コイツは信用できない。

 呪いだって、村に戻らなければ確認のしようがないのだ。


「イ、嫌ダ! 嫌ダ! 嫌ダ! 嫌ダ!

 死ニタクナイ! 死ニタクナイイイイイ!」


 断末魔の叫びを上げて、呪術猿の頭に風穴が空く。


『呪術猿を撃破しました』


『おめでとうございます。メインストーリー3をクリアしました』


 頭の中に響くアナウンス。

 もっと抵抗されるかと思ったが、ずいぶんとあっさり倒せたな。

 デバフや素早さに特化してる分、直接的な戦闘力は低かったのかもしれない。

 もしくは他の理由があったのか、まあ倒せたのならそれで構わない。

 呪術猿の魔石を回収する。


(あの祭壇が気になるが、手を出せない以上どうしようもないな……)


 もう一度、銃を撃ってみたがやはり弾かれた。

 気がかりだが、今は放置するしかない。

 早く村に戻って、メイちゃんの呪いが解けたか確認しないと。


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― 新着の感想 ―
これはこれで和マンチですけどね、いかに効率よく戦力を削り勝利に導くかだし。 期せずして軍隊を手に入れたがどうなるか、普通の世界と違って報酬も物資もシステムから手に入るし。
このパターンでのクリアも珍しいんじゃないかな。 なんだかんだでゲーム脳でもいかに敵は倒すかに全振りしてるヤツも少なくないと思うし。
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