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異世界に転生した僕は、チートな魔法の杖で楽しい冒険者ライフを始めました!  作者: 月ノ宮マクラ


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081・新装備

(――あ、いた)


 教会を出ると、アシーリャさんを見つけた。


 建物の壁に寄りかかって、彼女は1人ポツンと立っていた。


 …………。


 うん、何か絵になる。


 ぼんやりした表情はどこか神秘的。


 元々、凄い美人なのもあってか、教会に来る人の多くが彼女の姿に見惚れていたりした。 


 そちらに向かい、


「ただいま」


「!」


 彼女も気づく。


 壁から身体を起こして、


「おかえりなさ、い……ニホさ、ん」


 と、微笑んだ。


 僕も笑う。


 それから彼女を見つめた。


「……?」


 アシーリャさんは、不思議そうな顔。


 僕は言う。


「アシーリャさんの友達に、よろしく、って頼まれたよ」


「……とも、だち?」


「うん」


「???」


「いい友達だね」


「…………」


「ううん。――じゃあ、行こうか」


「は、い」


 僕の言葉に、彼女は頷いた。


 その手を伸ばして、


 キュッ


 僕の手を握る。


 僕らは歩きだし、そしてアシーリャさんは、ふと教会を振り返った。


「…………」


 すぐに前を向く。


 …………。


 そうして僕らは教会をあとにして、町の散策を再開したんだ。



 ◇◇◇◇◇◇◇



「ほら、完成したよ」


 アライアさんはそう笑った。


 グランビット装備店のテーブルには、4人分の防具が並んでいた。


 完成までの10日間は、町の散策をしたり、のんびり休息したりして、あっという間に流れていた。


 そして本日、新装備の受け取りだ。 


 それを見て、僕らは『おお~!』と声をあげてしまう。


 金属の軽鎧が2つ。


 手甲が1つ。


 胸当てが1つ。


 旅服が1つ。


 ローブが1つ。


 以上、計6点だ。


 金属の軽鎧は、アシーリャさん、カーマインさんの装備。


 動き易さを重視して、金属の板を何枚も重なるように繋げて、通常よりも可動域を大きくしていた。


 装甲の厚さも薄めで、重さも軽量らしい。


 試着して、


「こりゃいいな!」


 赤毛の獣人青年は、満足そうだ。


 アシーリャさんも左右に身体を捻ったりする。


「大丈夫、です」


 と、頷いた。


 また彼女の左腕には、手甲も付いた。


 これまでの手甲より軽いのに、強度は高くなっているとか。


 色見も『赤色鉄鉱石』を基本に使っているからか、鮮やかな赤色だ。


 凄く見栄えがする。


 次は、胸当て。


 こちらは、フランフランさんの装備だ。


 今までは革製だったけど、今回は金属製である。

 

 前面だけでなく、背面や脇腹も覆うタイプ。


 色は薄い紅色で、女性らしい曲線重視の形をしていて、見た目からしてお洒落な雰囲気である。


 もちろん、実用性も高い。


 赤毛の三つ編み少女は、


「わぁ……!」


 と、嬉しそうだ。


 実際に弓を構えて、動きを阻害しないことも確認した。


 最後は、僕。


 装備は、旅服とローブの2点セットだ。


 金属鎧は、子供の僕には重すぎて、逆に動けなくなって危険である。


 そのため、布製だ。


 とは言え、その布にアダマン鉱石、ミスリル銀の細い金属糸を編み込んである。


 見た目は、刺繍みたい。


 けど、硬度は充分。


 半端な革鎧などより、よっぽど防御力があるってさ。


 またローブは防水性なので、雨が降っても大丈夫。


 色は白を基本に、刺繍部分が銀色だ。


(どれどれ?)


 僕は、早速、試着してみる。


 ……うん。


 今までの装備に比べて、少し重いかな?


 でも、ほぼ気にならない。


 鏡の前に立つ。


 杖君を手にした自分の姿は、何だか1人前の魔法使いらしくて嬉しかった。 


 ピカピカ


 杖君も明るく輝いた。


「あは、ありがと」


 僕は笑った。


 また、僕は子供で成長期。


 今後、成長に合わせて調整できるように、旅服は分解可能で生地を追加できる構造だ。


 ありがたいなぁ。


 4人とも、新装備に満足だ。


 アライアさんも、


「気に入ってもらえたようだね?」


「うん!」


 僕は、大きく頷いた。


 さすが、男爵様の推薦してくれた鍛冶師さんだ。


 彼女の話によれば、この装備ならDランク、Cランクでも通用するレベルなんだって。


 なるほど。


(150万円の価値はあるね?)


 そう納得だ。


 そのあとは、装備のフィッティング調整をしてもらい、


「あと、これ」


 ジャラッ


 硬貨の入った革袋を渡された。


(?)


 何、このお金?


 と思ったら、例のミスリル銀の神像を売った代金と素材代金の差額だそうだ。


 2000ポント、約20万円も儲けが出たらしい。


 え、そんなに?


 考古学的価値のわからない僕らは、びっくりだ。


 アライアさんの言う通りにしてよかったな。


 ありがたく受け取る。


 彼女は職人の顔で、


「新しい装備に慣れない内は、無茶するんじゃないよ?」


「あ、うん」


「あと、今後、使ってて何か気になる点があったら、すぐに言いな。可能な範囲で対応してやるから」


「うん、わかった」


 僕らは頷いた。


 気配り、凄いね。


 うん、こういう職人気質な人、本当に大好きだ。


 僕は笑う。


「また何あったら、お願いするね」


「はいよ」


「ありがとう、アライアさん。それじゃあね」


「ああ、毎度あり」


 彼女は頷いて、


「お前さんたちみたいな客は、本当に珍しかったよ。いつか、レオナよりも大物になるかもね」


 なんて言う。


 それに、僕らは目を丸くする。


 すぐに、皆で笑った。


 …………。


 そうして僕らはお礼を言って、手を振りながら、お世話になったグランビット装備店をあとにした。



 ◇◇◇◇◇◇◇



 宿屋に帰り、荷物をまとめる。


 その後、チェックアウト手続き。


 獣房から出した走り鳥に、自分たちの荷物を括りつけた。  


(よいしょ、よいしょ)


 アシーリャさんと2人、作業する。


 同じように獣人兄妹も、自分たちの乗る走り鳥に荷物を積んでいた。


 ギュッ ギュッ


 作業中、自分の身体の動きを確認してみたけれど、


(うん、悪くないね)


 新装備、すぐに馴染みそうだ。


 ふと、アシーリャさんと目が合う。


 新しい鎧を身に着けた彼女は、何だか新鮮で、でも、格好良かった。


 つい笑ってしまう。


 それに、彼女も微笑んだ。


 僕は言う。


「新しい装備って、いいね」


「…………」


「何だか、これまでの自分より強くなった気がするよ」


「……は、い」


 彼女は、優しい表情で頷いた。


 すると、


「馬鹿だなぁ、ニホ」


 と、話が聞こえていたのか、カーマインさん。


 彼はニッと笑い、


「気がするんじゃない。本当に強くなったんだよ」


「…………」


「それが良い装備を買うってことさ」


 と、片目を閉じた。


 フランフランさんも楽しそうに頷いている。


 そっか……。


 うん、そうだね。


 納得した僕も、大きく頷いた。


 …………。


 やがて、出発準備も整う。


「よし、行くぜ」


「うん」


「は、い」


「ええ、兄さん」


 新しい装備を手に入れた僕ら4人は、鞍に乗る。


 やがて、手続きをして町を出る。


 タッタッタッ


 走り鳥は街道を北へ。


 こうして鉱山の町ロックドウムをあとにして、僕らはレイクランドへの帰路に着いたのだった。

ご覧いただき、ありがとうございました。



今話にて、ニホとアシーリャ達の物語を完結とする事に致しました。


正直、まだ続けるか本当に迷ったのですが、最近は心身の調子を崩すこともあり、執筆できない日もあって、内容的にも一区切りとなっているここまでとさせて頂きました。


更新を楽しみにしていて下さった方には、本当に申し訳ありません。ですが、どうかご理解頂ければ幸いです。


改めまして、ブクマや評価、そして作品を読んで下さった皆さん、本当にありがとうございました!



月ノ宮マクラ

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― 新着の感想 ―
[良い点] わりとチートなのにチートを感じさせない 強さよりも優しさを感じさせる ちゃんと冒険しているのに、日常系の穏やかさ 他にない雰囲気の小説でとても気に入りました [気になる点] 正直、ここで終…
[一言] 「いよいよクライマックスか!」と思わされたところでの完結は少しモヤっとしますが、区切りが良いのかもしれませんね。 でも正直、ヴォイドとの決着を知りたいところでもありました。 マールに加えて…
2024/05/16 03:33 退会済み
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