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異世界に転生した僕は、チートな魔法の杖で楽しい冒険者ライフを始めました!  作者: 月ノ宮マクラ


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075・南西ダンジョン

「……また、凄いサイズの奴を持ってきたね」


 グランビット装備店に帰還すると、結晶を見たアライアさんは少し呆れていた。


 あはは……。


 ともあれ、品質、量を確認してもらう。


 結果、共に問題ないとのこと。


(うん、よかった)


 僕らも笑い合ってしまう。


 あとは『ミスリル銀』。


 明日、その採掘に成功すれば、目標達成だ。 


 それで、新しい防具が手に入る。


 つまり、冒険者としての能力が上昇し、生存率も上がるのだ。


 Dランクも目指せるかもしれない。


 正直、冒険者ランクにあまり興味はないけれど、それによって行ける場所が増えたり、新しい魔物を目撃できたりもする。


 異世界での新しい人生。


 それを、きっと、もっと楽しめる。


 …………。


 僕は「うん」と頷いた。


 みんなを見て、


「明日もがんばろうね」


「は、い」


「おう、そうだな」


「がんばりましょう」


 笑って言うと、みんなも笑顔で応えてくれた。


 ピカン


 杖君も、明るく光る。


 そして、その日は宿屋に帰宅。


 その翌日、僕らは最後の採掘のため、町の南西にある『南西ダンジョン』へと向かった。



 ◇◇◇◇◇◇◇



 草原と巨石が転がる景色を眺めながら、街道を進む。


 町を出て、およそ3時間。


(あ……)


 遠くに、巨大な建造物が見えた。


 石造りの建物で、けれど、古い物らしく半壊し、壁や柱には植物が絡みついていた。


 あれが『南西ダンジョン』かな?


 近づくと、やはりダンジョン監視員の兵士が2人、立っていた。


 許可証、冒険者カードを提示。


 すぐに許可が下りて、僕らは壊れた扉の奥に向かった。


 奥の部屋には、


「地下への階段だ」


 があった。


 石造りの床に、無造作に設置されていた。

 

 かなり急勾配で、奥は暗く見えない。


 カーマインさんは、地図を見ながら言う。


「このダンジョンは、天然洞窟と人工建造物の融合タイプみたいだな」


「そうなの?」


「あぁ、地下3階で洞窟と繋がるらしい」


「へぇ……」


 初めてのタイプだ。


 僕ら4人は、まじまじと階段を見つめてしまった。


 やがて、


「見てても仕方ない。行くか?」


「あ、うん」


「は、い」


「そ、そうね、兄さん」


 彼の言葉に頷いて、僕らは明かりを灯すと階段へと足を踏み出していった。


 …………。


 地下階段は、20メートルぐらいの距離があった。


 結構、深い。


 地下1階に着くと、杖君の『灯りの魔法』の光を周囲に向けていく。 


(ふ~ん?)


 あるのは、石の通路。


 天井は高く、幅は広い。


 等間隔に石の柱があるけれど、何本かは折れていた。


 湿気もある。


 何と言うか……お化け屋敷?


 そんな印象だ。


 そんな僕に、カーマインさんが「ニホ、頼む」と声をかけた。


 僕は「うん」と頷く。


 杖君を構えて、


「杖君、道案内の魔法を」


 ピカン


 杖君が輝き、いつもの『光の蝶』が現れた。


 ヒラヒラ


 その暗い石の通路を照らしながら、光る蝶はゆっくりと前方に飛んでいく。


 僕らは、それを追いかけた。


 足元は、人工の床だ。


 所々、敷石が割れている。


 けれど、天然洞窟に比べて、とても歩き易かった。


 今の所、魔物の姿もない。


 この『南西ダンジョン』は、前回と同じEランクだ。

 

 対処できない魔物はいないと思う。


 ただ、


「地下3階以降は、Dランク相当って話もある」


「そうなの?」


「あぁ。総合的にはE判定、だが、局所的にはD判定の場所もあるって感じだな」


「そっか……」


「ミスリル銀は、D判定の場所かもなぁ」


「…………」


 う~ん、どうだろうね?


 こればかりは、杖君次第だ。


 その案内に導かれて、実際に行ってみないとわからない。


 彼は苦笑して、


「前に手に入れた『ミスリル銀の結晶体』、売らずに取っておけばよかったな」


 と、言う。


 確かに、あれは大きかった。


 もし、あれがあれば、今回の目標の量にも充分だったと思う。


 だけど、


「それを売ったから、今回、防具を買うお金ができたんだよ?」


「……まぁ、そうだな」


「うん、そうだよ」


 僕は頷く。


 それじゃ、本末転倒だ。


 フランフランさんも兄の様子に「ない物ねだりしないの。もう、兄さんったら」と呆れていた。


 そんな話をしていると、


 クイッ


(ん?)


 アシーリャさんの白い指が、僕のローブの裾を摘まんで引っ張った。


 僕は、彼女を見る。


 彼女は前を見ながら、そこに人差し指を向けた。


「階段、です」


「え?」


 見れば、あ……本当だ。


 通路の奥に、地下に続く階段があった。


 赤毛の獣人青年は地図を見て、


「この階段は駄目だな」


「え?」


「地下2階で行き止まりになる。地下3階に行くには、別の階段だ」


「そうなの?」


 まるで迷路だ。


 どうやら、間違った道に行くと引き返さなきゃいけないらしい。


 僕は言う。


「地図、あってよかったね」


「そうだな」


 彼は頷く。


 笑って、


「先人の冒険者たちに感謝だ」


「うん」


 先に来た冒険者がいたから、今、地図があるのだ。


 ヒラヒラ


 光る蝶も、階段の横を素通りする。


 やはり、こっちじゃないみたい。


 僕らは、それを追いかける。


 コツ コツ


 石の通路に足音を響かせ、更なるダンジョンの暗闇へと向かったんだ。

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