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異世界に転生した僕は、チートな魔法の杖で楽しい冒険者ライフを始めました!  作者: 月ノ宮マクラ


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072・結晶生物

 白い結晶の洞窟を歩いていく。


 この『南東ダンジョン』の難度は『E』なので、ちょうど僕らの適正ランクだ。


 普通に注意して探索すれば、問題ない。


 んだけど、ここで、


「このダンジョンには『結晶生物』がいるんだ」


 と、カーマインさんが教えてくれた。


(結晶生物?)


 僕は首をかしげる。


 彼は続けた。


「この洞窟、結晶だらけだろ?」


「うん」


「それが魔物にも張りつくのさ」


「へぇ……?」


 それは面白いね。


「ただ張りつくのは、死んだあとでな」


「…………」


「結晶生物なんて言われているが、実際は生きてない。要するに、結晶化したゾンビなのさ」


「そうなんだ?」


「あぁ。……だから、ニホも気をつけろよ?」


「?」


「ここでやられたら、お前も結晶ゾンビのお仲間だ」


 彼は「ウケケ」と笑いながら両手を持ち上げ、僕を脅かした。


 えっと……。


「……う、うん、気をつける」


「…………」


「…………」


「そういう反応やめろよぅ……。余計、傷つく……」


「ご、ごめん」


 何か、落ち込ませてしまった。


 と、そんな兄の頭部を、妹が「馬鹿なこと言ってないの、兄さん」とパシンとはたいていた。


 あはは……。


 それに苦笑していると、


 ギュッ


(ん?)


 僕の手を、アシーリャさんが握っていた。


 彼女を見る。


 金髪の美女は、珍しく真剣な顔で、


「ニホさん、は、絶対に……ゾンビ、に……させません」


「…………」


「…………」


「う、うん、ありがと」


 あまりに真っ直ぐ見つめられたので、少し照れてしまう。


 でも、その心が、正直、嬉しい。


(な、何か、顔が熱いや……)


 パタパタ


 火照った顔を手で扇ぐ。


 そんな僕ら4人に、


 ピカピカ


 杖君は、何だか微笑ましそうに点滅していた。


 …………。


 そんな会話をしながら、僕らは洞窟内を歩いていく。


 そうして20分後。


 カシャン


「!」


 白く輝く洞窟の前方に、動く結晶が見えた。


 あれは……。


 気づいた僕に、


「出たぞ、結晶生物だ」


 カーマインさんは告げて、


 ジャキッ


 魔法剣と小剣を構える。


 アシーリャさんも無言で『アルテナの長剣』を抜き、フランフランさんも背負っていた弓を手にした。


 僕も杖君を構えた。


 カシャ カシャ


 やがて、動く結晶は、僕らの照らす光の中に到達した。



 ◇◇◇◇◇◇◇



 現れたのは、


(結晶化したネズミ……?)


 だった。


 数は3体。


 体長は70センチぐらいかな?


 頭部や腕から結晶が生え、背中は完全に結晶の山に覆われていた。


 カシャ カシャ


 動くたび、結晶のぶつかる音が鳴る。


 赤毛の獣人青年は、


「気をつけろ」


「…………」


「あの結晶は硬い。フランの矢は、まず通らない」


「そうなの?」


「あぁ」


 言った瞬間、


 バシュッ


 赤毛の三つ編みをなびかせ、フランフランさんは兄の言葉を試すように矢を放った。


 先頭の結晶ネズミに、矢は直撃。


 瞬間、


 ガチィン


 火花を散らして、矢が弾かれた。


(うわっ)


 思った以上の硬度だ。


 当たった結晶には、小さな傷があるだけで欠けてもいない。


「くぅ……っ」


 三つ編み赤毛の獣人少女は悔しそうだ。


 兄は『ほらな』という表情だ。


 彼は、手の中の『雷の魔法剣』をヒュンと回転させる。


 パチチッ


 青い放電が散る。


「あの結晶は、斬るのも難しい」


「…………」


「だが、魔法は有効だ。ここは、俺に任せな」


「うん」


 彼の言葉に、僕は頷いた。


 同時に、


 タッ


 カーマインさんは、3体の結晶ネズミの方へと走った。


 結晶ネズミたちも反応する。


 カシャン


 先頭の1体が、彼に跳びかかった。


 赤毛の獣人青年は、それを反転するようにかわして、


「おらっ!」


 と、魔法剣を振るった。


 ガキッ バヂィン


 結晶に刃が当たり、同時に青い放電が魔物の全身から散った。


 結晶ネズミは硬直する。


 ドサッ


 魔物は地に落ちて、手足をビクビクと痙攣させた。


(感電だ)


 確かにダメージになっている。


 でも、


 カシャ カシャン


 元々ゾンビだから、白煙を上げながら、その結晶ネズミは起きあがった。


 彼は舌打ちする。


「ちっ……意外とタフだな」


 うん、確かに。


(もしかしたら、結晶越しだから魔法の威力も減衰したのかも?)


 そう思った。


 そして、3体の結晶ネズミは彼を包囲する。


 ちょっとまずいかな?


 援護しなければ。


(でも、どうする?)


 あの硬さだと『弾丸』や『大砲』の魔法でも通じなさそうだ。


 となると、


「あ、そうだ」


 僕は、すぐに思いついた。


 杖君を構えて、


「杖君、ドリルの魔法を」


 ピカン


 僕の願いに応えて、杖君の先端から『光のドリル』が生まれた。


 それを槍のように持って、


 タタッ


「えいっ」


 僕は、結晶ネズミの1体へとドリルをぶつけた。


 ギャリィン


 激しい火花が散った。


 結晶化した手足が千切れ、破片が飛び散る。


 ガララン


 結晶生物の身体が砕けて、そのまま5つに分かれて床に転がった。


(倒した……?)


 思った以上の効果。


 僕は、びっくりだ。


 カーマインさんも「マジか?」と驚き、フランフランさんも目を丸くしていた。


 アシーリャさんは


「…………」


 無言のまま、満足そうに頷いた。


 そして、彼女は、そのまま長剣を振り被り、


 ヒュコン


 結晶ネズミの1体に振るう。


 瞬間、白い結晶が2つになった。


「……え?」


 僕は、目を疑った。


 獣人兄妹の魔法剣や弓矢を弾いた結晶が、アシーリャさんの剣に斬られていた。


 兄妹も愕然だ。


 まさに神業。


 アシーリャさんの剣技は、結晶ネズミの硬度も物ともしなかったんだ。


 ガシャン


 結晶ネズミの残骸は、洞窟の地面に転がった。


(……凄いや)


 僕も、素直に感嘆だ。


 アシーリャさん本人は『当然』といった様子。


 特別、誇った様子もない。


 …………。


 その後、カーマインさんも何度か結晶ネズミを叩いて、魔法で結晶の魔物を倒した。


 結局、3人で3体。


 赤毛の獣人青年は、


「今回は、俺の見せ場だと思ったんだがなぁ……」


 と、嘆いた。


 あはは……。


 ともあれ、結晶生物にも有効な攻撃があるとわかった。


 それは、貴重な収穫だ。


 フランフランさんは肩を落とす兄の背中を叩いて、「ほら、元気出して、兄さん」と励ました。 


 その様子に、僕とアシーリャさんは顔を見合わせる。


 そして、つい笑ってしまった。


 僕の手の中では、


 ピカピカ


 杖君も明るく光っていた。


 …………。


 やがて、戦闘を終えた僕ら4人と1本は、更なる結晶洞窟の奥へと進んでいった。

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