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異世界に転生した僕は、チートな魔法の杖で楽しい冒険者ライフを始めました!  作者: 月ノ宮マクラ


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069・北東ダンジョン

 町を出て、北東に30分ほど歩いた。


(あ……あれかな?) 


 草原の中に、岩山みたいな岩盤の隆起があり、そこに金属製の扉が設置されていた。


 多分、あれが北東ダンジョン。


 金属扉の近くには、2人の兵士がいた。


 ダンジョン監視員だ。


 採掘用ダンジョンは、好き勝手に採取されたら資源が枯渇する。


 なので、入れる人を町で管理しているんだ。


 個人で入る場合は、許可証の取得に1人1000ポント(10万円)が必要だ。


 今回の僕らも、冒険者ギルドのクエストじゃないから払っている。


 支払いは、アライアさんが立て替えてくれた。


 ただし、それは防具の予算150万円の中から出されることになっていた。


 まぁ、当然である。


 ちなみにダンジョンで必要な鉱石が手に入らなかった場合、その150万円から鉱石代も引かれて、作る防具のグレードが落ちることになるのだ。


(うん、がんばらないと)


 ギュッ


 僕は、小さな両手を握った。


 やがて、監視員さんに許可証を見せて、許可をもらう。


 ガチャン


 彼らは持っていた鍵で金属扉を解錠し、ゴゴゴッ……と重そうな音と共に扉が開けられた。


 中は、天然の洞窟だ。


 入り口付近は、照明が灯っていた。


 ちなみに、北東ダンジョンはFランクだ。


 一応、初心者向け。


 でも、


「浅層部には魔物も少ない。だが、奥はどうなっているかわからん。気をつけろ」


 と、監視員の兵士の警告。


 入り口は封鎖されている。


 なのに、魔物はどこから入るのか?


 実は、ダンジョンが広い場合、複数の魔物がダンジョン内で生態系を作ってしまうんだって。


 だから、数が減らない。


 完全に全滅しない。


 でも、何を食べているのか?


 それは、


「人間だな」


 と、カーマインさん。


 一獲千金を求めて、冒険者はダンジョンに来る。


 それが魔物の餌となるのだ。


 つまり、人間もダンジョンの生態系の1つに組み込まれているのだ。


(そっかぁ)


 人間は欲深い。


 それは昔から変わらず、だからこそ、ダンジョンの魔物もいなくならない。


 因果なものだね……。


 あと、ダンジョンに魔物が増える理由として、もう1つ、外部からの侵入があるそうだ。


 地中を移動する岩ゴブリンや岩石竜ロックドラゴンなどの魔物が、たまたまダンジョンに辿り着き、棲みついてしまうケースもあるのだとか。


 その場合、ランク以上の魔物も出現することになる。


 タンジョンランクも、目安でしかない。


 それぐらい、ダンジョンというのは人知の及ばぬ危険のある場所なのだ。


 …………。


 以上、冒険者ガイドブックの『ダンジョン』の項目の情報でした。


 パタン


 僕は、ガイドブックを閉じる。


 ともあれ、僕らは冒険者。


 冒険と仕事のためなら、危険なダンジョンにだって挑むのだ。


「うん、行こう」


 覚悟を決める。


 洞窟ダンジョンの入り口に、1歩、足を踏み入れた。


 トン


 そのまま、暗闇の奥へ。


「おう、行こうぜ、ニホ」


「は、い」


「い、行きましょう!」


 仲間の3人も応じて、僕のあとに続く。


 新しい未知のダンジョン。


 鉱山の町ロックドウムの『北東ダンジョン』の奥に向かって、僕ら4人と1本は歩いていった。



 ◇◇◇◇◇◇◇



 空気はひんやりしていた。


 僕らは杖君の『灯りの魔法』とランタンを頼りに奥へと進んでいく。


 洞窟内は広い。


 天井までは3メートル以上。


 幅も大人5人が並べる余裕があって、所々、崩落避けの木製の枠組みが設置されていた。


(あ……)


 10分ほど歩くと、分岐があった。


 どっちがいいだろう?


 カーマインさんは、北東ダンジョンの地図をバサッと広げた。


「採掘場所も幾つかあるな」


「ふぅん?」 


「う~む……どこがいいか、わからんな」


「…………」


「ニホ、悪い。早速、頼めるか?」


「うん、いいよ」


 僕は頷いた。


 白い杖を構えて、


(杖君、お願い)


 ピカン


 僕の願いに応えて、杖君は光った。


 先端に浮かびあがった魔法陣から、ポンッといつもの『光の蝶』が生まれた。


 ヒラヒラ


 光る蝶は、右の道へ。


「こっち」


 僕は、その洞窟の穴を指差した。


 3人も頷く。


「さすが、ニホ。頼りになるぜ」


 クシャクシャ


(わ……?)


 カーマインさんに、笑って髪をかき回された。


 妹のフランフランさんも「ニホ君の魔法って、本当に凄いですね」と笑顔で褒めてくれた。


 アシーリャさんも、なぜか嬉しそう。 


 少し、くすぐったい。


(ありがとう、杖君)


 僕も杖君に、心の中でお礼を言った。


 ピカピカ


 気にしないで、と杖君。


 僕も笑う。


 それから僕らは、光る蝶を追って、更にダンジョンの奥へと向かった。



 ◇◇◇◇◇◇◇



 その後、いくつかの分岐を、道案内の蝶を信じて選んでいく。


 2時間ほど、洞窟内を歩いた。


 暗闇の支配する空間には、時折、カツーン、カツーン……と甲高い音が遠く響いていた。


 多分、他の冒険者が洞窟のどこかで採掘してるのだろう。


 その反響音だ。


 道中、魔物にも出くわした。 


 洞窟大蝙蝠や目のない大蛇、あと、体長3メートルほどの巨大ムカデだ。


「おら!」


「んっ!」


 ガシュッ ザキュン


 遭遇するたび、赤毛の獣人青年の『雷の魔法剣』と金髪の美女の『アルテナの長剣』が簡単に魔物を倒していった。


「はっ」


 ドシュン


 フランフランさんの弓矢も大蝙蝠を貫く。


 みんな、強い。


 僕は照明係になるだけで、他には何もする必要がなかった。


 ……何か、申し訳ない。


 だけど、


「何言ってんだ?」


「…………」


「お前は、鉱石のある場所までの道案内してくれてるだろ? それで充分じゃないか」


「そ、そうですよ」


 兄に続き、妹もコクコクと頷く。


「これは役割分担ですから」


「…………」


「だから今は、ニホ君は休んでてください。ね?」


「……うん」


 そんな風に笑いかけられては、僕も頷くしかない。


 と、そんな僕の頭を、


 ギュッ


 アシーリャさんが抱きしめた。


(わ?)


「ニ、ホ、さんは……そこにいるだけで、いい、です。私……力、で、ます」


「…………」


「こ、こはお任せを……です」


「アシーリャさん……」


 柔らかな金髪が僕の顔にこぼれて、大きな胸も押しつけられていた。


 優しい匂い。


 何だか、心が落ち着く。 


 僕は青い目を閉じ、


「うん」


 と、素直に頷いた。


 そんな僕らに、フランフランさんは「はわ……」と顔を赤くして、その妹の姿に兄は苦笑していた。


 …………。


 そんなこともありつつ、僕らは洞窟を進む。


 やがて、


 ヒラン


 光る蝶が、僕の頭に止まった。


 どうやら、目的の鉱石が埋まっている場所に辿り着いたみたいだ。


 杖の先に灯る『3つの光の玉』を周囲に向ける。


(ふぅん?)


 ただの通路の途中だ。


 カーマインさんも、地図で現在地を確認する。


 けれど、把握されている採掘場所とは少し離れているみたいだった。


「……本当にここか?」


 彼は呟く。


 でも、僕は杖君を信じている。


 だから、


「間違いないと思う」


 と、はっきり答えた。


 ピカン


 杖君は嬉しそうに光った。


 それに微笑み、


「杖君、探査の魔法をお願い」


 と、頼んだ。


 ピィイン


 杖君を中心に、同心円状に光が広がった。


 途端、周囲の壁のほとんどが明るく輝き、ハイライトされた。


(うわっ?)


 その光量に、全員で驚く。


 え……待って?


 これって、つまり、この通路の周囲全てが必要な鉱石なの?


 ちょっと唖然だ。


 僕は杖君を構えて、


「杖君、ドリルの魔法を」


 ピカン


 杖君の先に『光のドリル』が生まれ、ヒィィンと回転する。


 それを壁に押し当てた。


 ガガガッ


 岩盤の表面が剥がれ落ちた。


 すると、10~20センチほど奥から、岩の色が鮮やかな赤色に変わった。


 カララン


 落ちた赤い石を、カーマインさんが拾う。


「これは……赤色鉄鉱石だ」


 呆然と呟いた。


 目的の鉱石の1つ。


 でも、眼前の岩を砕けば砕くほど、その赤色の鉱石の場所は広がっていく。


 え……凄い。


 彼は言う。


「こりゃ、未発見の鉱脈か……?」


「嘘……」


 妹の少女も、両手を口に当てて驚いていた。


 僕らは、顔を見合わせる。


「…………」


 ガシャッ


 アシーリャさんがつるはしを構えた。


 すぐに、カーマインさんも無言でつるはしに持ち替え、フランフランさんは採取袋を用意する。 


 ギュッ


 僕も、ドリルの生えた杖君を構えた。


 …………。


 …………。


 …………。


 30分後、僕らは集めた『赤色鉄鉱石』で採取袋を満杯にすることに成功した。

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